ゆりかご

印象派

ゆりかごは、ベルト・モリゾによる1872年の作品。

どんな絵か

ゆりかごの中で眠る赤ん坊を、母親が手を頬にあてて見つめている。縦56cm×横46cmと小さな縦長のカンヴァス。画面の半分近くを白く透ける薄い布が占め、色数は白・灰・黒あたりに絞られている。

どこを見るか

母のまなざしと、ゆりかごを覆う薄布の縁が同じ斜めの線に乗り、画面を斜めに貫く対角線構図になる。曲げた母の腕は、眠る子の小さな腕と同じ形で繰り返される。いちばん明るいのは布で、顔はやや暗く落とされている。オルセー美術館は、この薄布を見る側と赤ん坊を隔てる幕と見る。白から灰へのトーンの幅だけで奥行きが作られる。

使われている技法

カンヴァスに油彩。薄布は白を薄く伸ばし、下の色を透かせて描かれていて、筆あとがそのまま生地の粗さになる。色は白と灰に寄せられ、彩度はほとんど上げていない。細部を詰めない仕上げは当時よく批判された点でもある。

描かれた背景

1872年、モリゾが姉エドマと、その娘ブランシュを描いたもの。1874年の第1回印象派展に出品され、この回のカタログに名前が載った画家のうち女性はモリゾひとりだった。売れずに手元へ戻り、モデルの家族が持ち続けたのち1930年にルーヴルが購入した。オルセー美術館蔵。2022年の論文(ヴェントゥーラ)は、本作の主題は母子の親密さだけでなく、医学知識や衛生意識の広がりを背景に、眠る乳児の姿そのものが近代性を象徴すると論じる。

出典

  1. 公的機関・英語 Musée d'Orsay(Google Arts & Culture の作品ページ) Le Berceau(Berthe Morisot)
  2. 論文・英語 Gal Ventura(Art Bulletin)(2022) The Cradle: Berthe Morisot and the Medicalization of Babies' Sleep

解説動画: 眠る娘を見つめる姉と、画家をあきらめた姉妹の話/あけわか美術館【公式】

どんな絵として紹介しているか: 1872年にモリゾが描き、今はパリのオルセー美術館にある56×46cmの絵として取り上げている。描かれているのはモリゾの姉エドマとその娘で、ベールに隠れた娘を見つめる姉のほうを主人公に据えた絵だと説明している。

姉妹の対照として読んでいる: 姉エドマもモリゾと一緒に絵を学んでいたが、結婚を機に家庭へ入り、絵をあきらめたと述べる。一方のモリゾはマネの弟ウジェーヌと結婚してからも現役で描き続けた。同じように画家を目指した二人の人生の分かれ方と、19世紀に女性が自立することの難しさがこの絵に現れているのだ、という読み方を示している。