ホロフェルネスの首を斬るユディト

バロック・古典

アルテミジア・ジェンティレスキ/1620年ごろ

どんな絵か

旧約聖書外典の場面で、ユディトと侍女が敵将ホロフェルネスを押さえつけ、剣で首を斬っている。縦199cm・横162.5cmの大きなカンヴァスで、フィレンツェのウフィツィ美術館にある。三人の腕が中央で組み合い、力の入り方まで見える描き方になっている。

どこを見るか

三人の腕が画面中央で三角構図を作り、そのまま剣の位置へ目が集まる。明るいのは女二人の腕と胸元、そして白い寝具で、背景は黒く塗りつぶされて奥行きがない。噴き出した血が布に落ちる向きまで描かれ、逃げ場のないコントラストが場面を近くに感じさせる。

使われている技法

カンヴァスに油彩。カラヴァッジョ以降の強い明暗法を受け継ぎ、光は左上から差して腕と顔だけを闇から取り出す。黄色いドレスと赤い布は暗さの中でいっそう濃く見える。同じ主題を1612年ごろにも描いており、ナポリにある版と比べると構図が整理されている。

描かれた背景

トスカーナ大公コジモ2世が妃への贈り物として注文したとされ、報酬は五十スクードだった。この主題は当時よく描かれたが、女二人が力ずくで押さえ込む描き方は珍しい。画家が受けた性暴力の裁判と結びつける読みは有名な一方、作品を伝記に還元しすぎだという批判もある。

解説動画: 斬首の最中を描いたユディトと、復讐として読む解釈/AboutArt

この絵をどう見ているか: まず、二人の女性が男を殺している最中を描いた生々しさに驚かされると述べる。下敷きは旧約聖書のカトリック版に入るユディト記で、敵陣に潜り込んだユディトが敵将ホロフェルネスを酔わせ、その剣で首を斬り、侍女アブラとともに首を持ち帰る物語だと紹介する。同じ主題は当時何度も描かれたが、暴力性とリアリズムでは前例がないと評している。

カラヴァッジョとの違い: 先行する画家の多くは斬首の直後を選んだのに対し、カラヴァッジョは斬首のまさにその瞬間を描き、アルテミジアもその構図に従ったと説明する。父の親友でもあり影響は疑いようがない一方、違いも大きい。ユディトが袖をまくって手を汚す用意をしていること、侍女が無表情な老女ではなく、馬乗りで全体重をかけて押さえる若い協力者になっていることを挙げる。

どこを見るか: これは同じ場面の2作目で、最初の版は1611年ごろローマにいた時期のものだとし、2作目では照明がドラマチックになり布地は豪華に、剣はより垂直に置かれたと比べている。アブラの体・ホロフェルネスの腕・ユディトの剣が画面中央を縦に走り、四肢の対角線が斬られる首へ集まる。血も量が多く、飛沫だけでなく白い寝具へ流れ落ちる血の川まで描かれる。

伝記と結びつける読みの扱い: 画家が受けた性暴力とその裁判に重ね、果たせなかった復讐を絵にしたものだと読む解釈を紹介し、ユディトの腕輪のカメオに名の由来である女神アルテミスが見える点も根拠に挙がると述べる。ただしトラウマだけで絵を定義しないよう促し、男性優位の分野で名を残そうとした画家であること、劇的で人を動かす芸術を教会が求めた対抗宗教改革のただ中で働いていたことも同じだけ重い、という立場を示す。