自転車の向かい風
外と乗り物
速く走るほど重くなる空気の手ごたえ
何が起きている?
無風の日でも、速く走るほど正面から押し返される手ごたえが強くなります。時速二十五キロ前後を超えるあたりから、こぐ力の半分以上が空気に持っていかれ、上体を起こしただけではっきり重くなります。低い姿勢が軽く感じるのは気のせいではなく、受ける面積の差がそのまま出ています。
なぜそうなるか
空気に押される力は、ぶつかる空気の量と速さの両方で増えるので、速さが二倍になると押し返す力はおよそ四倍です。その力に打ち勝ちながら進むには、力と速さを掛けた分の仕事を出し続けることになるので、こぎ手の負担は八倍近くまで伸びます。効いているのは表面の摩擦より形で、体の前で空気が止まって圧力が上がり、背中側は渦で圧力が低いままです。この前後の圧力差が体を後ろへ押し戻します。
確かめ方
同じ平らな道を往復して比べます。ギアと回転数をそろえたまま行きと帰りを走ると、風向きだけで速度が変わるのが分かります。上体を起こす姿勢と、腕を曲げて低くする姿勢を同じ区間で交互に試すのも有効です。片手を離す確かめ方は避け、交通量の少ない道を選びます。
つながる現象
体と車体が受ける抗力の大半は、前後の圧力差による圧力抗力です。だから効くのは正面から見た面積と姿勢で、表面をつるつるにするより小さく丸まるほうが差が出ます。荷物の置き場所ひとつでも変わり、背中に高く積むとせっかくの低い姿勢が帳消しになります。同じ荷物なら、低い位置に付けたほうが有利です。
解説動画(海外・英語): The Cheapest Aero Upgrade For Cycling? | GCN Tech Wind Tunnel Tested/GCN Tech
実走の速さで測った風洞: 会場は自転車専用の風洞、シルバーストーン・スポーツ・エンジニアリング・ハブ。業界の空力試験はプロの速さで行われがちで自分たちの実感と合わない、という声に応え、時速25キロ・35キロ・45キロの3段階で測ります。出てくる数値は空気抵抗に打ち勝つぶんの出力で、タイヤと駆動系の摩擦がさらに1割ほど乗ります。
速さが上がると出力は跳ねる: 基準の姿勢では、時速25キロに82ワット、35キロに222ワット、45キロでは464ワットが要りました。増え方が直線でないのは、空気抵抗が速さの2乗で増え、それに打ち勝つ出力が速さの3乗で増えるからだと説明します。時速30キロでの10ワットは毎時0.8キロぶん、45キロでは同じ10ワットが0.4キロぶんです。
姿勢の差だけで75ワット: タイムトライアル用ヘルメットは、普通の姿勢だと時速45キロで41ワットの節約でしたが、頭を下げて肩を丸めた姿勢に変えると116ワットまで伸びました。姿勢の差だけで75ワット、費用はゼロです。空気の中でいちばん大きな障害物は乗り手自身だ、という結論になります。
肘は苦しくなる前に曲げる: 五輪メダリストのロブ・ヘイルズは、喉が渇いてから飲むのでは遅いのと同じで、きつくなってから肘を曲げるのでは遅いと言います。肩を内へ丸め、頭を落とす。風が最初に当たるのは頭と肩と腕で、それより後ろをいじっても効きは薄い。低い姿勢を保てる体は練習で作るもので、テイラー・フィニーやスティーブ・カミングスが例に挙がります。
1ワットいくらで買えるか: 値段を節約したワット数で割ると順位が変わります。クリップオンのトライバーをカマキリ姿勢に上げた形は1ワット38ペンス、エアロヘルメットは13ポンド、スキンスーツは6ポンド、深リムホイールは150ポンドでした。TTバイクにTTヘルメットとスキンスーツまで足すと、時速45キロの必要出力は464ワットから297ワットへ。ただしホイールは正面からの風だけの測定だと断っています。