アダムの創造
ルネサンス
ミケランジェロ・ブオナローティ/1511年ごろ
どんな絵か
システィーナ礼拝堂の天井、中ほどに置かれた280×570cmのフレスコ。左に横たわる裸のアダム、右に赤い布に包まれて天使たちと運ばれてくる神。二人の手が画面の中央で伸び合い、指先は触れていない。
どこを見るか
画面のちょうど真ん中が二本の指の隙間で、そこだけ何も描かれていない。左は空と岩ばかりの空白、右は人物の密集という重さの差が、視線を何度もその隙間へ押し戻す。アダムの体は左下がり、神の一群は右上がりで、二つの対角線構図が中央で交わる。
使われている技法
天井の湿った漆喰に直接描くフレスコで、足場の上から見上げての作業だった。油彩のように後から塗り直せないため、区画ごとに一日で仕上げていく。人体は解剖の知識をもとに習作の素描を重ねてから壁へ写した。天井全体で1508〜12年かかっている。
描かれた背景
教皇ユリウス2世の命で、本来は彫刻家だったミケランジェロが天井画を引き受けた。創世記の場面を九つ並べた中の一枚にあたる。神を包む赤い布の形が人間の脳の断面に似ているという指摘が1990年に出て以来よく語られるが、意図と断定できる根拠はない。
解説動画: システィーナ天井画をどう引き受け、どう描いたか/ZERO ART / ゼロアート
どんな仕事の中の一場面か: ミケランジェロが教皇ユリウス2世から引き受けた仕事として紹介する。システィーナ礼拝堂は当代を代表する芸術家たちが内装の絵を担い、全体でカトリックの教義を描き出す計画が動いていた。天井には旧約聖書の創世記の場面が区画に分けて描かれ、中でもアダムの創造がもっとも有名な部分だとしている。当初の依頼は使徒を描くものだったが、華やかさに欠けるとして本人が変えたという。
どう描いたか: 天井画は壁画の伝統的な手法であるフレスコで描かれた。師匠ギルランダイオが得意とした技法だが、ミケランジェロ自身が描くのはこれが初めてだった。床から20m上の、14m×40.5mという広い天井に4年以上をかけ、首と目を痛めながら一人で描き上げたと説明している。
何が評価されたか: 壮大さに加えて、正確な人体表現や力強い描写が大絶賛され、盛期ルネサンスの代表作の一つになったとまとめる。締めのまとめでは、本人は自分を彫刻家と認識していたのに絵画でも建築でも美術史に名を残したことを挙げ、ダ・ヴィンチと肩を並べる万能人だと位置づけている。