ホラティウス兄弟の誓い

バロック・古典

ジャック・ルイ・ダヴィッド/1784年

どんな絵か

古代ローマの物語で、三兄弟が父の掲げる剣へ手を伸ばし誓いを立てる場面。縦330cm・横425cmの大きなカンヴァスで、ルーヴル美術館にある。背景は装飾のない石の建物だけ。余計な物が一つもないので、人物の姿勢がそのまま意味になる。

どこを見るか

奥の三つのアーチが画面をきれいに三分し、左に兄弟、中央に父、右に女たちが収まる。床と柱の線は父が握る剣の位置へ集まる一点透視で、そこが焦点になる。左と中央は直線、右だけが曲線という描き分けも効き、伸びた腕と剣に対して女たちの体は丸くうなだれる。

使われている技法

カンヴァスに油彩。筆の跡を消して表面を平らに仕上げ、輪郭を線でくっきり締める。彫刻を写したような硬い明暗法で体の面を作り、色は赤・白・青褐色に絞る。絵の具の質感で見せない作りは、装飾的なロココへの反発と説明されることが多い。

描かれた背景

ローマ滞在中に制作され、1785年のサロンで発表された。国王の建築総監を通じた王室からの注文だが、公のために私情を捨てる主題が革命前夜のフランスで政治的に読まれ、新古典主義の代表作となった。画家自身がどこまで政治を意図したかは断定されていない。

解説動画: ロココへの反発として生まれた新古典主義の第一作/こやぎ先生の美術ちゃんねる

この絵をどう位置づけているか: 1784年にダヴィッドが描き、新古典主義を確立した記念碑的な作品だと説明する。アカデミー正会員になった彼の実質のデビュー作で、抜本的に新しい絵で鮮烈に登場する意図があったと見る。フランス革命は1789年だから、新古典主義は革命より前に生まれていた点を強調している。

描かれた背景: 直前のロココは、王侯貴族が邸宅を飾るための享楽的な絵の全盛期だったと押さえる。動画はこの絵の注文主を当時の国王とし、革命前で国民の不安が高まるなか、失われつつある国家への忠誠を打ち出す絵が求められたのだと説明する。そこでダヴィッドは国のために命を投げ出す古代ローマの物語を選んだのだと語る。

描かれている物語: リウィウスの『ローマ建国史』の話で、長引く戦争を終わらせるため、ローマとアルバがそれぞれ三人一組の代表を出して決闘することになった場面。父へ伸ばした腕は出陣前のローマ式敬礼だという。右で嘆く女のうち白い衣のカミラは兄弟の妹で婚約者が敵方、もう一人は敵方から嫁いだ女で、どちらが勝っても身内が死ぬ。

どこを見るか: 父が握る三本の剣のうち手前の一本だけがまっすぐで、その持ち主の赤と青の衣は父と同じ配色だから、生き残ってローマを率いるのは手前の男だと読む。人物を三人ずつの塊にして背景の柱と対応させ、男は柱のように直立、女はアーチのように丸く描く。幾何学的な床も含めた論理的な組み立てを様式の特徴に挙げる。