攻略 | オトモマッスル

大きな筋肉の位置と、それぞれが働く動き。

筋肉の名前を先に暗記しても、トレーニングではすぐに使えません。先に覚えるのは、ひとつひとつの筋肉が働く動きのほうです。一般に筋肉と呼ばれるものは骨格筋で、骨や関節を動かし、重力に逆らって姿勢を保つ役目を持ちます(長寿科学振興財団「健康長寿ネット」)。ある動きの中心になる筋肉を主動筋、反対の動きをする筋肉を拮抗筋と呼び、膝を伸ばす動きなら大腿四頭筋が主動筋、膝を曲げるハムストリングスが拮抗筋にあたります。ひじを曲げるときに一方の筋肉が縮み、もう一方が伸びるという対の関係は、筋肉のしくみ全体にわたります(教育動画チャンネルTED-Ed)。

大腿四頭筋
大腿四頭筋写真: The original uploader was יוסי הראשון at Hebrew Wikipedia. / CC BY-SA 3.0
ハムストリングス
ハムストリングス写真: BodyParts3D/Anatomography / CC BY-SA 2.1 jp

体の前面は、押す動きを担います。胸の中央に広がる大胸筋が腕を前へ押し出し、肩の前側の三角筋前部と腕の裏側の上腕三頭筋がその動きに加わります。ベンチプレスや腕立て伏せで一度に働くのが、この3つです。胸の深い層には小胸筋、肋骨の側面には前鋸筋があり、どちらも肩甲骨を動かして押す動きの土台を作ります。

大胸筋
大胸筋写真: 不明 / CC BY-SA 3.0
三角筋前部
三角筋前部写真: Original: sv:Användare:Chrizz / CC BY-SA 3.0
上腕三頭筋
上腕三頭筋写真: 不明 / CC BY-SA 3.0
小胸筋
小胸筋写真: Original: ‍Användare:Chrizz Vector: Pixelsquid🎱 / CC BY-SA 3.0
前鋸筋
前鋸筋写真: Bildbearbetning: sv:Användare:Chrizz. * compressed with pngcrush / CC BY-SA 3.0

背面は、引く動きを担います。背中でもっとも面積の広い広背筋が腕を体の後ろへ引き、首から背中へ広がる僧帽筋と肩甲骨の間の菱形筋が肩甲骨を寄せます。肩の後ろの三角筋後部、脇の下の大円筋、ひじを曲げる上腕二頭筋も引く側に回ります。肩関節そのものを支えているのは、肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋の4つからなる回旋筋腱板(ローテーターカフ)で、深い位置にあるため外からは見えません(長寿科学振興財団「健康長寿ネット」)。

広背筋
広背筋写真: Nikai / CC BY-SA 3.0
僧帽筋
僧帽筋写真: 不明 / CC BY-SA 3.0
菱形筋
菱形筋写真: Anatomography / CC BY-SA 2.1 jp
三角筋後部
三角筋後部写真: Original: sv:Användare:Chrizz / CC BY-SA 3.0
大円筋
大円筋写真: Anatomography / CC BY-SA 2.1 jp
上腕二頭筋
上腕二頭筋写真: Pearson Scott Foresman / Public domain
回旋筋腱板(ローテーターカフ)
回旋筋腱板(ローテーターカフ)写真: Young Lae, Moon M.D. Chair of 3D Based Medical Application Working group. Chairman and Professor of Orthopaedics, Chosun / CC BY 3.0

体幹は、姿勢を保ち、手足で出した力の通り道になります。腹の前面を縦に走る腹直筋が体を丸め、脇腹の腹斜筋(外腹斜筋・内腹斜筋)がひねりを作ります。腹筋の最も深い層にある腹横筋は腹部を引き締めて腹圧を高め、腰背部の最深部にある多裂筋は椎骨どうしをつないで脊柱を安定させます(長寿科学振興財団「健康長寿ネット」)。背骨に沿って伸びる脊柱起立筋、股関節の前を通る腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)も、上体を起こしたまま保つ働きを持ちます。姿勢を保つ側に回る筋肉は抗重力筋と呼ばれ、体幹の腹筋と背筋のほか、下肢の殿筋・大腿四頭筋・下腿三頭筋が挙げられます(長寿科学振興財団「健康長寿ネット」)。筋線維の長さを変えずに体を固める収縮が、立った姿勢を保つ力を生みます(TED-Ed)。

腹直筋
腹直筋写真: 不明 / CC BY-SA 3.0
腹斜筋(外腹斜筋・内腹斜筋)
腹斜筋(外腹斜筋・内腹斜筋)写真: Henry Vandyke Carter / Public domain
腹横筋
腹横筋写真: modified by Uwe Gille / Public domain
多裂筋
多裂筋写真: Uwe Gille / Public domain
脊柱起立筋
脊柱起立筋写真: Henry Vandyke Carter / Public domain
腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)
腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)写真: Beth Ohara (original) last updated by: https://commons.wikimedia.org/wiki/User:Mikael_Häggström / CC BY-SA 4.0

下半身は、大きな筋肉が集まる場所です。尻の大殿筋が股関節を伸ばし、太もも前面の大腿四頭筋が膝を伸ばし、裏側のハムストリングスが膝を曲げます。大殿筋は体でもっとも大きい筋肉です(教育動画チャンネルNeural Academy)。内ももの内転筋群が脚を閉じ、尻の横の中殿筋が骨盤の横揺れを止め、ふくらはぎの下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)とすねの前脛骨筋が足首を動かします。健康な若年者24人の下肢35筋をMRIで測った研究では、下肢全体の筋体積が身長と体重の積と強く相関し、体格から個々の筋の体積を見積もれるとされています(Handsfieldら、2014)。全身のMRIで18〜88歳の男女468人を測った研究では、骨格筋が体重に占める割合は男性38.4%・女性30.6%で、50代後半以降に目立つ筋量の減少は主に下半身で起きていました(Janssenら、2000)。

大殿筋
大殿筋写真: Dr. Johannes Sobotta / Public domain
内転筋群
内転筋群写真: Beth ohara / CC BY-SA 3.0
中殿筋
中殿筋写真: Anatomography / CC BY-SA 2.1 jp
前脛骨筋
前脛骨筋写真: Polygon data were generated by Database Center for Life Science (DBCLS) / CC BY-SA 2.1 jp

名前そのものにも規則があります。筋肉の名前の多くは、付着する骨・筋線維の走る向き・大きさ・付着部の数・動作のどれかから付いています(解剖学を解説するYouTubeチャンネルRyosuke Ito)。胸の大小は大胸筋と小胸筋、尻の大中は大殿筋と中殿筋、腹の向きは腹直筋と腹横筋、付着部の数は上腕二頭筋・上腕三頭筋・大腿四頭筋、動作は内転筋群という具合です。規則を知っていれば、初めて見る名前からでも位置と働きを推し量れます。

やりがちな失敗は、鏡に映る前面ばかりを鍛えることと、深い位置の筋肉を飛ばすことです。胸と腕は目で変化を追える一方、背中側の筋肉は自分では見えないため、同じだけ鍛えたつもりでも差が開きます。主動筋と拮抗筋はどちらが弱っても動きのつり合いが崩れるため、両方をそろえて鍛えることが勧められています(長寿科学振興財団「健康長寿ネット」)。押す・引く・しゃがむ・ひねるの4つの動きを一巡する形でメニューを組めば、名前を覚えきらないうちから大きな筋肉を取りこぼさずに済みます。

出典

  1. 資料 長寿科学振興財団(健康長寿ネット) 筋肉の種類とその特徴
  2. 資料 長寿科学振興財団(健康長寿ネット) インナーマッスルとは
  3. 論文・英語 Janssen I, Heymsfield SB, Wang ZM, Ross R(2000) Skeletal muscle mass and distribution in 468 men and women aged 18-88 yr
  4. 論文・英語 Handsfield GG, Meyer CH, Hart JM, Abel MF, Blemker SS(2014) Relationships of 35 lower limb muscles to height and body mass quantified using MRI
  5. 動画・英語 TED-Ed How your muscular system works - Emma Bryce
  6. 動画・英語 Neural Academy THE MUSCLES SONG (Learn in 3 Minutes!)
  7. 動画 Ryosuke Ito 解剖学の超基本:筋肉の名前の覚え方