魚醤(しょっつる・いしる・ナンプラー)
味噌・醤油
魚が、自分の酵素で溶ける
どんな発酵?
魚に大量の塩をして、魚自身の酵素と細菌でたんぱく質をアミノ酸まで分解させた調味料です。秋田のしょっつる(ハタハタ)、能登のいしる(イカ・イワシ)、タイのナンプラー。麹を使わないのが味噌・醤油との違いです。
材料
魚(内臓ごと)と塩だけ。塩分は魚の重量に対して20〜30%と非常に高い—— これが腐敗を止める唯一の仕掛けなので、減らせません。
仕込み方
魚と塩を層に重ねて容器に詰め、重石をして液が上がるのを待ちます。1年以上かけて分解が進み、澄んだ液になったら濾します。家庭で作るのは難易度が高く、匂いも強いので、まず市販品で味を知ってから判断してください。
見極めと失敗
魚を扱うのでヒスタミンのリスクがあります(→ヒスタミン(加熱しても消えない))。仕込む魚は必ず新鮮なものを、常温に置かずに。塩を減らす、途中で水を足すといった変更は絶対にしないでください—— 守りが塩しかない仕込みです。
解説動画: 魚醤をお家で簡単に手作りする方法 魚醤料理も紹介!/オトコ中村
魚と塩だけで作る: 動画は魚醤を魚から作った醤(ひしお)だと説明し、魚を塩漬けにして置いておくだけだと言います。醤油なら大豆を水に浸けて蒸し、麹菌を生やして温度を見張る手間がかかるのに対し、こちらは工程がずっと少ない。割合は魚と塩が4対1で、魚が400gなら塩は100g。買ってきた魚の量に合わせて塩を決めます。
丸ごと1匹を使う: 魚は切り身でも腸を抜いたものでもなく、丸ごと1匹を買うようにと言います。理由は内臓の酵素がたんぱく質を分解していくからで、酵素は筋肉にもあるけれどそれだけでは足りない。逆に内臓ばかり集めると味が緩くなるそうです。京都では安いいわしをいつも使うとのこと。大きすぎる魚は向かず、完全に腐った魚は使わない、なるべく新鮮なものを、とも述べています。
1年以上、置いておく: 瓶に魚と塩を詰めたら蓋をして、1年以上そのまま放置するだけ。置き場所の温度は常温でよく、冷蔵庫には入れない、直射日光は避ける。夏は家のいちばん暑いところで構わないとまで言います。仕込んだ日付と分量はメモに残す——1年も経つと忘れてしまうからです。実際に手を動かすのは全部で30分ほど。
3年ものを開ける: 3年置いた瓶を開けるところが出てきます。魚は完全に溶けて原型を留めず、表面には膜が張り、突くと中から水分が出てきました。においは腐敗のにおい(酸味との違い)ではなく、いわしが熟成したにおいだと言います。ドロドロになった中身を鍋にあけ、水を足して火にかけると、骨以外はすっかり溶けてしまいます。
煮て、濾して仕上げる: 沸騰したら火を止め、ざるにキッチンペーパーを敷いて落ちなくなるまで濾します。下に茶色く澄んだ液体が溜まり、これが魚醤です。舐めてみると魚の臭みはまるでなく、旨味の濃い塩辛い汁。チャーハンは大さじ1で味付けが済み、豚肉と大根の煮物も出汁を取らずに決まる。1年以上かかるけれど簡単だ、と結びます。