アテネの学堂
ルネサンス
ラファエロ・サンティ/1509〜11年
どんな絵か
ヴァチカン宮殿「署名の間」の壁一面を占める約500×770cmのフレスコ。丸天井の大きな建物の中に、古代の哲学者や数学者が大勢集まっている。この部屋には四面それぞれに壁画があり、その一つにあたる。
どこを見るか
床の線も天井の格間も、いちばん奥のアーチの中央に立つ二人へ集まる一点透視。誰も指し示さなくても目が二人へ行くのはそのため。重なるアーチが二人を囲む額縁構図にもなり、背後だけ空が抜けて明るい。手前の人物は階段の下に散らして高さの差をつくる。
使われている技法
濡れた漆喰に顔料を置き、乾ききる前に描き上げるフレスコ。その日に塗った区画を継いで進めるため、一度乾いたら描き直せない。実物大の下絵を紙に描いて輪郭を壁へ写し、床や天井の格子は遠近法の作図どおりに線を引いている。
描かれた背景
1509〜11年、教皇ユリウス2世の書斎を飾るためにラファエロが描いた。向かいの壁には神学を主題にした壁画があり、哲学と信仰を対に置く構成になっている。中央の二人はプラトンとアリストテレスとされ、天を指す手と地へ向ける掌の対比がよく語られるが、他の人物の同定には諸説ある。
解説動画: 部屋全体のテーマと、哲学者に重ねられた同時代人/山田五郎 オトナの教養講座
どこに描かれた絵か: 教皇ユリウス2世に呼ばれたラファエロが、ヴァチカンの署名の間に描いた5m×7mの壁画。天井には神学・法学・詩学・哲学を擬人化した四人がいて、その真下にそれぞれのテーマの絵がある。この絵は哲学の下で、向かいの壁はキリスト教の聖体の議論。ギリシャ哲学とキリスト教の融合というルネサンスの理念そのものを表した部屋だと説明している。
中央の二人と並ぶ哲学者: 中央はプラトンとアリストテレスで、プラトンは天を指しアリストテレスは地上へ掌を向ける。イデアを説く側と現実を解明する側の対比だという。中世まではアリストテレスが第一だったが、新プラトン主義の流行でこの頃はプラトンが最も評価の高い哲学者になっていたと背景を説明する。周りにはソクラテスからプロティノスまでの系譜が続き、下の段には数学や自然哲学の人が並ぶ。はだけた姿で寝そべり器を置いた男はディオゲネスだとしている。
ピタゴラスが書いている図: 手前で板に何か書き込んでいるのはピタゴラスで、書かれているのは音楽を数の比で説明した図だと解く。6・8・9・12という数を結び、3対4なら4度、2対3なら5度、1対2ならオクターブ、9対8は不協和音になる。1から4までの数だけで音程が表せるという数と音楽の神秘主義で、ラファエロはここまで知って描いていると話す。
哲学者に重ねられた同時代人: プラトンの顔はどう見てもレオナルド・ダ・ヴィンチだと言い、コンパスで作図する人物はラファエロを推薦した建築家ブラマンテ、画面の隅には本人の自画像がいるとする。手前に大きく描かれたヘラクレイトスはミケランジェロで、残っている下絵にはこの人物がいないため後から加えられたと見る。天井画を真似したと怒られた相手への気遣いではないか、という読みを示している。