燕子花図屏風
日本・東洋の絵
尾形光琳/1701年ごろ
どんな絵か
金地に燕子花だけを描いた六曲一双の屏風。水も土手も橋も人も描かれていない。各隻150.9×338.8cmの紙本金地著色で、使われている色は花の群青と葉の緑青のほぼ二色だけ。何の場面なのかを説明する要素を、片端から外していった画面。
どこを見るか
まず同じ形の花を探す。輪郭をなぞっていくと、離れた場所にまったく同じ花が見つかる。この反復とパターンが、平らな金の上にリズムをつくる。群れは高く低く波打ちながら右隻から左隻へ流れる。群青と緑青は類似色の関係にあり、色数が少ないぶん彩度の高さがそのまま前に出る。
使われている技法
地は和紙に金箔を押したもので、その上へ群青(藍銅鉱)と緑青(孔雀石)の岩絵具を厚く置いている。粒の粗い岩絵具は光を含んでざらつき、平らな金と質感が食い違う。同じ形が繰り返される点から、実家の呉服商で使う型紙の発想との関係が指摘されている。
描かれた背景
『伊勢物語』第九段の八橋の場面を下敷きにすると見るのが一般的だが、橋も旅人も描かれていない。物語の場面というより歌を知っている人が思い出すための仕掛けと見ると分かりやすい。「法橋光琳」の落款から1701年ごろの作とされてきたが、「法橋」の二字は後の書き入れとする説もあり、それに従えばもっと早い作になる。根津美術館蔵の国宝で、燕子花の咲く春に公開される。
解説動画: 二色だけの燕子花図屏風と、晩年の夏草図屏風との比較/美術展ナビ
どんな屏風として紹介しているか: 毎年恒例の燕子花図屏風の公開で、今回は光琳が生きた時代に作られた絵とあわせて見せる趣向だと述べる。総金地の六曲一双に、群青と緑青の二色だけで燕子花の群生を描く。左右の隻の均衡と対称をよく計算し、リズミカルに並べていると説明する。光琳が四十四、五歳ごろの作にあたるという。
花のかたちを見る: 花は大変たっぷりと描かれていて、半ばデザイン化されていると説明する。ただ、そこに微妙に写生的な要素も加わっていて、それがこの姿形の魅力になっているという。デザイン化と写生が同居しているところを、細部を見るときの手がかりに挙げている。
晩年の夏草図屏風と比べる: 同じ光琳の晩年作『夏草図屏風』を隣に並べる。二曲一双に夏草が対角線を描くように配され、そこにも燕子花があるが、花びらは燕子花図よりずっとほっそりしている。実際の燕子花の姿はむしろこちらに近く、写生的だという。装飾的な画風に写実の表現が混じり合い、のちの円山応挙を先駆けるような作品になっていると説明する。