傘がおちょこになる
外と乗り物
確かめやすさ: 見かけたら分かる
傘がおちょこになるのは、風上と風下の圧力差に骨が押し負けて起こる変形です。
何が起きている?
風の強い日に、傘の布が骨ごと風下へめくれ返り、お椀の向きがひっくり返った形になります。裏返る瞬間はまたたく間で、前ぶれがありません。真正面から受けたときより、斜め後ろから吹かれたときのほうが起こりやすく、駅の出口や建物の角のように風向きが急に変わる場所で目立ちます。骨を戻せることもあれば、付け根の金具が曲がって終わることもあります。
なぜそうなるか
布の前面では、ぶつかった空気が行き場を失って減速し、そのぶん布を押す圧力が上がります。裏側は縁で流れが剥がれ、渦の詰まった領域になって押し返す力が弱いままです。差し引きの力はつねに風下を向き、骨の付け根にかかる曲げが金具の耐える限界を超えた瞬間、骨が反り返ります。この前後の差がどれほど大きいかは、風を正面から受ける平らな板の値からも見当がつきます。NASAグレン研究センターの教育資料では、板の抵抗係数は1.28とされ、流線形に整えた翼型の0.045より何十倍も大きく、開いた傘は骨が浮くほどこの板に近い形へ寄っていきます。一度裏返ると風は新しい形を保つ向きに押すので、風の中では自力で戻せません。
確かめ方
傘そのもので試すと壊れるので、紙コップと扇風機を使います。弱い風の中で紙コップを指先に載せ、口を風上に向けたときと、底を風上に向けたときで押される強さを比べます。口を向けたほうがはっきり強く押し戻され、同じ大きさでも向きだけで受ける力が変わると分かります。風はいちばん弱い設定から試します。紙コップは軽いので、風上に置く手を添えておくと落ち着いて比べられます。
つながる現象
縁で流れが剥がれる剥離と、前後の圧力差が生む圧力抗力が、そのまま形になった現象です。骨を増やしたり布に空気を逃がす穴を開けた傘があるのは、裏側にたまる渦を減らすためです。それでも、いつ裏返るかは骨の材質と風の乱れ方の組み合わせ次第で、正確な予測はまだ難しいのが正直なところです。同じ差は、半球のカップの凹面と凸面を風上に向けた実験でも見られ、凹面側の抵抗係数はおよそ1.3〜1.5、凸面側は球に近い値まで下がります。
出典
- 公的機関・英語 NASA Glenn Research Center(2023) Effects of Shape on Drag
- 論文・英語 M. J. Brevoort, U. T. Joyner(NACAラングレー記念航空研究所)(1934) Aerodynamic Characteristics of Anemometer Cups(NACA Technical Note 489)