アダムの創造

ルネサンス

アダムの創造は、ミケランジェロ・ブオナローティによる1511年ごろの作品。

どんな絵か

システィーナ礼拝堂の天井、中ほどに置かれた280×570cmのフレスコ。左に横たわる裸のアダム、右に赤い布に包まれて天使たちと運ばれてくる神。二人の手が画面の中央で伸び合い、指先は触れていない。

どこを見るか

画面のちょうど真ん中が二本の指の隙間で、そこだけ何も描かれていない。左は空と岩ばかりの空白、右は人物の密集という重さの差が、視線を何度もその隙間へ押し戻す。アダムの体は左下がり、神の一群は右上がりで、二つの対角線構図が中央で交わる。

使われている技法

湿った漆喰に直接描くフレスコで、油彩のように後から塗り直せず、区画ごとに一日で仕上げる。人体は解剖の知識をもとに習作の素描を重ねてから壁へ写した。天井画と《最後の審判》の修復を報告した論文(コラルッチ、2016年)は、大理石彫刻の技法を絵に応用し、人物に立体感を出す独自の方法や、分割描法・点描を先取りする筆づかいがあったと述べる。

描かれた背景

教皇ユリウス2世の命で本来は彫刻家のミケランジェロが引き受けた。創世記の九場面の一つにあたる。ヴァチカン美術館によれば契約は1508年5月8日、完成は1512年10月31日まで。神が脳の形に描かれているという1990年の報告について、2026年の論文は意図的な仕掛けか、見る側が曖昧な形に構造を見出す傾向かを一方に決めず、意味は作品と見る人の間に生まれると論じる。

出典

  1. 論文・英語 Poprelka K, Stefanatou M, Gatzonis S(The Neuroscientist)(2026) Hidden Neuroanatomy in the Sistine Chapel: Did Michelangelo Encode a Brain, or Do We Construct It?
  2. 論文・英語 Ashford JW, Tatem SB(Neurocase)(2020) Michelangelo's Sistine Chapel Frescoes: communications about the brain
  3. 論文・英語 Gianluigi Colalucci(Conservation Science in Cultural Heritage)(2016) Michelangelo Buonarroti: Restoration of the Frescoes on the Vaulted Ceiling and the Last Judgment in the Sistine Chapel
  4. 公的機関・英語 Musei Vaticani(ヴァチカン美術館) Ceiling (Sistine Chapel)

解説動画: システィーナ天井画をどう引き受け、どう描いたか/ZERO ART / ゼロアート

どんな仕事の中の一場面か: ミケランジェロが教皇ユリウス2世から引き受けた仕事として紹介する。システィーナ礼拝堂は当代を代表する芸術家たちが内装の絵を担い、全体でカトリックの教義を描き出す計画が動いていた。天井には旧約聖書の創世記の場面が区画に分けて描かれ、中でもアダムの創造がもっとも有名な部分だとしている。当初の依頼は使徒を描くものだったが、華やかさに欠けるとして本人が変えたという。

どう描いたか: 天井画は壁画の伝統的な手法であるフレスコで描かれた。師匠ギルランダイオが得意とした技法だが、ミケランジェロ自身が描くのはこれが初めてだった。床から20m上の、14m×40.5mという広い天井に4年以上をかけ、首と目を痛めながら一人で描き上げたと説明している。

何が評価されたか: 壮大さに加えて、正確な人体表現や力強い描写が大絶賛され、盛期ルネサンスの代表作の一つになったとまとめる。締めのまとめでは、本人は自分を彫刻家と認識していたのに絵画でも建築でも美術史に名を残したことを挙げ、ダ・ヴィンチと肩を並べる万能人だと位置づけている。