大胸筋
上半身(前面)
大胸筋は、胸板の厚みをつくる扇形の大きな筋肉
位置
鎖骨・胸骨・肋軟骨という広い範囲から始まり、脇の下でねじれながら上腕骨の前面へ集まります。胸の正面をおおう最も表層の筋肉で、腕を前に押し出しながら反対の手を当てると硬く盛り上がるのが分かります。上部・中部・下部で線維の走る向きが変わります。
はたらき
腕を体の前へ寄せる水平内転が主な仕事で、押す動作のほぼすべてに関わります。上部は腕を斜め上へ、下部は斜め下へ押す動きが得意なので、ベンチの角度を変えると働く線維も入れ替わります。鎖骨からの鎖骨頭と胸骨・肋軟骨からの胸肋頭に分かれ、単独では逆方向に働きますが、一緒に動くと腕を胸の前へ寄せます(AnatomyZone)。腕を胸の前へ閉じる動きに対して拮抗するのは、腕を後ろへ開く三角筋後部や菱形筋です。
鍛え方
ベンチプレスを軸に6〜12回×3〜4セットが定番です。経験者30人の筋電図を調べた2020年の研究では、ベンチの角度を0〜60°の5段階で比べ、上部は30°、中部・下部は0°で最も高くなりました。45°を超えると肩前面が強く働きます。ダンベルフライで内側へ絞る動きを足すと、バーベルでは届きにくい可動域の終わりまで刺激できます。肩甲骨を寄せて下げ、胸を張った姿勢を最後まで崩さないのが安全と効きの両立点です。
ストレッチ
壁やドア枠に手をつき、体を反対側へひねると胸の前面が伸びます。20〜30秒を2〜3回が目安です。硬いまま放置すると肩が前に巻き、肩の詰まりや猫背につながります。押す種目を行った日の締めや、デスクワークの合間に入れると習慣になります。
出典
解説動画: 腕立て伏せで大胸筋を鍛える3つのやり方/VALX 山本義徳 筋トレ大学
ベンチプレスとの違い: ベンチプレスは両手両足と背中が着いて姿勢が固定され、バーだけが動く。対して腕立て伏せは手と足しか接しておらず軌道も自由なので、軌道を安定させるためにより多くの筋肉とモーターユニットが動員される。その意味でベンチプレスを超える効果を得られるが、フォームを外すと全く効かない種目でもある。
負荷と弱点: 弱点は下ろす深さが床で制限されることと、負荷を変えにくいこと。腕立て伏せでかかる負荷は体重のおよそ3分の2とされ、体重100kgの人ならベンチプレス66kgほどに相当する計算になる。ただし手の幅、下ろす深さ、肘の張り方によって変わってくる。
基本のフォーム: 大胸筋を狙うなら手幅は肩幅の2倍ほどに広く取る。上腕三頭筋を狙う場合は別。肩からつま先までを結ぶラインが一直線になるよう腰を落とし、2〜3秒かけて顎が着くくらいまで下ろし、上げるときは肘を伸ばし切る。この手幅だと、ただの自重の腕立て伏せでもかなりきつくなる。
手首を守って深く下ろす: 床に手を着くと手首が反って負担がかかり、下まで下ろし切れない。ダンベルやパワーブロック、市販のプッシュアップバーを握って行えば手首が安全な角度になり、より深く下ろせる。同じようにゆっくりしたテンポで下ろしてストレッチをかけ、肘を伸ばして上げると、普通の腕立て伏せでも大胸筋に強い刺激を与えられる。
軍手で滑らせる最強版: 軍手をはめて床を滑らせ、下ろしながら腕を広げてストレッチ、上げながら腕を閉じて収縮させる。ダンベルベンチプレスのような開閉が腕立て伏せで再現できる形で、10回できれば相当な筋力という難度。筋肥大を狙うなら毎セットできるだけの回数を3セット行い、楽になってきたらリュックに重りを入れて背負う。
解説動画: 大胸筋を大きくするなら、この2種目!フォームとメニューを解説/今古賀翔【トレーニング科学】
2種目に絞る狙い: 動画は、大胸筋を大きくしたいならダンベルのフラットベンチプレスと、スミスマシンを使ったインクラインプレスの2種目に絞ることをすすめています。フラット系とインクライン系を1種目ずつ組み合わせ、少ない種目で重量をしっかり伸ばしていく考え方だと説明しており、バーベルや好みの器具に置き換えてもよいとしています。
フラットプレスの姿勢: ダンベルのフラットベンチプレスでは、肩甲骨を寄せて下げ、胸を張った状態を保つことと、肘は頭側から見て地面と垂直になる程度に開くことをすすめています。肘を閉じすぎると上腕三頭筋、開きすぎると上腕二頭筋が使われやすくなるとし、ダンベルを肩のラインより少し下まで下ろして大胸筋を伸ばすことも挙げています。
インクラインの角度: インクラインのスミスマシンプレスでは、ベンチの角度を30°程度にすることをすすめています。45°まで起こすと肩の前部が使われやすくなるとし、実験でも30°の時に筋活動が最も多かったと紹介しつつ、体の硬さに応じて多少調整してよいとも述べています。バーは首ではなく鎖骨に近い位置まで下ろすことも挙げています。
肩や腕が疲れる時: プレス系の種目で腕や肩ばかり疲れてしまう場合の直し方として、1レップごとに肩が前に出ていないかを確認すること、肘の角度をおよそ60°から70°に保つこと、バーやダンベルは強く握り込まずに軽く握ることをすすめています。押す動きは肘を下げて押すという意識を持つと、大胸筋を使いやすくなるとも述べています。