牛乳を注ぐ女

バロック・古典

牛乳を注ぐ女は、ヨハネス・フェルメールによる1658〜60年ごろの作品。

どんな絵か

台所で女中が壺から器へ牛乳を注ぐ、縦45.5cm・横41cmのカンヴァスに油彩の小さな絵。アムステルダム国立美術館は、女が作業に没頭し、牛乳の流れのほかはすべて静止していると解説する。卓上には硬くなったパンがちぎってあり、パン粥(ブレッドプディング)の支度と考えられている。物語ではなく一つの動作が止まった瞬間を見せている。

どこを見るか

左上の窓から入る窓の光が、白い壁と女、卓上のパンを照らす。窓ガラスは一部が割れ、そこだけ外の光が強く見える。顔は白い帽子の影に半ば隠れて表情がはっきり読めず、視線は牛乳の細い筋へ集まる。Great Art Explained は、壁の額・籠・桶が牛乳の筋へ向けて落ちるように並ぶと説明する。壁の釘穴やひび割れまで、牛乳と同じ細かさで描かれている。黄の上着・青のエプロン・赤のスカートも白い壁に映える。

使われている技法

カンヴァスに油彩。パンや籠には光の粒のような点が置かれ、アムステルダム国立美術館は数百の色の点が物の表面で光を遊ばせると解説する。同館の2022年の調査で、黒い絵の具の素早い下描きに壁の壺置き棚と右下の火籠(火鉢を入れる籠)が描かれ、のちに塗りつぶされたと分かった。従来は極度に正確にゆっくり描く画家と考えられ、同館はその見方を改めつつある。

描かれた背景

台所女中は当時の絵や文学で、家庭を揺るがす色っぽい存在として描かれることがあった。足温器と壁際のタイルのキューピッドに同じ含みを読む解説と、古くなったパンを牛乳で生かす倹約の美徳と読む解説があり、Great Art Explained は性的な含みを認めつつ、品位ある女として描いたと見る。1908年にレンブラント協会の支援で購入され、来歴は17世紀の収集家ファン・ライフェンに遡る。

出典

  1. 公的機関・英語 Rijksmuseum The Milkmaid
  2. 公的機関・英語 Rijksmuseum(2022) Rijksmuseum reveals major discoveries on Vermeer's painting The Milkmaid
  3. 動画・英語 Great Art Explained The Milkmaid by Johannes Vermeer: Great Art Explained
  4. 動画 こやぎ先生の美術ちゃんねる 楽しく解説!美術講座【牛乳を注ぐ女】フェルメールの名作の意味を追求します!
  5. 動画 美術史チャンネル 【作品解説】フェルメール《牛乳を注ぐ女性》(1660年頃、アムステルダム国立美術館)―女性人物像の衣装から籠の目、金属容器の輝き、白壁の釘穴、割れた窓ガラス、パンを載せた机の表現まで

解説動画: 冬の朝の台所を、道徳画と読むか色恋と読むか/こやぎ先生の美術ちゃんねる

どういう絵として見ているか: 17世紀半ばのオランダの画家ヨハネス・フェルメールの作で、若い使用人が壺から容器に牛乳を移しているだけの場面だと紹介する。細く注ぐ動きがゆっくりした時間を感じさせ、テーブルには硬そうなパンがちぎって置かれている。前掛けの青は当時金と同じほどの価値があったラピスラズリの粉で、フェルメールブルーと呼ばれると述べている。

季節と時間の読み取り方: 右下に置かれた足温器は炭で火を焚いて足元を温める器具で、ここから季節は冬、光の差す角度から時間は朝と読めると説明する。作っているのはパンで作るプリンで、壺にはすでにパンとカスタードが入っており、ダマにならないよう慎重に注いでいるところだという。背景は石灰の打ちっ放しで、釘を刺した跡や剥がれ、吊るされた籠、少し割れた窓まで描き込まれていると指摘する。

道徳画として読む説: 当時は注文を受けて描くのが基本で、働く使用人を描いてくれという依頼は考えにくいことから、この絵には宗教的な意味があると言われていると説明する。宗教改革でオランダはプロテスタント側になり、清く正しく質素にという考えを絵にするなら、正しく生きることの美しさを描くことになる。硬くなったパンも牛乳を注げば食事に生まれ変わる、贅沢だけが全てではないという教えだとする。

性的な含みを読む説: もう一つ、足温器は女性がスカートの下に入れて使うものだとして、使用人と依頼主である家の主人との関係を示すのではないかという説も紹介する。足元のタイルに遊ぶ二人のキューピッドが描かれている点も、愛欲の神エロスにあたるとして根拠に挙げる。解説者自身は考えすぎではないかと留保しつつ、想像をかき立てるのも名画の宿命だとまとめている。