腹横筋
体幹
腹横筋は、お腹を締める天然のコルセット
位置
腹筋のなかでいちばん深い層にあり、肋骨の下から骨盤までを横向きの繊維が腹巻きのように取り巻いています。外からは見えませんが、お腹をへこませて咳をすると、わき腹の奥がキュッと締まる感覚がこの筋肉の働きです。米国の解剖学教科書OpenStaxは、外腹斜筋・内腹斜筋よりさらに奥にあるこの層の繊維の向きを、ズボンのベルトの前面のように体を横切る形と説明しています。
はたらき
手足を動かす直前にいち早く収縮してお腹の内圧を高め、背骨を内側から支えます。腹圧が保てると腰まわりの負担が減り、重い物を持つときの安定感が上がります。オーストラリアの研究チームが、腕を素早く上げる動作で左右の腹横筋の筋電図を比べたところ、先取りする収縮は上げる腕の向きによって変わり、左右対称ではありませんでした。「腹横筋は左右対称に働く」という説明の見直しを促します。
鍛え方
プランクでお腹をへこませたまま呼吸を続けるのが基本で、30〜45秒を3セット。仰向けで腰を床につけたまま手脚を伸ばすデッドバグも有効です。息を止めて固めるだけにならないよう注意します。ギリシャの研究チームが超音波で測ると、5種目のピラティス系トレーニングのなかでデッドバグが腹横筋をいちばん厚くしました。同チームの別の研究では、お腹を固めるより引き込むほうが腹横筋がよく厚くなるとしています。
ストレッチ
強く伸ばす筋肉ではなく、呼吸で整えます。仰向けで5秒吸って8秒かけて細く吐き切ると、吐き終わりに自然と働きます。使えていないと反り腰やお腹の出っ張りが目立ちやすく、腰の張りの背景にもなります。カナダの脊椎ケア団体CCGIの動画は、骨盤の出っ張り(上前腸骨棘)から指2本分内側・下にずらした場所に指を当てておへそを背骨へ引き込むと、腹横筋の収縮を10秒キープしたまま指先で確かめられると紹介しています。
出典
- 資料・英語 OpenStax 11.4 Axial Muscles of the Abdominal Wall, and Thorax - Anatomy and Physiology 2e
- 論文・英語 Allison GT, Morris SL, Lay B(2008) Feedforward responses of transversus abdominis are directionally specific and act asymmetrically: implications for core stability theories
- 論文・英語 Tsartsapakis I, Gerou M, Zafeiroudi A, Kellis E(2023) Transversus Abdominis Ultrasound Thickness during Popular Trunk-Pilates Exercises in Young and Middle-Aged Women
- 論文・英語 Tsartsapakis I, Bagioka I, Fountoukidou F, Kellis E(2024) A Comparison between Core Stability Exercises and Muscle Thickness Using Two Different Activation Maneuvers
- 動画・英語 Canadian Chiropractic Guideline Initiative (CCGI) Transverse abdominis activation
解説動画: 腹横筋を鍛えるドローインのやり方/CALISLIFE自重トレ
ドローインと腹横筋: ドローインはインナーユニットと呼ばれる腹横筋・多裂筋・骨盤底筋・横隔膜のうち、腹横筋を鍛えるトレーニング。腹横筋は腹筋群の最下層に位置し、内臓全体を包み込むような形でついているインナーマッスルで、重い内臓を正しい位置に保ったり、腹圧を高めて背骨を安定させたりする役割を持つ。鍛えることで内臓下垂によるぽっこりお腹や腰痛、猫背の改善に効果的だとしている。
仰向けでのやり方: 仰向けで足を腰幅に開き膝を立てる。足の位置が遠いと腰が反りやすくなるので、かかとは近めがおすすめ。まず肛門に力を入れて骨盤底筋を収縮させ、次に鼻からお腹に空気を入れるように吸い込む。しっかり膨らんだら口から息を吐きながらお腹をへこませ、限界まで凹ませたところで4秒キープ。また鼻から吸って膨らませ、これを10回繰り返す。
効いているサイン: お腹をへこませるときはへその下あたりを意識しながら全体的に圧力をかけていくとやりやすい。うまく腹横筋が働いていれば、お腹が凹むと同時に腰と床の隙間が埋まり、骨盤が後傾していくような形になる。
立って行う場合と日常の姿勢: 立位でも呼吸の手順は同じで、目線を前に向け背筋をまっすぐ伸ばした状態で10回行う。効果はどちらも同じなので好きな方でよいが、最初のうちは仰向けの方がやりやすい。腹横筋は普通に生活していれば自然と鍛えられるが、背中が丸まった姿勢で過ごしていると常に緩んだ状態になって衰えやすい。まずは正しい姿勢を心がけて日常生活を送ることが一番大事としている。