夜警
バロック・古典
レンブラント・ファン・レイン/1642年
どんな絵か
市民自警団の集合肖像画で、切り詰められた今の状態でも高さ約3.6m・幅約4.4mあり、人物が実物大に近い大きさで並ぶ。金を出した隊員のほかに名前の分からない人物も紛れ込み、全員が整列して正面を向く当時の集合肖像とは違って、号令で動き出す一瞬のように見える。
どこを見るか
明るい三か所だけを順に追うとよい。黒い服の隊長、その右で黄色く光る副官、左奥で金色に浮かぶ少女。周囲は影に沈み、コントラストの差がそのまま順路になる。斜めに突き出た槍がリーディングラインをつくり、隊長の手の影が副官の上着に落ちているのを見つけると前後が読める。
使われている技法
カンヴァスに油彩。光の当たる衣装や刺繍は絵の具を厚く盛るインパスト、影の側は薄く溶いて下地を透かす。この厚みの差が離れて見たときの輝きになる。「夜警」は後世の通称で、変色したニスと汚れで暗く見えた時期に付いた名前にすぎない。
描かれた背景
アムステルダムの火縄銃手組合が集会所を飾るために注文した集合肖像で、隊員十八人が一人百ギルダーほどを出し合った。左奥の少女が腰に下げた鶏の爪は組合の紋章と結びつけて読まれることが多い。1715年に市庁舎へ移す際に四方が切り詰められ、左側の人物二人が失われている。
解説動画: 夜警の明暗の付け方と、少女は誰かという問い/山田五郎 オトナの教養講座
どんな絵として説明しているか: 火縄銃組合の自警団が金を出し合って描かせた集団肖像で、写真の無い時代の記念写真にあたる絵だと説明している。「夜警」は後から付いた通称で、どうやら昼の場面らしいという。表面のニスが黒ずんで全体が暗く見えたことが名前の由来として語られるが、それだけでなくもともと暗い絵なのだとも述べている。
明暗の付け方: バロックはゆがんだ真珠を指す言葉で、静かなルネサンスに対して動きと対比を取る様式だと整理し、明暗を極端に振るキアロスクーロをカラヴァッジョが確立して各国へ広まったと説明する。影を普通以上に暗くするぶん光の当たる所が際立つので、隊長と副隊長、そして少女だけが浮かび上がる。
少女は誰か: 隊員たちの中に一人だけ混ざる少女については、実在の人物ではなく女神として描かれていると見ている。根拠は腰に下げた鶏の爪で、火縄銃の火ばさみの形から来た組合の象徴だという。ただし光の当て方が強すぎて顔つきも大人びているとして、制作中に亡くなった妻の面影が入っているのではないかという想像混じりの説も紹介している。
この絵のあと: 集団肖像に場面を付ける描き方でレンブラントは人気を得たが、この絵では踏み込みすぎたと述べる。暗くて顔が見えない隊員や横顔だけの隊員が出たため金を出した側から不満が上がり、評判を落とした。代表作であると同時に、そこから借金と破産へ落ちていく転落のきっかけになった一枚でもあると位置づけている。