多裂筋
体幹
多裂筋は、背骨を一節ずつ支える細い筋
位置
背骨の後ろ側で、脊柱起立筋よりさらに深い層にあります。椎骨を数個ずつ斜めにつなぐ短い束が下から上まで積み重なった構造で、とくに腰の部分が太く、背骨のきわを押すと硬い盛り上がりとして触れます。E3 Rehab(理学療法士のチャンネル)は、仙骨・骨盤から頚椎まで続き腰で最も目立つ筋で、各椎骨の棘突起に付くと説明しています。
はたらき
背骨をひとつずつ安定させる筋肉で、深層の腹横筋とともに腰を支えます。前かがみやひねりのときに椎骨どうしがずれないよう固定します。初回で片側の急性腰痛39人を無作為に分けたHidesら(1996)では、通常の治療だけの群は痛みが引いても10週後まで超音波で測った多裂筋の断面積が小さいままで、局所の運動を加えた群が早く十分に回復しました。
鍛え方
バックエクステンションで背中側を起こす動きを、四つ這いで対角の手と脚を伸ばすバードドッグで支える力を鍛えます。10〜15回を2〜3セット。反らしすぎず、背骨を長く保った位置で止めます。Lawrenceら(2026)が健康な成人34人の深部の多裂筋に電極を入れて測ると、活動はリバースハイパーがバードドッグより最大収縮に対する割合で13.5ポイント高く、ほかの筋の関与を抑えて多裂筋を使えるのはバードドッグでした。
ストレッチ
四つ這いで背中を丸めたり反らせたりして、腰の一節ずつを分けて動かします。ゆっくり10往復。硬いと丸める動きが一か所に集中し、同じ場所ばかりに負担が積み重なります。
出典
- 論文・英語 Lawrence MA, Swanson BT, Silfies SP, Winchester JB(2026) Activation of the deep lumbar multifidus during common rehabilitation and resistance exercises
- 論文・英語 Hides JA, Richardson CA, Jull GA(1996) Multifidus muscle recovery is not automatic after resolution of acute, first-episode low back pain
- 動画・英語 E3 Rehab BEST Multifidus Exercises - Not What You Think! (Science Based)
解説動画: 多裂筋に狙いを絞る運動の組み立て方(理学療法士の解説)/大城竜樹 | 理学療法士
概要: 理学療法士が、腰痛と運動療法をテーマに多裂筋を取り上げている。多裂筋は体幹のインナーマッスルのひとつで、背骨を一つ一つつなぐ筋肉。腰から首まで幅広くついていて、他の筋肉に比べて小さく短いが、腰まわりの多裂筋がとくに大きく太いとされる。ここに刺激を入れる運動の組み立てを紹介する内容になっている。
運動しても腰痛が改善しない人の特徴: 2025年10月に報告された研究を紹介している。65歳以上の慢性腰痛の人に12か月の運動療法を行い、改善した群としなかった群を比べたところ、改善しなかった群には血液の指標で赤血球の幅が広がっていることと多裂筋の萎縮という二つの特徴があった。多裂筋を狙った運動が要る、という結論につながる。
三つを組み合わせる、まずはドローイン: バードドッグを単独で行うより、モーターコントロール・安定化・筋トレの三つを組み合わせるほうが多裂筋の断面積の増加に効果的だったと報告されている。最初のドローインでは鼻から吸ってお腹を膨らませ、1メートル先のろうそくを消すように長く吐きながらへこませ、骨盤を軽く後傾して5秒キープする。
お腹を保ったまま手足を動かす: 次の安定化エクササイズは、ドローインで作った下腹部の収縮を保ったまま手足を動かすもの。仰向けで片足ずつゆっくり上げ下げする運動と、四つ這いで対角の手足を伸ばすバードドッグを各20秒行う。息を止めない、足を上げる瞬間と下ろす途中は力が抜けやすいので骨盤の位置を保つよう注意している。
腰まわりの筋トレと、続ける期間: 三つ目は腰まわりの筋力をつける筋トレで、スクワットやデッドリフトがこれにあたる。肩幅に立ち、背骨をまっすぐ保ったまま股関節を曲げてお尻を後ろへ引く。背骨を曲げるのではなく股関節を曲げる意識で、膝はすねが地面と垂直になる程度まで。少なくとも2〜3か月続けることで効果が出てくるとしている。