ビネガーマザー(酢酸菌の膜)
酢
ビネガーマザー(酢酸菌の膜)は、酢酸菌が作るセルロースの膜で、カビではなく次の仕込みの種にもなります。
どんな発酵?
酢酸菌が作るセルロースの繊維でできた、半透明でぷるぷるした膜や塊です。論文では「mother of vinegar」と呼ばれ、酢酸菌の大きな集まり(バイオフィルム)とされます。自家製りんご酢の膜を電子顕微鏡で見た研究では、汚染されていない膜は、極細のリボン状の繊維が立体の網目を作っていました。カビや異物ではありません。開封した市販の酢にできることもあります。
材料
膜を作る酢酸菌は、酸素を使う偏性好気性の菌です。エタノールや糖を不完全に酸化して、酢酸のほかバクテリアセルロースを作ります。市販の有機酢(梨酢・りんごとぶどうの酢)から、セルロースを作る新種の酢酸菌が2種見つかった研究もあります。きのこと酵母で作ったアルコール液にマザーとコンブチャを加えた実験では、酢酸が2.05〜2.41%になり、エタノールは残りませんでした。
仕込み方
密閉せず、布で覆って空気を通します。米国ペンシルベニア州立大学のエクステンションの手引きも、ふたの代わりにチーズクロスで覆うよう書きます。Akane in balsamicland(ワインビネガーを自宅で作る動画)は、布が汚れたら替え、流しの下など空気の少ない所は避けるよう話します。原料の酒は買ったものを使い、家でアルコール発酵はしないでください(→自分で飲むぶんなら、家で酒を作ってもいい)。
見極めと失敗
酢酸菌とセルロースは無害と、ミツカンは開けた市販酢の白い浮遊物について案内しますが、風味が落ちるため使用を勧めていません(メーカーの見解)。毛羽立った青・緑・黒の色付きはカビなので廃棄。酵母(Pichia)が入ると膜の構造が変わり、自家製酢の質を落としうると2024年の研究は述べます。できあがったら濾して膜を除くと、それ以上の発酵や変質を防げると、ペンシルベニア州立大学の手引きは書きます。
出典
- 論文・英語 Bimmer M, Mientus M, Klingl A, Ehrenreich A, Liebl W(2022) The Roles of the Various Cellulose Biosynthesis Operons in Komagataeibacter hansenii ATCC 23769
- 論文・英語 Işlek Köklü Z, Akkuş Süt P, Eskihoran Üçüncüoğlu E, Kalayci S, Şahin F(2024) Detection and characterization of the Pichia manshurica biofilm on the traditionally produced homemade apple vinegar
- 論文・英語 Głodo W, Śliżewska K(2026) Acetic Acid Bacteria: Metabolic Potential, Technological Applications and Emerging Probiotic Functions
- 論文・英語 Karničnik B, Accetto T, Fanedl L, Jugović I, Trček J(2025) Isolation and Characterization of Komagataeibacter piraceti sp. nov. and Novacetimonas labruscae sp. nov.: Two Novel Microaerobic Cellulose-Producing Acetic Acid Bacteria from Vinegars
- 論文・英語 Mat Isham NK, Mokhtar N, Fazry S, Lim SJ(2019) The development of an alternative fermentation model system for vinegar production
- 公的機関・英語 Penn State Extension(Luke LaBorde、元はオハイオ州立大学エクステンションの資料) Making Cider Vinegar at Home
- 資料 ミツカングループ お客様相談センター(食品メーカーのFAQ) お酢の中に白いもやもやした浮遊物(ゼリー状、くらげ、膜のようなもの)ができましたがどうしてですか?
- 動画 Akane in balsamicland お酢作りとマザーの話 自宅でワインビネガーを作ろう バルサミコ酢を科学する第三弾