排水口に立つ渦
台所と水まわり
中心がへこんで空気の芯が伸びる、抜いた後の渦
何が起きている?
洗面台や浴槽の栓を抜くと、はじめの水はまっすぐ落ちますが、しばらくすると中心がへこみ、細い渦が立って空気の芯が下まで伸びます。芯が届くと音がゴボゴボという響きに変わり、残りわずかになったところで急に崩れます。立つまでに少し間があるのがふつうです。
なぜそうなるか
水は排水口へ向かって内側へ寄っていきます。抜く前から残っていたごくわずかな回転は、中心へ近づくほど速くなります。腕を縮めたスケーターと同じで、回る勢いが持ち越されるからです。回る水を内側へ曲げ続けるには外側の圧力が高いことが要るので、中心ほど圧力は低くなり、水面がへこんで空気の芯が伸びます。押しているのは外側の水のほうで、低い中心が引っぱるのではありません。「吸い込む力」という言い方は順番を逆にした言い方です。
確かめ方
洗面台に水をため、栓を抜く直前に手のひらでゆっくり右回りにかき回してから抜いてください。次は左回りで同じことをします。渦の向きは回した向きについてきます。北半球だからこちら回り、という決まり方は大きさが違いすぎます。先に立った回転のほうがずっと強いからです。
つながる現象
同じ渦は排水口の渦で正面から扱っています。回る勢いが持ち越されて中心ほど速くなるという話は、台風や竜巻の中心にもそのまま通じます。ただし大きさが桁違いなので、地球の自転が効くかどうかは別の問題になり、洗面台の水では効きません。芯が下まで届くと空気が通り道をつくり、落ちる速さも変わります。
解説動画(海外・英語): Does Water Swirl the Other Way in the Southern Hemisphere?/Veritasium
家の流しでは決まらない: シドニーのデレクとアラバマのデスティンが、ほぼ同じ緯度で反対の半球から撮った2本を、並べて同時に見られるようにした回。家庭の流しやトイレは同じ流しが時によって逆向きに流れるほどばらばらで、便器は水を出すジェットの設計で向きが決まってしまう。容器の水にはいつも残っている回転があり、半球ではなくそれが渦の向きを決める、というのが二人の出発点。
24時間置いてから抜く: 使ったのは直径1.5メートルほどの子ども用プール。入れ方の癖が残らないよう、わざと結果と逆向きに水を入れてから24時間置いた。栓を引き抜くと回転が生まれてしまうので、底に付けた弁を開けて抜く。数分は何も見えず、四方に食用色素を落としてやっと動きが見えた。
入れた向きとは逆に回った: 結果は北半球のアラバマが反時計回り、南半球のシドニーが時計回り。どちらも入れた向きとは逆に回った。ただしデレクは、ここまでやらないと見えないほど小さい効果だと念を押す。風呂や流しや便器では、他から入ってくる回転がこれを完全に打ち消してしまう。
極に近い側ほど遅い: 効いているのは地球の自転で、二人はこれをコリオリの力と呼んだ。プールは止まって見えて1日に1周している。極から遠い側は1日に進む距離が長いぶん東向きに速く、極に近づくほど遅くなって最後はゼロになる。排水口の渦へ水が集まるとき、赤道側は追い越して先に出て、極側は遅れる。その差が回る向きになる。
台風も同じ絵で説明する: 同じ理屈で、北半球のハリケーンは反時計回り、南半球のサイクロンは時計回りに回る。台風の中心は排水口と同じで気圧が低い。そこへ周りの気圧が高い空気が目に向かって押し寄せ、半球で決まった向きに回りながら入っていく。