聖マタイの召命
バロック・古典
カラヴァッジョ/1599〜1600年
どんな絵か
薄暗い部屋で金を数える男たちのところへ、キリストが現れた場面。縦322cm・横340cmの大きなカンヴァスで、ローマのサン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂の礼拝堂に今も掛かる。登場人物は聖人らしい衣ではなく当時の街の男の服を着ている。
どこを見るか
右上から斜めに射す光がこの絵の主役。光は暗い壁を横切って男たちの顔に当たり、サイド光として鼻や頬に強い影を落とす。右のキリストの手が左へ伸び、その指先がリーディングラインになって視線を男たちへ渡す。画面の中の窓は光っていないので、光源は絵の外にある。
使われている技法
カンヴァスに油彩。下地を暗い茶色に塗り、そこから明るい部分を起こしていく明暗法の極端な形で、影の中には色をほとんど置かない。下絵を描かず生きたモデルを前に直接描いたとされ、筆の柄で引っかいた線が位置決めの目印として残る。
描かれた背景
カラヴァッジョが初めて受けた大きな公開注文で、同じ礼拝堂の《聖マタイの殉教》と対になる。指さす髭の男がマタイなのか、その指の先で顔を伏せる若者がマタイなのかは今も割れており、わざと曖昧にしたと読む研究者もいる。宗教画に街の現実を持ち込んだ点が当時から議論を呼んだ。
解説動画: マタイはどの人物か、三つの説と近年の調査/ロマニッシモ公認ガイド【RomanissimoTube】
どこにある絵として案内しているか: ローマのサン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂を案内し、この教会の絵でカラヴァッジョは有名になったと述べる。中の礼拝堂にカラヴァッジョが聖マタイの物語を描いており、その一枚がこの場面だと紹介したうえで、画面を拡大しながら人物を順に見ていく構成になっている。
マタイはどの人物かという議論: テーブルを囲む男たちのうち誰がマタイなのかで説が分かれると説明する。あるイタリアの研究者は、自分を指しているように見え、収税人らしく卓上の金に手をかけている長い髭の男だとする。日本の研究者はキリストに気づいて立ち上がろうとしている真ん中の男だとし、最近では、まだ気づかず金を数えている一番左の男だとする新しい説も出ているという。
描き足しと近年の調査: 髭の男の指は隣の男を指しているようにも見えると付け加えたうえで、カラヴァッジョは最初にキリストだけを描き、聖ペテロを後から加えたと説明する。同じ礼拝堂の他の場面については、塗った表面層に刷毛の柄で入れた切り込みや、下の層を見る機械で見つかった塗りつぶし前の絵を挙げ、こうした調査がカラヴァッジョの謎を解く鍵になっていると述べている。