名画図鑑
モナ・リザ(ルネサンス)
レオナルド・ダ・ヴィンチ/1503年ごろ。ポプラの板に油彩で描かれた77×53cmの小さな板絵。腰から上の女性が肘掛け椅子に斜めに座り、体をひねって正面を見ている。背景は人けのない岩山と曲がりくねる川で、左右で地平の高さがそろわない。ルーヴル美術館蔵。
最後の晩餐(ルネサンス)
レオナルド・ダ・ヴィンチ/1495〜98年。ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院、食堂の壁いっぱいに広がる高さ4m余り・幅9m近い壁画。長い机の向こうに十三人が横一列に並び、「この中の一人が私を裏切る」とキリストが告げた直後のざわめきが描かれる。
ヴィーナスの誕生(ルネサンス)
サンドロ・ボッティチェリ/1485年ごろ。172.5×278.9cmの横長のカンヴァスに、貝殻の上へ立つ等身大の裸のヴィーナス。左から風の神たちが息を吹きかけ、右では季節の女神が花模様の布を差し出す。海も空も薄い色で、体に落ちる影がほとんどない。ウフィツィ美術館蔵。
プリマヴェーラ(ルネサンス)
サンドロ・ボッティチェリ/1480年ごろ。202×314cmの板にテンペラ。暗いオレンジの木立を背に、八人の人物が横に並ぶ。中央の女性の頭上では目隠しをしたクピドが矢を構え、足元の草地には190種ほどの花が一つずつ描き分けられている。ウフィツィ美術館蔵。
アテネの学堂(ルネサンス)
ラファエロ・サンティ/1509〜11年。ヴァチカン宮殿「署名の間」の壁一面を占める約500×770cmのフレスコ。丸天井の大きな建物の中に、古代の哲学者や数学者が大勢集まっている。この部屋には四面それぞれに壁画があり、その一つにあたる。
アダムの創造(ルネサンス)
ミケランジェロ・ブオナローティ/1511年ごろ。システィーナ礼拝堂の天井、中ほどに置かれた280×570cmのフレスコ。左に横たわる裸のアダム、右に赤い布に包まれて天使たちと運ばれてくる神。二人の手が画面の中央で伸び合い、指先は触れていない。
アルノルフィーニ夫妻像(ルネサンス)
ヤン・ファン・エイク/1434年。オークの板に油彩、82.2×60cm。寝台のある部屋で男女が並んで立ち、手を取り合っている。天井のシャンデリア、脱ぎ捨てた木靴、足元の小犬、窓辺のオレンジまで、部屋の物がひとつ残らず描き込まれている。ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵。
快楽の園(ルネサンス)
ヒエロニムス・ボス/1490〜1510年ごろ。オークの板に油彩の三連祭壇画。開くと約205×385cmの横長になり、左にエデンの園、中央に裸の人々と巨大な果実で埋まる庭、右に暗い地獄が並ぶ。閉じると灰色一色の球体、天地創造の途中の世界が現れる。プラド美術館蔵。
ウルビーノのヴィーナス(ルネサンス)
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ/1538年。119×165cmのカンヴァスに油彩。寝台に横たわる裸の女性が、見る側をまっすぐ見返している。足元に丸まった小犬、奥では二人の女中が衣装箱をのぞき込む。神話の一場面というより、実在の部屋の情景に見える。ウフィツィ美術館蔵。
雪中の狩人(ルネサンス)
ピーテル・ブリューゲル(父)/1565年。板に油彩、117×162cm。高い場所から見下ろす雪の村。左手前で犬を連れた狩人三人が背を向けて坂を下り、その先に凍った池、遠くに切り立った岩山が続く。獲物はキツネ一匹だけ。ウィーン美術史美術館蔵。
夜警(バロック・古典)
レンブラント・ファン・レイン/1642年。市民自警団の集合肖像画で、切り詰められた今の状態でも高さ約3.6m・幅約4.4mあり、人物が実物大に近い大きさで並ぶ。金を出した隊員のほかに名前の分からない人物も紛れ込み、全員が整列して正面を向く当時の集合肖像とは違って、号令で動き出す一瞬のように見える。
真珠の耳飾りの少女(バロック・古典)
ヨハネス・フェルメール/1665年ごろ。暗い背景から少女の顔だけが浮かび上がる、縦44.5cm・横39cmの小さなカンヴァス。青と黄のターバンを巻き、肩越しにこちらを振り返る。特定の誰かの肖像ではなく、表情や衣装の面白さを見せるトロニーと呼ばれる種類の絵と考えられている。
牛乳を注ぐ女(バロック・古典)
ヨハネス・フェルメール/1658〜60年ごろ。台所で女が壺から牛乳を注いでいる、それだけの絵。縦45.5cm・横41cmと小さいのに人物は画面いっぱいに大きく、腕やパンの質感がすぐ目に入る。壁は塗り残しのように白く、釘穴と染みしかない。物語ではなく一つの動作が止まった瞬間を見せている。
ラス・メニーナス(バロック・古典)
ディエゴ・ベラスケス/1656年。王宮の一室に、幼い王女マルガリータと侍女たち、小人、犬、そして絵筆を持ったベラスケス自身がいる。縦318cm・横276cmと実物大に近く、部屋がそのまま奥へ続いて見える。画家がこちらを見ているので、見る側が描かれる側に立つような位置関係になる。
聖マタイの召命(バロック・古典)
カラヴァッジョ/1599〜1600年。薄暗い部屋で金を数える男たちのところへ、キリストが現れた場面。縦322cm・横340cmの大きなカンヴァスで、ローマのサン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂の礼拝堂に今も掛かる。登場人物は聖人らしい衣ではなく当時の街の男の服を着ている。
ホロフェルネスの首を斬るユディト(バロック・古典)
アルテミジア・ジェンティレスキ/1620年ごろ。旧約聖書外典の場面で、ユディトと侍女が敵将ホロフェルネスを押さえつけ、剣で首を斬っている。縦199cm・横162.5cmの大きなカンヴァスで、フィレンツェのウフィツィ美術館にある。三人の腕が中央で組み合い、力の入り方まで見える描き方になっている。
キリスト降架(バロック・古典)
ピーテル・パウル・ルーベンス/1612〜14年。十字架から降ろされるキリストの体を、まわりの人々が白い布ごと受け止めている場面。三枚組の祭壇画の中央にあたり、板に描かれ、中央だけで高さ4mを超える。アントウェルペンの聖母大聖堂に今も設置され、見上げる位置から体が降りてくる。
アルカディアの牧人たち(バロック・古典)
ニコラ・プッサン/1638年ごろ。理想郷アルカディアの牧人三人と女性が、石の墓を囲んで刻まれた文字を読んでいる。縦85cm・横121cmの横長のカンヴァスで、ルーヴル美術館にある。事件は何も起きず、文字を読む姿勢だけで場面が成り立っている静かな絵。
ぶらんこ(バロック・古典)
ジャン・オノレ・フラゴナール/1767年。茂った庭で、若い女がぶらんこに乗って高く振り上がった瞬間。縦81cm・横64.2cmの縦長のカンヴァスで、ロンドンのウォレス・コレクションにある。脱げた靴が宙を飛び、左の茂みに男が寝そべる。全体が淡いピンクと緑で覆われ、輪郭が柔らかい。
ホラティウス兄弟の誓い(バロック・古典)
ジャック・ルイ・ダヴィッド/1784年。古代ローマの物語で、三兄弟が父の掲げる剣へ手を伸ばし誓いを立てる場面。縦330cm・横425cmの大きなカンヴァスで、ルーヴル美術館にある。背景は装飾のない石の建物だけ。余計な物が一つもないので、人物の姿勢がそのまま意味になる。
メデューズ号の筏(ロマン主義・写実)
テオドール・ジェリコー/1818〜19年。約4.9×7.2メートルのカンヴァスに、実際の海難事故で漂流したいかだを等身大より大きく描く。手前には力尽きた体が横たわり、奥では布を振る男が立ち上がっている。全体が褐色に沈み、人の肌だけが白く浮く。ルーヴル美術館蔵。
民衆を導く自由の女神(ロマン主義・写実)
ウジェーヌ・ドラクロワ/1830年。約2.6×3.25メートルのカンヴァス。硝煙の立ちこめるバリケードの上を、三色旗を掲げた女性が踏み越えてくる。足元には倒れた人が積み重なり、右奥にはノートルダム大聖堂の塔が霞んで見える。ルーヴル美術館蔵。
1808年5月3日(ロマン主義・写実)
フランシスコ・デ・ゴヤ/1814年。約2.68×3.47メートルのカンヴァス。夜の丘で、銃を構えた兵士の列と、撃たれる直前の市民たちが向かい合う。中央の男は白いシャツで両手を上げ、その足元にはすでに倒れた体がある。マドリードのプラド美術館蔵。
戦艦テメレール号(ロマン主義・写実)
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー/1839年。90.7×121.6センチのカンヴァス。夕暮れの川面を、青白く霞んだ大型帆船が、黒く小さな蒸気タグボートに引かれて進む。右手には赤く燃える太陽が沈み、水面がその色を長く映す。ロンドン・ナショナルギャラリー蔵。
雲海の上の旅人(ロマン主義・写実)
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ/1818年ごろ。94.8×74.8センチの縦長のカンヴァス。岩の上に一人の男が背を向けて立ち、その足元から先はすべて霧の海になっている。霧を突き破って遠くの岩山や木の先だけが顔を出す。ドイツのハンブルク美術館蔵。
落穂拾い(ロマン主義・写実)
ジャン・フランソワ・ミレー/1857年。83.5×110センチのカンヴァス。刈り取りの終わった畑で、三人の女が腰を折り、地面に残った麦の穂を拾っている。奥には積み上がった麦の山と、馬に乗った監督者が小さく描かれる。パリのオルセー美術館蔵。
オルナンの埋葬(ロマン主義・写実)
ギュスターヴ・クールベ/1849〜50年。約3.15×6.6メートルという、壁のように横長のカンヴァス。田舎町オルナンの墓地で、40人ほどの村人が掘られた穴を囲んで立つ。手前には掘り返された頭蓋骨。神も天使も光も差してこない。パリのオルセー美術館蔵。
オフィーリア(ロマン主義・写実)
ジョン・エヴァレット・ミレイ/1851〜52年。76.2×111.8センチのカンヴァス。川に仰向けで浮かぶ女性と、彼女を囲む草花を、一本ずつ数えられるほど細かく描く。シェイクスピア『ハムレット』の、オフィーリアが溺れる場面にあたる。ロンドンのテート・ブリテン蔵。
印象・日の出(印象派)
クロード・モネ/1872年。48×63センチと、当時の展示作としては小さいカンヴァス。ル・アーヴル港の朝もやのなかに、オレンジ色の太陽と二艘の小舟。奥の帆船やクレーンは輪郭がほどけ、影のようにしか描かれていない。パリのマルモッタン・モネ美術館蔵。
睡蓮(印象派)
クロード・モネ/1906年ごろ。モネがジヴェルニーの自宅の池を描き続けた連作で、点数は250点前後とされる。1906年ごろの一枚はおよそ90センチ角のカンヴァス。水面と、そこに映る空や柳だけで画面が埋まり、岸も地平線も入っていない。
ルーアン大聖堂(印象派)
クロード・モネ/1892〜94年。ルーアンのゴシック大聖堂の正面を、向かいの建物の窓から間近に切り取った縦長のカンヴァス。1点はおよそ縦107cm×横73cm。空も地面もほとんど入らず、画面はほぼ石の壁だけで埋まる。石そのものより、石に当たっている光の色のほうが主役に見える。
舟遊びの昼食(印象派)
ピエール・オーギュスト・ルノワール/1880〜81年。セーヌ川沿いのレストランのテラスで、昼食を終えた一行がくつろいでいる場面。縦130cm×横176cmのカンヴァスに14人が入る。日よけ越しの白っぽい光と、手前のテーブルに残ったグラスや果物の照りが、まず目に入ってくる。
ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会(印象派)
ピエール・オーギュスト・ルノワール/1876年。モンマルトルの野外ダンス場に、日曜の午後の人だかりができている場面。縦131cm×横175cmの大きなカンヴァスで、踊る人、座って話す人、こちらを向く人が入り混じる。木漏れ日が地面と服にまだら模様を作っている。
エトワール(印象派)
エドガー・ドガ/1876〜77年。舞台の上で片脚を伸ばし、ポーズを決めた瞬間の踊り子。縦58cm×横42cmと小さく、カンヴァスの油彩ではなく紙にパステルで描かれている。白い衣装だけが強く光り、まわりは薄暗い書き割りで埋まっている。
草上の昼食(印象派)
エドゥアール・マネ/1863年。森の中で、服を着た男二人と裸の女性が並んで座り、奥ではもう一人が水に入っている。縦208cm×横265cmと、本来は歴史画に使う大きさのカンヴァス。手前には脱いだ服と果物が転がっている。
オランピア(印象派)
エドゥアール・マネ/1863年。白いベッドに横たわり、こちらを見返す裸の女性。奥から召使いが大きな花束を差し出し、足元では黒い猫が背を立てている。縦131cm×横190cmの横長のカンヴァスで、白いシーツの占める面積がとても大きい。
パリの通り、雨(印象派)
ギュスターヴ・カイユボット/1877年。雨の交差点を、傘をさした人々が行き交う場面。縦212cm×横276cmという非常に大きなカンヴァスで、手前の男女は等身大に近く見える。濡れた石畳が鈍く光り、画面全体が灰色と青にまとまっている。
ゆりかご(印象派)
ベルト・モリゾ/1872年。ゆりかごの中で眠る赤ん坊を、母親が手を頬にあてて見つめている。縦56cm×横46cmと小さな縦長のカンヴァス。画面の半分近くを白く透ける薄い布が占め、色数は白・灰・黒あたりに絞られている。
星月夜(ポスト印象派)
フィンセント・ファン・ゴッホ/1889年。夜空が渦を巻き、手前に糸杉が黒い炎のように立ち上がる。縦74cm×横92cmの横長のカンヴァス。空が画面の大半を占め、下の村は小さく静かにまとまっている。絵の具が厚く、実物は表面が波打って見える。
ひまわり(ポスト印象派)
フィンセント・ファン・ゴッホ/1888年。素焼きの壺に挿した15本のひまわりだけを描いた縦長のカンヴァス。大きさは縦92cm×横73cm。背景も机も花もすべて黄色で、影らしい影がほとんど無い。咲いた花と、種になって枯れかけた花が同じ束に混ざっている。
アルルの寝室(ポスト印象派)
フィンセント・ファン・ゴッホ/1888年。アルルの「黄色い家」にあった自分の部屋。ベッド、椅子二脚、テーブル、洗面の道具、壁に掛けた自作の絵だけで画面が埋まり、人はひとりもいない。1888年10月に描かれた第一作は72.4×91.3cmのカンヴァスで、アムステルダムのファン・ゴッホ美術館にある。
われわれはどこから来たのか(ポスト印象派)
ポール・ゴーギャン/1897〜98年。横に長い一枚。約139×375cmはゴーギャンの絵で最大とされる。青緑に沈んだ木立の下に十数人と犬・山羊・鳥が並び、右端の眠る赤ん坊から左端のうずくまる老女まで、人の一生がひと続きに置かれる。前に立つと横に歩きながら見る絵になる。
説教のあとの幻影(ポスト印象派)
ポール・ゴーギャン/1888年。白い頭巾のブルターニュの女たちが目を閉じて手を合わせ、その向こうの真っ赤な地面でヤコブと天使が組み合っている。説教で聞いた話がそのまま見えている、という画面。72.2×91cmのカンヴァスで、エディンバラのスコットランド国立美術館にある。
ムーラン・ルージュにて(ポスト印象派)
アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック/1892〜95年。パリのダンスホールの店内。手前のテーブルを五人が囲み、奥では鏡の前で女が髪を直している。右端では顔を下から照らされた女が画面の外を見る。舞台ではなく客席の側を描いた絵で、123×141cmのカンヴァス。シカゴ美術館にある。
蛇使いの女(ポスト印象派)
アンリ・ルソー/1907年。月の出た水辺に、黒い影として塗られた女が立って笛を吹く。木々から蛇が伸び、足もとにも一匹。左下には大きな桃色の鳥がいる。葉の一枚一枚が輪郭を保ったまま重なる密林だが、ルソーは熱帯へ行ったことがない。169×189.5cmのカンヴァスで、パリのオルセー美術館にある。
サン=トロペの港(ポスト印象派)
ポール・シニャック/1901〜02年。南フランスの港を岸から見た絵。手前の岸は青紫の影で、網を扱う人影が小さく並ぶ。中央は光る水面、その奥に鐘楼のある町、上は桃色の空。画面全体が細かい四角い筆あとで埋まる。131×161.5cmのカンヴァスで、東京の国立西洋美術館にある。
神奈川沖浪裏(日本・東洋の絵)
葛飾北斎/1831年ごろ。左からせり上がった大波が右へ覆いかぶさり、その下に舟が三艘。波の谷の向こうに、小さく雪をかぶった富士山が見える。紙はおよそ25.7×37.9cmで、手に持てる大きさしかない。『冨嶽三十六景』という全46図の連作の一図。
凱風快晴(日本・東洋の絵)
葛飾北斎/1831年ごろ。画面のほとんどが富士山ひとつ。裾を大きく広げた山肌が赤茶に染まり、上には鱗雲の並ぶ濃い青空、下には暗い緑の樹海が広がる。人も建物も出てこない。およそ25×37cmの錦絵で、『冨嶽三十六景』の中でも富士だけを正面から据えた一図。
大はしあたけの夕立(日本・東洋の絵)
歌川広重/1857年。縦長の紙に、隅田川へ架かる新大橋を斜めに置き、通り抜ける夕立を描く。橋の上では人が背を丸めて走り、川面には筏を操る人がひとり。上は濃紺、下は藍の川。およそ37×25cmの大判錦絵で、『名所江戸百景』の一図。
ポッピンを吹く娘(日本・東洋の絵)
喜多川歌麿/1792〜93年ごろ。若い娘が、薄いガラスの玩具「ポッピン」を口にあてて吹いている。上半身だけを大きく取り、背景には何も描かれない。市松に小花を散らした紅色の着物が、大きな曲線で下半分を占める。およそ37×25cmの大判錦絵で、『婦人相学十躰』(のち『婦女人相十品』)の一図。
奴江戸兵衛(日本・東洋の絵)
東洲斎写楽/1794年。舞台の悪役を胸から上だけで見せる大首絵。背景には何も描かず、黒い雲母を摺った地が鈍く光る。縦およそ38cm・横およそ25cmの大判錦絵を和紙に木版で摺ったもので、開いた両手とへの字の口だけが目に飛び込んでくる。
風神雷神図屏風(日本・東洋の絵)
俵屋宗達/17世紀前半。金箔を押した二曲一双の屏風。向かって右に緑の風神、左に白い雷神を置き、真ん中には何も描かない。各隻154.5×169.8cmの紙本金地著色で、屏風として立てると左右の神が斜めに向かい合う形になる。
燕子花図屏風(日本・東洋の絵)
尾形光琳/1701年ごろ。金地に燕子花だけを描いた六曲一双の屏風。水も土手も橋も人も描かれていない。各隻150.9×338.8cmの紙本金地著色で、使われている色は花の群青と葉の緑青のほぼ二色だけ。何の場面なのかを説明する要素を、片端から外していった画面。
動植綵絵(日本・東洋の絵)
伊藤若冲/1757〜66年ごろ。鶏、魚、草花、虫を描いた30幅の連作。1幅は縦およそ142cm・横およそ79cmの絹本著色で、掛軸としてはかなり大きい。どの幅も画面が生き物で埋まっていて、余白がほとんどない。30幅がそろって一組をなし、公開は一部ずつ入れ替えて行われる。
松林図屏風(日本・東洋の絵)
長谷川等伯/16世紀末。松の幹と枝のほかは、紙の白がそのまま残る六曲一双の屏風。各隻156.8×356.0cmの紙本墨画で、色は一切使われていない。近づくと筆の掠れた跡が荒く、離れると霧の中の林に見える。
秋冬山水図(日本・東洋の絵)
雪舟等楊/15世紀後半。秋と冬の二幅が残る掛軸。各幅は縦47.7cmほど、横は30cm前後しかない紙本墨画で、掛軸としては小さい。それでも岩と崖が画面の中で押し合っていて、近づくほど圧が強い。色はなく、墨の濃さと線の太さだけで組み立てられている。
サント・ヴィクトワール山(近代の入り口)
ポール・セザンヌ/1902〜06年。南仏エクスの町から見える山を、繰り返し描いた最晩年の一枚。フィラデルフィア美術館の版は64.8×81.3cmのカンヴァスに油彩。手前に家と木、奥に山という単純な作りだが、どこも色の面のつぎはぎでできている。
グランド・ジャット島の日曜日の午後(近代の入り口)
ジョルジュ・スーラ/1884〜86年。セーヌ川の中州で日曜の午後を過ごす人々。207.6×308cmという壁のような大きさのカンヴァスに油彩で描かれ、近づくと画面全体が細かい点の集まりになる。人物は数十人いるが、誰も動いていないように見える。
叫び(近代の入り口)
エドヴァルド・ムンク/1893年。柵のある道の上で顔を押さえる人物と、渦を巻く赤い空。オスロの国立美術館にある1893年の版は91×73.5cmで、カンヴァスではなく厚紙に描かれている。地をところどころ塗り残してあり、紙の茶色がそのまま画面に出ている。
接吻(近代の入り口)
グスタフ・クリムト/1907〜08年。180×180cmの正方形のカンヴァスに、油彩と金箔。抱き合う二人が一つの金の塊のように見え、顔と手だけ肌の色で残っている。背景に空も部屋もなく、金がそのまま奥まで続いていて、二人がどこに立っているのかは分からない。