秋冬山水図

日本・東洋の絵

雪舟等楊/15世紀後半

どんな絵か

秋と冬の二幅が残る掛軸。各幅は縦47.7cmほど、横は30cm前後しかない紙本墨画で、掛軸としては小さい。それでも岩と崖が画面の中で押し合っていて、近づくほど圧が強い。色はなく、墨の濃さと線の太さだけで組み立てられている。

どこを見るか

冬景図の中央に、空を切り裂くように立ち上がる縦の線がある。崖の輪郭なのだが、地面から離れて見えるほど強く引かれていて、そこで画面が二つに割れる。この線がリーディングラインになって目を上へ運ぶ。輪郭は太く濃く、面は乾いた筆でこすってあり、コントラストが線と面のあいだで生まれている。

使われている技法

紙本墨画。輪郭を筆でくっきり引いてから、内側を皴(しゅん)と呼ばれる擦り筆で埋めていく。にじみでぼかすのではなく線で組み立てる描き方で、同じ墨を使いながら松林図屏風とは正反対の方向に振れている。

描かれた背景

雪舟が明へ渡って学んだ中国の山水画の型が、この画面の骨組みになっていると見られている。この二幅はもともと四季をそろえた四幅の一部で、春と夏は失われたと考えられている。制作年の記録はなく、15世紀末から16世紀初めとされる。東京国立博物館蔵の国宝で、日本の水墨画の代表例に挙げられる。

解説動画: 角ばった線だけで組み上げられた冬の山水図/地図の旅人

どんな絵として見ているか: 縦46cm余り、幅は30cmほどしかない小さな絵だと確かめたうえで、それでも画面が実物よりずっと大きく見えると述べている。花鳥風月の優美さがないのは曲線がほとんど見当たらないためで、荒々しく角張った線が画面全体を覆っていると説明する。右下は水辺、岸辺に葉を落とした枯木、手前に雪の積もった岩山と笠をかぶった人物、奥に断崖と山が交錯する、と画面を追っていく。

どこを見るか: 垂直に伸びる断崖の輪郭線がこの絵の要だとしている。番組は絵を断片にしたパズルを組ませる筋立てを使い、最後まで置き場所の分からなかった一本がこの線だったと見せる。巨大な断崖の岩の重みはこの一本で描き尽くされ、線の先には大自然の重みを一身に背負う小さな人物がいると読む。線を一本、隅を一つ抜くだけで世界が崩れる絵だという。

線どうしが響き合う組み立て: 細かく見ると右の岩山の線と左の岩山の線が相似形をなし、その輪郭は楼閣の背後の山の形とそっくりだと指摘する。岸辺の岩は楼閣の手前の岩と同じ形、枯木の枝先を延ばした先には断崖の輪郭線がある。あらゆる線が互いに関係を保ったまま風景を作っており、抽象絵画のモンドリアンと似ていると見る研究者もいると紹介している。

中国へ渡って何が変わったか: 1467年、48歳の雪舟は遣明船で中国へ渡り、北京まで足かけ三年を過ごしたと語る。晩年の破墨山水に残した文章には、絵の師を探したが学ぶべき先生はいなかったと書かれている。日本が手本にしていたのは一時代前の中国絵画で、本場では自分に近い荒い画風が流行っていたためだと解説する。ここで得たのは模倣をやめる自信で、その先にこの一枚があると位置づけている。