発酵食品図鑑

味噌(味噌・醤油)

味噌は、麹菌と酵母と乳酸菌が段階的に働く、失敗しにくいが待ち時間の長い発酵食品です。麹菌が大豆のたんぱく質とでんぷんを分解し、そのあと酵母と乳酸菌が風味を作るという二段構えの発酵です。家庭で仕込める発酵食品の中では、失敗しにくく待ち時間が長いタイプです。味噌は使う麹の穀物で米味噌・麦味噌・豆味噌に…

白味噌(味噌・醤油)

白味噌は、麹の割合が高く塩分が低いぶん、短い熟成で甘く白く仕上がる味噌です。京都の雑煮や西京焼きに使う、麹の割合が高くて塩分が低く、熟成期間が短い味噌です。甘いのは、麹が多いぶん糖が多く残るから。色が白いのは、熟成が短く温度も低いので褐変が進まないためです。平安時代から食べられ…

豆味噌(八丁味噌など)(味噌・醤油)

豆味噌(八丁味噌など)は、米や麦を使わず大豆だけの豆麹で仕込む、色が濃く熟成の長い味噌です。米麹や麦麹を使わず、大豆に麹菌を付けた「豆麹」だけで仕込む味噌です。東海地方の味噌で、八丁味噌は大豆・天然塩・精製水・麹だけを原料にし、気密の木樽で2年以上の貯蔵が必須だと白石(2023)は書いています。…

麦味噌(味噌・醤油)

麦味噌は、大麦や裸麦の麦麹を使い、香ばしく甘口で熟成が早い味噌です。米麹の代わりに大麦や裸麦で作った麦麹を使う味噌です。九州・四国・中国地方が主な産地で、麦のでんぷんが麹の酵素で糖になり、麹の割合が高いぶん甘口になります。愛媛では米の裏作の麦を味噌にし、農家で作られたものが多く、田舎味噌とも呼ばれました(農林水産省)。…

醤油(味噌・醤油)

醤油は、醤油麹を塩水に仕込んでもろみにし、熟成させてから搾った液体調味料です。大豆と小麦から作った「醤油麹」を塩水に仕込み、もろみとして熟成させて搾った液体です。味噌が固形のまま食べるのに対し、醤油は搾るのが決定的な違い。麹菌の酵素で分解が進んだあと、耐塩性の乳酸菌と酵母が香りを作ります。…

魚醤(しょっつる・いしる・ナンプラー)(味噌・醤油)

魚醤(しょっつる・いしる・ナンプラー)は、魚に大量の塩をして自身の酵素と細菌でアミノ酸まで分解させた調味料です。魚に大量の塩をして、魚自身の酵素と細菌でたんぱく質をアミノ酸まで分解させた調味料です。秋田のしょっつる(ハタハタ)、能登のいしる(イカ・イワシ)、タイのナンプラー。麹を使わないのが味噌・醤油との違いです。…

もろみ(醤油の実)(味噌・醤油)

もろみ(醤油の実)は、醤油を搾る前の麹と塩水が混ざった状態を、搾らずにそのまま食べる調味料です。醤油を搾る前の、麹と塩水が混ざった状態そのものを、搾らずに食べる調味料です。地方によっては「醤油の実」と呼ばれ、山形県庄内地方では江戸時代から食べられてきた郷土料理です(農林水産省「うちの郷土料理」による)。…

糠床(漬物・糠床)

糠床は、米糠に塩と水を加えて乳酸菌と酵母を育てた発酵床で、野菜を漬けると酸と香りが移ります。米糠に塩と水を加え、乳酸菌と酵母を育てた発酵床です。野菜を漬けると、乳酸菌が作る酸と、酵母が作る香りが移ります。野菜から出た栄養と水分で菌が育つ一方、塩分は薄まるので、糠や塩を足しながら育てます。九州大学などの実験では…

キムチ(漬物・糠床)

キムチは、塩漬けにした白菜にヤンニョムを合わせて乳酸発酵させた漬物です。塩漬けにした白菜に薬味を合わせ、乳酸発酵させたものです。オレゴン州立大学の普及機関(OSU Extension)は、室温なら1〜2日、冷蔵ならもっとゆっくり発酵するとし、冷蔵して1週間以内に食べるのが最良としています。…

ザワークラウト(乳酸キャベツ)(漬物・糠床)

ザワークラウト(乳酸キャベツ)は、キャベツに塩だけをして自身の乳酸菌で発酵させた、酢を使わない漬物です。キャベツに塩をして、キャベツ自身に付いている乳酸菌に発酵させたものです。酢は使いません。発酵が進むにつれて酸味が出て、色が透き通っていきます。ヨーロッパの保存食で、発酵の入門としていちばん失敗が少ない部類です。…

たくあん(漬物・糠床)

たくあんは、大根を天日で干して水分を抜いてから、米糠と塩で漬けた漬物です。大根を天日で干して水分を抜いてから、米糠と塩で漬けたものです。名前は、江戸初期に山形へ流された沢庵禅師が届いた大根を漬けて保存したのが始まりと、農林水産省が紹介しています。甘みが増すのは水分が抜けて凝縮するだけでなく…

浅漬け(漬物・糠床)

浅漬けは、塩の浸透圧で水を抜いて味を入れるだけの、ほとんど発酵していない漬物です。実は、ほとんど発酵していない漬物です。塩の浸透圧で水を抜き、味を入れているだけで、乳酸発酵が進む前に食べます。だから酸味がなく、野菜の風味がそのまま残る。塩分は2〜5%程度と低く、厚生労働省の衛生規範も浅漬は保存性のある漬物とは別枠で…

梅干し(漬物・糠床)

梅干しは、完熟梅に塩をして梅酢を上げ、天日で干した、塩とクエン酸と乾燥で保存する食品です。完熟梅に塩をして梅酢を上げ、土用のころに天日で干したものです。乳酸発酵が主役ではなく、塩とクエン酸と乾燥で保存する食品。だから塩分濃度が保存性を直接決めます。農林水産省も、塩分20%を守ることが失敗しないコツで…

らっきょう漬け(漬物・糠床)

らっきょう漬けは、塩で下漬けして乳酸発酵させたあと、塩を抜いて甘酢に漬け替える漬物です。らっきょうを塩で下漬けして乳酸発酵させ、そのあと塩を抜いて甘酢に漬け替えるのが鳥取県などに伝わる本漬けの作り方です。塩漬けを省いて甘酢に直接漬ける簡単漬けもありますが、こちらは乳酸発酵をほとんど経ません。…

水キムチ(漬物・糠床)

水キムチは、唐辛子を使わず塩水と米のとぎ汁で野菜を乳酸発酵させた、汁まで飲めるキムチです。唐辛子とアミの塩辛を使わず、塩水に野菜と米のとぎ汁を入れて乳酸発酵させたものです。韓国語では「ムルキムチ」と呼ばれ、大根だけで仕込む冬の水キムチは「トンチミ」と呼ばれます。できあがった汁が酸味と甘みを持つ飲みものになるのが特徴で…

ヨーグルト(乳製品)

ヨーグルトは、乳酸菌が乳糖を分解して作る乳酸で、牛乳のたんぱく質(カゼイン)が固まったものです。牛乳の乳糖を乳酸菌が分解して乳酸を作り、その酸で乳たんぱく(カゼイン)が固まったものです。固まる仕組みは、レモン汁で牛乳が分離するのと同じ原理です。

ケフィア(乳製品)

ケフィアは、乳酸菌と酵母を一緒に含む種で発酵させる、ヨーグルトよりわずかに発泡する乳製品です。乳酸菌だけでなく酵母も一緒に入った種で発酵させる乳製品です。ヨーグルトより酸味がやわらかく、わずかに発泡し、独特の香りがあります。起源はコーカサス地方のエルブルス山周辺とされ…

フレッシュチーズ(カッテージ・リコッタ)(乳製品)

フレッシュチーズ(カッテージ・リコッタ)は、牛乳を酸か酵素で固めて水分を切っただけの、熟成させないチーズです。牛乳を酸か酵素で固めて、水分を切っただけのチーズです。熟成させないので、カビも独特の香りもありません。厳密には発酵をほとんど伴わないものもあり、レモン汁や酢で固める作り方は化学的な凝固だけです。…

白カビチーズ(カマンベール型)(乳製品)

白カビチーズ(カマンベール型)は、表面に白カビを生やし、外側から内側へ熟成が進むチーズです。表面に白カビ(Penicillium camemberti)を生やして、外側から内側へ熟成させるチーズです。あの白い皮そのものが菌の集まり。熟成が進むほど中心がとろけ、香りが強くなります。いまの真っ白な菌は…

青カビチーズ(乳製品)

青カビチーズは、針で穴を空けて空気を通し、内部で青カビを育てて青い筋を作るチーズです。Penicillium roqueforti を内部で育てるチーズです。白カビが表面から進むのに対し、青カビは酸素が要るので、チーズに針で穴を空けて空気を通し、その道筋に沿って青い筋ができます。塩分が高く、刺激的な風味になります。…

発酵バター・サワークリーム(乳製品)

発酵バター・サワークリームは、生クリームを先に乳酸菌で発酵させてから、そのまま使うかさらに撹拌して作ります。生クリームを乳酸菌で発酵させてから使うものです。サワークリームはそのまま、発酵バターはさらに撹拌して脂肪を固めます。普通のバターとの違いは、乳酸菌が作った香り成分(ジアセチルなど)で、コクと酸味が加わります。…

納豆(納豆・大豆)

納豆は、蒸した大豆に納豆菌を付けて発酵させたもので、菌が強いぶん家庭でも作りやすい食品です。蒸した大豆に納豆菌(Bacillus subtilis subsp. natto)を付けて発酵させたものです。納豆の粘りはこの菌が作るγ-ポリグルタミン酸によるもので、製造現場では粘りの弱い変異株がよく現れて課題になっている…

テンペ(納豆・大豆)

テンペは、クモノスカビ(Rhizopus)の菌糸が大豆を板状に固める、糸を引かないインドネシアの大豆発酵食品です。インドネシアの大豆発酵食品で、クモノスカビ(Rhizopus)の菌糸が大豆を板状に固めたものです。納豆のような糸は引かず、ナッツやきのこのような香りがします(The Kampung Vegan)。…

豆腐よう(納豆・大豆)

豆腐ようは、島豆腐を紅麹と泡盛に漬け込み、数ヶ月かけて発酵・熟成させた沖縄の珍味です。島豆腐を紅麹と泡盛に漬け込んで熟成させた、沖縄の伝統の珍味です。琉球王朝期の18世紀ごろ、中国の紅腐乳を琉球王府のお料理座が改良して作られたとされます(安田 2013)。紅麹菌の酵素が大豆のたんぱく質を分解しますが…

浜納豆・寺納豆(納豆・大豆)

浜納豆・寺納豆は、名前とは違って納豆菌を使わず、大豆を麹菌で豆麹にして塩水で熟成させ干した食品です。名前は納豆ですが、納豆菌は使いません。蒸した大豆に麹菌を付けて豆麹にし、塩水で熟成させ、天日で干したものです。関わるのは麹菌のほか Streptococcus・Pediococcus という細菌だと…

塩麹(麹の調味料)

塩麹は、米麹・塩・水を混ぜて常温に置くだけで作れる、甘みとうま味が同時に出る調味料です。米麹・塩・水を混ぜて常温に置くだけで作れる調味料です。麹の酵素がでんぷんを糖に、たんぱく質をアミノ酸に変えるので、甘みとうま味が同時に生まれます。東京農業大学と有限会社糀屋本店の研究チームが市販の塩麹14点を調べた論文では…

甘酒(麹甘酒)(麹の調味料)

甘酒(麹甘酒)は、米のでんぷんを麹菌の酵素がブドウ糖に分解したもので、砂糖もアルコールも含みません。米のでんぷんを麹菌の酵素(α-アミラーゼとグルコアミラーゼ)がブドウ糖に分解したもので、砂糖を足さなくても甘くなります。米麹と水、または米麹とごはんと水で作る非アルコール飲料と、新潟の醸造会社の研究者は総説で整理します。…

醤油麹(麹の調味料)

醤油麹は、米麹を塩水ではなく醤油に漬けて作る、醤油の香りとうま味が乗る調味料です。米麹を塩水ではなく醤油に漬けて作る調味料です。発酵食大学(YouTube)は、塩水より醤油のほうが発酵で得られるうま味とコクが多く、ふつうの醤油より甘みが強く出ると説明します。塩麹より作り方は簡単かもしれない、とも話します。…

玉ねぎ麹(麹の調味料)

玉ねぎ麹は、すりおろした玉ねぎと米麹と塩を発酵させた、コンソメのような風味になる調味料です。すりおろした玉ねぎと米麹と塩を合わせて発酵させた調味料です。玉ねぎの糖とうま味に、麹のアミノ酸が重なって、コンソメのような風味になります。管理栄養士の関口絢子(ウェルネスキッチン)は、塩麹と同じくたんぱく質分解酵素を含むので…

三五八漬けの床(麹の調味料)

三五八漬けの床は、塩3・米麹5・蒸した米8の割合で作る、糠床より手のかからない東北の漬け床です。塩3・米麹5・蒸した米8の割合で作る、東北の漬け床です。名前がそのまま配合になっています。福島県中通り地方に伝わる郷土料理で、農林水産省の「うちの郷土料理」は江戸時代からある麹食品とし…

発酵あんこ(麹の調味料)

発酵あんこは、茹でた小豆に米麹を混ぜて保温し、麹の酵素ででんぷんを糖に変えて甘くしたあんこです。茹でた小豆に米麹を混ぜて保温し、麹の酵素ででんぷんを糖に変えたあんこです。砂糖を一切入れずに甘くなるのが特徴で、甘酒と同じ原理。「砂糖不使用」ではありますが…

サワードウ(自家製パン種)(パン・生地)

サワードウ(自家製パン種)は、粉と水を混ぜて置くだけで、野生の酵母と乳酸菌が増えて育つ発酵種です。粉と水を混ぜて置くだけで育つのは、酵母と乳酸菌に酢酸菌も加わった小さな生態系です。菌の多くは空気中ではなく粉そのものに付いていると、培養法と非培養法の両方で調べた総説(De Vuystら, 2009)は説明しています。…

レーズン酵母(果実の酵母おこし)(パン・生地)

レーズン酵母(果実の酵母おこし)は、レーズンなどに付いた野生の酵母を糖水で増やして作る、パン種のもとです。レーズンの表面に付いている野生の酵母を、レーズンと水の中で増やして、パン種の元にするものです。2025年の研究(Hio ら、Scientific Reports)は、レーズンに付いた酵母が…

ライ麦の種おこし(パン・生地)

ライ麦の種おこしは、ライ麦全粒粉と水だけで菌を育てる、小麦粉より立ち上がりが早いパン種の作り方です。ライ麦の全粒粉と水だけで、粉に付いている乳酸菌と酵母を育てて種を作る方法です。パン系チャンネル「完全感覚ベイカー」は、ライ麦全粒粉が最も酵母菌が付きやすい粉なので種を起こしやすいと説明します。…

サワードウブレッド(パン・生地)

サワードウブレッドは、イーストを使わず自家製のパン種だけでふくらませる、酸味と香りの強いパンです。自家製のパン種だけでふくらませるパンです。パン種の中では乳酸菌と酵母がいっしょに働いていて、乳酸菌が作る酸味と、複雑な香りが出ます。イーストのパンより発酵に時間がかかりますが、生地が酸性になるぶん日持ちもよくなります。…

イドゥリ・ドーサの生地(パン・生地)

イドゥリ・ドーサの生地は、米とウラド豆をひいて、麹もイーストも加えずに自然発酵させたものです。南インドの、米とウラド豆をひいて発酵させた生地です。蒸せばイドゥリ(ふわふわの蒸しパン)、薄く焼けばドーサ(クレープ状)。イーストも麹も加えず、豆と米に付いている菌だけで自然に発酵します。1965年の研究では…

酢(酢)

酢は、酢酸菌がアルコールを酸化して酢酸に変えたもので、必ず酒造りのあとに続く発酵です。酢酸菌がアルコールを酸化して酢酸に変えたものです。米→日本酒→米酢、りんご→シードル→りんご酢という二段階を経るので、酢造りは必ず酒造りの後ろに来ます。海外の総説論文は…

りんご酢(酢)

りんご酢は、りんごの果汁をアルコール発酵させてから、そのアルコールを酢酸菌が酢に変えたものです。りんごの糖を酵母がアルコールに変え、次に酢酸菌がそのアルコールを酢酸に変える、二段階の発酵です。つまり途中に必ず「酒」の段階があります。英語圏の家庭向け動画(Clean Food Living)は…

コンブチャ(紅茶キノコ)(酢)

コンブチャ(紅茶キノコ)は、砂糖を入れた紅茶に酵母と酢酸菌の共生体(SCOBY)を入れて発酵させた飲みものです。日本語の「昆布茶」とは無関係です。砂糖入りの紅茶に酵母と酢酸菌の共生体(SCOBY)を入れて発酵させた飲みもので、酵母が砂糖をアルコールに変え、酢酸菌がそれを酸に変えます(Wangら、2022)。…

ビネガーマザー(酢酸菌の膜)(酢)

ビネガーマザー(酢酸菌の膜)は、酢酸菌が作るセルロースの膜で、カビではなく次の仕込みの種にもなります。酢酸菌が作るセルロースの繊維でできた、半透明でぷるぷるした膜や塊です。論文では「mother of vinegar」と呼ばれ、酢酸菌の大きな集まり(バイオフィルム)とされます。…