ビル風

外と乗り物

高い建物のまわりだけ風が強くなる場所

何が起きている?

高い建物のそばだけ、少し離れた通りより風が強い場所があります。角を曲がった一歩で髪が乱れ、傘が押し返される。建物と建物の狭い隙間や、一階を柱で抜いた通路で特に強く、同じ日の同じ時刻でも道路一本ずれるだけで体感がまるで違います。自転車がハンドルを取られるのも、たいていこうした一角です。

なぜそうなるか

上空の速い風が壁にぶつかると行き場を失い、上と横へ回り込みます。風は高いところほど速いので壁の上のほうを押す力が強く、そのぶんが下へ吹き下ろす流れになって地面近くの風と重なります。壁の前で空気が止まった場所は圧力が高く、角の先は流れが剥がれて低いので、その差が空気を角へ向けて押し出します。押し出された空気は狭い断面を通るぶん速くなり、歩く高さでも上空の風に近い強さになって人や傘を横へ押します。

確かめ方

風の強い日に、建物の角を回り込む前と後で上着や髪の動きを見比べます。角を曲がった一歩で急に強くなり、数メートル離れると弱まるのが分かります。どの角が強いかは建物の形と並び方で決まり、設計では風洞実験や計算で確かめるほどなので、見ただけでは当てられません。飛ばされそうな荷物は角の手前で抱え直しておくと安心です。

つながる現象

壁の角で流れが剥がれる剥離と、狭いところを通るときに速くなるベンチュリ効果が重なった形です。気をつけたいのは因果の順番で、速くなったから圧力が下がったわけではありません。速度差と圧力差は同時に現れていて、どちらか一方がもう一方の原因ではない、という言い方が実際に近いです。

解説動画(海外・英語): How Toronto's skyscrapers make winds worse/CBC News

犯人は天気ではなく建物: 街の中心部を歩いていて浴びる強い突風は、天気のせいというより超高層ビルのせいだ、というところから始まる。話し手はライアソン大学で10年以上風工学を研究している助教。超高層ビルが建ち続けてきたのはこの100年のことだという。

壁を伝って下りてくる風: 風はまず建物の上のほうに当たる。建物が風の進路をさえぎると、風は壁の面に沿って下へ滑り降り、地面にぶつかって渦になる。これが吹き下ろし(downwash)で、動画は建物の面と平行に下向きへ進む風と言い表している。上のほうに当たった風が、そのまま歩く高さまで下りてくる。

隙間と角で速くなる: 2棟が並んで建っていると、あいだの隙間を通る風は速さを増す。もう一つが角の渦で、鋭い角を回り込むときにも風が加速する。トロントには四角い塔が多い、とも話す。1980年代には状況が悪化し、人が吹き飛ばされないようにフロント通りへ登山用のロープが張られたという。

風洞で測り、形で受け止める: 同じ大学の亜音速風洞では、建物も橋も縮尺を変えて試せる。センサーで高さごとに風がどう当たるかを調べ、その結果を設計へ返す。建物の足元に張り出した台座(ポディウム)を付ければ、下りてきた風はそこで外へそらされる。もう一つの手が生け垣や壁で、後ろ側はそよ風くらいまで弱まる。

隣が1棟建つと値が変わる: 歩行者の高さの風の解析は、ひととおりで1〜2週間かかる。やっかいなのは別の建物が建つだけで測った値が変わってしまうところで、だから開発する側も行政も手早く直す構えが要る、と締めくくる。トロントでは400棟近くの新しい建物が計画されているという。