見分け図鑑

カビ(青・黒・赤・緑)(カビ)

色が付いていたら、迷わない。ふわふわと立体的に毛羽立ち、青・緑・黒・赤・オレンジといった色を持ちます。産膜酵母のなめらかな白い膜とは、見た目がはっきり違います。糠床の縁、味噌の表面、パン種の縁に出やすいところです。

味噌の表面のカビ(カビ)

上を大きく取れば、下は生きている。仕込んだ味噌の表面、とくに容器の縁や、空気に触れている部分に出ます。白い産膜酵母は混ぜ込めますが、青・黒・緑の毛羽立ったものはカビです。表面だけに乗っていて、内部は色も匂いも変わっていないのが、続けられる状態の目安になります。

糠床の縁のカビ(カビ)

混ぜ足りない場所に、必ず出る。容器の内側の壁、糠が薄く付いて乾いたところに出ます。床の中ではなく「縁」に出るのが特徴で、これはそこだけ空気に触れ続けているからです。白くなめらかなら産膜酵母、毛羽立って色があればカビと見分けます。

黒い点・黒ずみ(カビ)

カビか、酸化か、鉄の反応か。3つの可能性があります。毛羽立った立体的な黒はカビ。味噌や糠床の表面が平らに黒ずんでいるだけなら、空気に触れた酸化(褐変)で、色が濃いだけです。鉄の器具を使ったあとに黒い点が出た場合は、食材の成分と鉄が反応した色のことがあります。

赤・ピンクのぬめり(カビ)

発酵の菌ではない相手。糠床の表面や漬け汁、容器の縁に、ピンクや赤のぬるっとした膜が出る状態です。カビのような毛羽立ちがなく、ぬめりと光沢を持つのが特徴。浴室の排水口に出るピンク汚れと同じ見た目です。

白い膜(産膜酵母)(産膜・におい)

これは、捨てなくていい。糠床や漬物、味噌の表面に張る、白くて薄い膜です。面としてなめらかに広がり、しわが寄ったように見えることもあります。ふわふわと毛羽立っていたらカビなので、そこが見分けの分かれ目です。

シンナーのような匂い(産膜・におい)

酵母が働きすぎている合図。接着剤、除光液、セメダインのような刺激的な匂いです。糠床、パン種(サワードウ)、甘酒の失敗でよく出ます。

糠床の異臭(靴下・アンモニア)(産膜・におい)

匂いの種類で、原因が分かる。靴下や足のような匂いは酪酸菌の増えすぎ(底の無酸素部分で増えます)。アンモニア臭は、たんぱく質の分解が進みすぎたか、漬けた野菜を入れっぱなしにした結果です。

腐敗のにおい(酸味との違い)(産膜・におい)

酸っぱいと、くさいは別。発酵の匂いは、酸味・アルコール・麹の甘い香りのどれかに寄ります。腐敗の匂いはそこから外れた不快な方向で、生ゴミ、下水、硫黄、生臭さといった表現になる匂いです。嗅いだ瞬間に体が拒否する感じがあるかどうかが、実用的な目安になります。

納豆のようなにおい(納豆菌の混入)(産膜・におい)

強い菌が、乗っ取りにきた。糠床、パン種、甘酒、味噌から納豆のような匂いがして、少し糸を引く。納豆を扱った手や器具、同じ台所に置いた容器から納豆菌(枯草菌の一種)が入り込んだ状態です。

酸っぱくなりすぎた(過発酵)

失敗ではなく、行きすぎただけ。想定より強い酸味。糠漬けが刺すように酸っぱい、ヨーグルトがホエイと大きく分離している、キムチが酸味主体になっている、といった状態です。

容器がふくらむ・ガスが出る(過発酵)

ふつうの発酵か、警告か。キムチ、ピクルス、パン種、コンブチャでガスが出るのは、酵母や乳酸菌が働いている証拠です。ふたを開けるとプシュッと音がし、酸味のある匂いがします。一方で、油漬けや瓶詰めのように酸素が無く塩分も低い仕込みでのふくらみは、まったく別の警告です。

吹きこぼれる・あふれる(過発酵)

元気すぎるだけのことが多い。パン種が容器から溢れる、キムチの汁が押し出される、糠床から水が上がって縁を越える。発酵で出たガスと、上がってきた水分に押し出されている状態です。

たまり(味噌の上に出る液)(過発酵)

捨てるどころか、いちばん濃い。仕込んだ味噌の表面や、重石の周りに濃い茶色の液が溜まる。これが「たまり」で、大豆から出たうま味と塩分が濃縮された液体です。醤油の原型でもあります。

漬物がシュワシュワする・発泡する(過発酵)

炭酸か、アルコールか。白菜漬け、キムチ、ピクルスを口に入れると舌の上で細かい泡がはじける。汁に細かい気泡が立ち、ふたを開けると音がします。乳酸菌や酵母が糖を分解して二酸化炭素を出している状態です。

発酵が進まない・ふくらまない(発酵不足)

菌が死んだか、寒いか、餌が無いか。パン生地がふくらまない、甘酒が甘くならない、ヨーグルトが固まらない、糠床が何日経っても酸味が出ない。「何も起きない」という形の失敗です。

水が上がらない(発酵不足)

空気に触れている時間が、危ない。白菜漬け、梅干し、ぬか漬けで、数日たっても材料が水に沈まない。上のほうが乾いて空気に触れたままになっています。

甘酒が甘くならない(発酵不足)

だいたい、温度が高すぎた。麹と米(またはお粥)を保温したのに、数時間たっても甘みが出ない。あるいは甘みが薄いまま止まっている状態です。

ヨーグルトが固まらない(発酵不足)

種か、温度か、牛乳の種類か。規定の時間を保温しても、牛乳がゆるいまま固まらない。表面がうっすら固まっただけ、混ぜるとすぐ崩れる、という状態も含みます。

パン種が浮かない・ふくらまない(発酵不足)

腹が減っているか、寒いか。自家製のパン種(サワードウ)が、かけ継ぎしても体積が増えず、水に落とすと沈む。表面に気泡が立たず、匂いも弱い状態です。

白い粉・白い粒(チロシン)(変色・分離)

カビではなく、うま味の結晶。熟成した味噌、醤油の澱、長期熟成のチーズに現れる白い粉状、または砂のような小さな粒。ふわふわした毛羽立ちが無く、指でつまむとザラつくのがカビとの違いです。噛むとシャリっとします。

ホエイ(透明な水)が分離した(変色・分離)

捨てずに、使い道がある。自家製ヨーグルトの表面に黄色みがかった透明な液が浮く。水切りヨーグルトを作ったときに落ちるのと同じもので、たんぱく質が酸で固まったときに押し出された水分(乳清)です。

味噌の色が濃くなった(変色・分離)

焦げているのではなく、進んでいる。仕込んだときは薄い黄土色だったのに、数ヶ月で赤茶〜こげ茶に変わっていく。表面のほうがとくに濃くなります。

漬物が青紫・緑に変色した(変色・分離)

色素の反応であることが多い。なすの漬物が茶色くなる、赤かぶの色が抜ける、ぬか漬けの大根やかぶが青く(青緑に)なる。ムラのある面としての変色で、毛羽立ちやぬめりを伴いません。

水が上がりすぎた(変色・分離)

薄まっている、という意味。糠床がゆるくなって手に付く、漬物の材料が液に浮いている、味が水っぽくぼやけている。野菜から出た水分で、塩分濃度が下がっている状態です。

ボツリヌス菌(最も注意すべき相手)(危険なサイン)

見た目でも匂いでも分からない。増殖しても、見た目・匂い・味に変化が出ないことがあります。だから「おかしくないから大丈夫」という判断が通用しません。酸素がなく、酸性でもなく、塩分も低い環境で増え、強い毒素を作ります。容器がふくらむ、内容物からガスが出るのは危険なサインのひとつです。

ヒスタミン(加熱しても消えない)(危険なサイン)

発酵ではなく、温度管理の失敗。赤身魚(マグロ、カツオ、サバ、イワシ、ブリ)を常温に置くと、細菌が魚のヒスチジンをヒスタミンに変えます。見た目はほとんど変わりませんが、口に入れたときに舌がしびれる、ピリピリするという感覚が出ることがあります。

糸を引く・ぬめる(納豆以外で)(危険なサイン)

パンで起きたら、迷わず捨てる。パンの中身がねばついて糸を引き、甘ったるい異臭がする(ロープ現象と呼ばれます)。漬物の汁や煮豆がぬるぬるして、すくうと糸のように伸びる。納豆以外でこの状態になったら、狙っていない菌が優位になっています。

虫がわいた(危険なサイン)

どこから入ったかで、答えが変わる。糠床や粉ものに白い小さな粉のような虫(コナダニ)が動いている、容器のまわりに小さなハエ(ショウジョウバエ)が集まる、あるいは糠の中に幼虫がいる。

口に入れてしびれる・刺す(危険なサイン)

そこで飲み込まない。口に入れた瞬間に舌がピリピリする、しびれる、刺すような刺激がある。酸味による「酸っぱい」とは違う、感覚そのものへの刺激です。魚の加工品、古い漬物、傷んだ発酵食品で起こります。