身の回りの流れ図鑑
蛇口の水が細くなる(台所と水まわり)
蛇口の水が細くなるのは、落ちるほど水の筋が絞られ、やがて粒に切れる変化です。蛇口をほんの少しだけ開けると、水はガラス棒のようななめらかな筋になって落ちます。よく見ると下へ行くほど筋は細くなり、ある高さで表面が波打ち、そこから先はつながらずに粒がつながった列へ変わります。細く出したときは手のひら一つ分ほどで粒に変わり…
水の落ちる音が変わる(台所と水まわり)
水の落ちる音が変わるのは、注ぐほどコップの中の空気の柱が短くなって音が高くなる変化です。空のコップに水を注ぐと、はじめはこもった低い音がして、水位が上がるにつれて少しずつ高くなり、満ちる直前で詰まったような高さになります。注ぐ勢いを強めても音の高さはさほど動かず、残りの量につれて変わっていくので…
鍋の中の対流(台所と水まわり)
鍋の中の対流は、底で温まった水が上がり、縁で冷えて沈むひと回り。鍋を火にかけると、中の湯は底から立ちのぼって表面で外へ広がり、縁を伝って沈むという、ひと回りの道をつくります。味噌汁ならつぶが上下に運ばれていくのが見え、澄んだ汁でも湯気の下で影が動きます。かき混ぜていないのに中身は絶えず入れ替わり…
やかんが鳴る(台所と水まわり)
やかんが鳴るのは、蒸気が笛の穴を通り抜けて音を立てることです。笛付きのやかんは、沸くと高く澄んだ音を出します。その前にはシューという曇った音が続き、沸騰が始まる直前にいったん静かになることもあります。移り変わる順番はいつも同じなので、慣れるとあとどれくらいで沸くかが耳で見当をつけられ、目を離していても気づけます。
味噌汁にできる模様(台所と水まわり)
味噌汁にできる模様は、湯気の下でゆっくり動く、汁の表面のセル。湯気の立つ味噌汁を静かに置くと、表面に網目のようなセルが浮かび、ゆっくり形を変えていきます。境目にはつぶが集まって濃い線のように見え、内側はうすい色です。かき混ぜても十数秒ほどでまた組み上がり、冷めるにつれて動きが鈍くなって、最後は消えていきます。
コーヒーに落としたミルク(台所と水まわり)
コーヒーに落としたミルクは、沈みながら輪になり、なかなか混ざらない一滴。コーヒーや水にミルクを一滴落とすと、白い柱がまっすぐ沈み、下の端がめくれてドーナツ型の輪になります。輪は形を保ったまましばらく進み、やがて崩れて何本もの筋にほどけます。かき混ぜなければその筋は何分たっても消えず、落とすたびに違う形が残ります。
ワインの涙(台所と水まわり)
ワインの涙は、グラスの壁を上がって垂れる、蒸発がつくる筋。グラスを回してから置くと、内側の壁に薄い膜が上へ這い上がり、しばらくすると輪のように並んだしずくが壁を伝って垂れてきます。度数が高いものほどはっきり見えます。「よいお酒の証」と言われることがありますが、見えているのは主に度数と糖の量の違いです。
排水口に立つ渦(台所と水まわり)
排水口に立つ渦は、栓を抜いたあと中心がへこんで空気の芯が伸びる動き。洗面台や浴槽の栓を抜くと、はじめの水はまっすぐ落ちますが、しばらくすると中心がへこみ、細い渦が立って空気の芯が下まで伸びます。芯が届くと音がゴボゴボという響きに変わり、残りわずかになったところで急に崩れます。立つまでに少し間があるのがふつうです。
シャワーカーテンが内側へ寄る(風呂)
シャワーカーテンが内側へ寄るのは、落ちる水滴が空気を引きずって中の圧力が下がり、外の空気に押されることです。シャワーを出して一分ほどたつと、カーテンの下の方が浴槽の内側へふくらみ、ふくらはぎや腕に冷たく張りついてきます。狭くて閉め切った浴室ほどはっきり出て、広くて風の通る浴室ではほとんど気になりません。…
湯船の温度のむら(風呂)
湯船の温度のむらは、上が熱く足元がぬるくなる湯の層。追い焚きを止めて十分ほど置いた湯船は、手を入れる深さで温度が変わります。表面近くは熱いのに足元は二度から四度ほどぬるく、腰を下ろした瞬間に背中と足で違う温度を感じます。かき混ぜると十数秒で均一になりますが、そのぶん上の熱い層は消え…
泡が消えていく速さ(風呂)
泡が消えていく速さが変わるのは、油や汚れが膜を壊れやすくすることです。入浴剤や石けんで立った泡は、上の方から順に消えていきます。よく見ると小さい泡が大きい泡に飲まれ、膜が薄くなって虹色に色づき、そこから破れます。体を洗ったあとの湯では一、二分しか持たないこともあり、泡の寿命は湯の汚れ具合で驚くほど変わり…
栓を抜いたあとの流れ(風呂)
栓を抜いたあとの流れが遅くなっていくのは、上に乗る湯が浅くなるほど押し出す力が弱まることです。栓を抜いた直後は勢いよく減るのに、浅くなるほど遅くなり、最後の数センチがいちばん長く感じます。終わりごろには小さな渦が立ち、空気を巻き込んでゴボゴボという音に変わります。抜けきったあとも底には薄い水の膜と丸い水滴が残り…
湯気の立ちのぼり方(風呂)
湯気の立ちのぼり方は、まっすぐ上がった白い柱が途中で崩れる形。湯から立つ白いものは水蒸気そのものではなく、冷えて小さな水の粒に戻ったものです。湯面のすぐ上には透明なすき間があり、その先から白くなります。柱はしばらくまっすぐ上がったあと、ある高さで急にゆらぎ、渦を巻いてほどけ、数十センチ先で見えなくなります。
エアコンの風が届かない(部屋と空気)
エアコンの風が届かないのは、風が周りの空気を巻き込んで弱まり、冷えた空気が床に沈んで天井側と混ざらなくなることです。冷房をつけても手前だけが冷えて、部屋の奥はぬるいままということがあります。吹き出し口では強い風なのに、2〜3メートル先ではもうほとんど感じられません。冷たい空気は床の近くにたまり…
換気は2か所開ける(部屋と空気)
2か所開けて換気するのは、入口と出口をつくって空気を通り抜けさせることです。窓を一か所だけ開けても、カーテンが少し揺れるだけで部屋の空気はなかなか入れ替わりません。離れた二か所を開けると、料理のにおいや湯気が数分ほどで薄くなります。同じ壁の窓を二つ開けるより、対角の二か所のほうがはっきり効きます。…
扇風機の後ろの風(部屋と空気)
扇風機の後ろの風は、吸う側と吹く側で届く距離がまるで違う風。前に立つと数メートル先まで風が届くのに、後ろは羽根の直径ほど離れるともう分かりません。後ろに紙を近づけても、動くのはごく近いところだけです。同じ機械の表と裏なのに届く距離がこれだけ違い、吸う側だけが極端に短いのが不思議に見えます。首振りにしても…
線香の煙が途中で乱れる(部屋と空気)
線香の煙がまっすぐ立ちのぼるのは、静かな空気で層流が保たれているからです。細い煙のすじがまっすぐ立ちのぼり、数センチから20センチほど上で縁に小さな波が立ち、一瞬でほどけて、渦を巻きながら白く広がって、部屋の中へ薄く散ります。下は糸のよう、上は雲のように見えます。煙がまっすぐ昇ること自体が風の弱さの目印で…
ドアが勝手に閉まる(部屋と空気)
ドアが勝手に閉まるのは、室内と外の圧力差に押されて動く現象です。窓を開けているとき、別の部屋のドアがひとりでに動きだし、最後に強い音を立てて閉まることがあります。半開きのまま止まったり、開ける向きに押し返されたりもします。動きだしてから閉まるまでは数秒ほどで、風が少し強まった瞬間に起きることがほとんどです。…
加湿器の霧が落ちる(部屋と空気)
加湿器の霧が落ちるのは、蒸発で冷えて重くなった空気のかたまりが、下へ沈むことです。超音波式の加湿器から出る白い霧が、少し上がったあとで下へ垂れ、机や床を這うように広がります。部屋全体はなかなか湿らないのに、近くの木の面や紙だけが湿ることがあります。噴き出し口から30センチほどで白さが消え…
掃除機の吸い込み(部屋と空気)
掃除機の吸い込みは、外の大気が押し込む力とゴミを運ぶ風の量で決まる。吸口を床に密着させると音が低く変わり、ゴミが持ち上がります。数センチ浮かせるとほとんど効きません。紙パックやフィルタが詰まってくると、音は同じでも取れ方だけが落ちます。細いノズルに替えると近くの吸い付きは強くなるかわり、一度に運べる量は減ります。…
傘がおちょこになる(外と乗り物)
傘がおちょこになるのは、風上と風下の圧力差に骨が押し負けて起こる変形です。風の強い日に、傘の布が骨ごと風下へめくれ返り、お椀の向きがひっくり返った形になります。裏返る瞬間はまたたく間で、前ぶれがありません。真正面から受けたときより、斜め後ろから吹かれたときのほうが起こりやすく…
ビル風(外と乗り物)
ビル風は、高い建物のまわりだけ風が強くなる場所。高い建物のそばだけ、少し離れた通りより風が強い場所があります。角を曲がった一歩で髪が乱れ、傘が押し返される。建物と建物の狭い隙間や、一階を柱で抜いた通路で特に強く、同じ日の同じ時刻でも道路一本ずれるだけで体感がまるで違います。自転車がハンドルを取られるのも…
電車が来るときの風(外と乗り物)
電車が来るときの風は、前から押す風・引きずる風・通り過ぎたあと線路側へ寄せる風と移り変わる、三段階の風。ホームで列車が近づくと、まず前から押し出される風、次に車体に引きずられる風、通り過ぎた直後に線路側へ寄せる風、と三段階で変わります。速い通過列車ほど強く、黄色い線の内側に立っていても上着のすそがはっきり動きます。…
車の後ろに引き込まれる(外と乗り物)
車の後ろに引き込まれるのは、後ろに残った動く空気に押される動きです。走り去る車の後ろを、落ち葉やレジ袋がしばらく追いかけていくことがあります。歩道で待っているとき、通り過ぎた車のほうへ体が半歩持っていかれる感じも同じものです。自転車で車のすぐ後ろに入るとペダルは軽くなりますが…
大型車の後ろは燃費が伸びる(外と乗り物)
大型車の後ろを走ると燃費が伸びるのは、空気抵抗が減って燃料が助かることです。高速道路で大型車の後ろにつくと、瞬間燃費の表示が目に見えて良くなり、風切り音も静かになります。効きめは車間を詰めるほど大きくなりますが、危険も同じだけ跳ね上がります。数字のために近づかないのが前提で…
高速で窓を開けたときの音(外と乗り物)
高速で窓を開けたときの音は、窓を少し開けたときに出る低い唸り音。高速で走っているときに後ろの窓を少しだけ開けると、ボッ、ボッという耳を圧迫する低い音が出ます。音というより鼓膜が押される感じに近く、会話がしづらくなります。ところが窓を全開にしたり、別の窓も少し開けたりするとあっさり止まることがあり…
自転車の向かい風(外と乗り物)
自転車の向かい風は、速く走るほど重くなる空気の手ごたえ。無風の日でも、速く走るほど正面から押し返される手ごたえが強くなります。時速二十五キロ前後を超えるあたりから、こぐ力の半分以上が空気に持っていかれ、上体を起こしただけではっきり重くなります。低い姿勢が軽く感じるのは気のせいではなく…
飛行機雲(外と乗り物)
飛行機雲は、排気の水蒸気が凍った氷の粒で、上空が乾けば消え湿っていれば広がる。高い空を飛ぶ機の後ろに、白い線が数十秒から数時間残ります。エンジンの数だけ線ができるので二本や四本に見え、やがて一本の帯にまとまります。すぐ消える日と、広がって薄い雲になる日があり、同じ空でも飛ぶ高さが違えば結果が変わります。…