前鋸筋
上半身(前面)
前鋸筋は、肋骨から肩甲骨を支えるのこぎり型
位置
肋骨の側面、第1〜第9肋骨あたりから、のこぎりの歯のように何本にも分かれて起こり、脇の下の奥を回り込んで肩甲骨の内側縁の前面(肋骨側)へ付きます。鍛えた体では、肋骨の上にのこぎりの歯の形がそのまま浮き出て見えます(Kenhub)。起始の下端には個人差があり、第8肋骨までの人と第9肋骨までの人がいます(Bodyworks Prime)。神経は長胸神経です。
はたらき
肩甲骨を肋骨に沿わせたまま前へ送ります。下側の線維は肩甲骨を上へ回し、腕を頭上へ上げる余地を作ります(Bodyworks Prime)。この筋が弱いと、頭上へ挙げる動作で肩が痛みやすくなります。表面筋電図で比べた2004年の研究では、上方回旋が主な動きのとき下部が強く働く傾向が出ました(Ekstrom ほか)。上部の線維は肩甲骨を下へ押す向きに働きます(Kenhub)。
鍛え方
腕立て伏せの一番上で背中をさらに押し切る「プッシュアッププラス」は、前鋸筋を使う代表的な練習です。表面筋電図で比べた2003年の研究では、肩の屈曲・水平屈曲・外旋を組み合わせた対角方向の運動で最も強く働きました(Ekstrom ほか)。入り口は、四つ這いやプランクの姿勢で背骨を真っすぐに保ったまま肩甲骨だけを動かす練習です(Nピラティス)。
ストレッチ
肋骨を手で押さえたまま真横へ側屈し、少しひねると、脇の下からわき腹にかけて伸び感が出ます(Nピラティス)。肩甲骨を後ろへ引いて胸を張る形も、同じ筋を伸ばせます。膝を曲げて両手を後ろにつき、胸を張ってお尻を持ち上げ、ゆっくり下ろす形も使えます。ストレッチポールで転がす方法は、肋骨が折れやすいぶんリスクがあります。
出典
- 論文・英語 Ekstrom RA ほか(2004) Comparing the Function of the Upper and Lower Parts of the Serratus Anterior Muscle Using Surface Electromyography
- 論文・英語 Ekstrom RA ほか(2003) Surface electromyographic analysis of exercises for the trapezius and serratus anterior muscles
- 動画・英語 Kenhub - Learn Human Anatomy Serratus Anterior Muscle: Function, Origins - Human Anatomy | Kenhub
- 動画・英語 Bodyworks Prime Serratus Anterior Anatomy: Origin, Insertion & Action
- 動画 Nピラティス〜ゼロからわかる解剖学〜 肩がめっちゃ安定する前鋸筋!解剖学を完全攻略!
解説動画: 前鋸筋を狙う腕立て・ショルダープレス・チューブ種目/筋肉あるある
前鋸筋の位置と働き: 前鋸筋は胸部から腹部にかけてノコギリ状に見える筋肉で、体全体の迫力にかなり貢献する。肋骨の一つ一つの中央部分から始まり、広背筋の下をくぐるような格好でついている。最も強い作用は肩甲骨の外転で、遠くのものを取るために腕を伸ばすような動きでよく使われる。ボクシングのパンチと同じ動きであることからパンチャーズマッスルとも呼ばれる。ほかに肩甲骨の上方回旋・下方回旋の働きも持つ。
変形の腕立て伏せ: 通常の腕立て伏せより少しだけ前に手をつき、体を持ち上げる局面で地面を強く押して肩甲骨を外転させ、背中を丸めて浮かせる。下ろすのは深くなくてよい。手は正面から見て逆ハの字につくと前鋸筋の活動が高まると研究で示されている。掌底で自分を押すようにし、その際に肩を内側に回すと腕がより遠くに出て外転が起こりやすい。難しければ膝をついて動きを練習するのも有効。
肘をついて行うバージョン: 同じ動きを肘をついて行うやり方も有効だとする。腕を曲げた形だと深く下ろしても胸に効きにくいため、前鋸筋をぐっと収縮させてから伸ばしていく使い方ができる。いったん沈み込んで肩甲骨を寄せて力をため、そこから地面を押して背中が丸まるところまで上げる。腕立てと肘つき、やりやすい方を選べばよい。
可動域を狭くしたショルダープレス: 前鋸筋は物を前や上に押す動作で使われるため、ベンチプレスやショルダープレス、プルオーバーを行わないと発達が弱くなることがある。狙って鍛える場合は上20センチほどの範囲だけでバーベルを扱う。まず肩甲骨を下に下ろし、そこから肩甲骨を上に移動させる力だけで押し上げる。シュラッグのように肩がすくまないよう注意する。下ろすのはおでこの上あたりまでで、それ以上下ろすと肩の関与が大きくなる。
チューブを使ったやり方: チューブを何かに引っかけ、パンチをするように腕を押し出す。最後にしっかり奥まで腕を伸ばすことがポイントで、その瞬間に前鋸筋へ最も負荷がかかる。体をひねってもよいが、趣旨は肩甲骨の外転にあるので、それができていれば他は好きなフォームで問題ないとしている。下から上へ向かって押し出すやり方もあり、こちらは二番目の働きである上方回旋に負荷をかける形になる。