コーヒーに落としたミルク
台所と水まわり
沈みながら輪になり、なかなか混ざらない一滴
何が起きている?
コーヒーや水にミルクを一滴落とすと、白い柱がまっすぐ沈み、下の端がめくれてドーナツ型の輪になります。輪は形を保ったまましばらく進み、やがて崩れて何本もの筋にほどけます。かき混ぜなければその筋は何分たっても消えず、落とすたびに違う形が残ります。
なぜそうなるか
落ちたミルクは前の液を押しのけて進み、押しのけられた液が横から後ろへ回るので、下の端が外へめくれて回転が付きます。回っている輪は周りの液を後ろへ送り出し、その反作用で自分は前へ進み続けます。混ざらないのは、この大きさと速さでは流れの筋がきれいに並び、分子が自力で行き来する歩みがとても遅いからです。輪がいつ崩れて乱れへ移るかは前もって当てにくいままです。
確かめ方
透明なグラスに水を入れ、スプーンの先からミルクを一滴だけ落としてください。落とす高さを指一本分と手のひら一つ分で比べると、輪の大きさと沈む深さがはっきり変わります。混ぜるときは境目を引き伸ばすつもりで動かすと早く均一になり、回す回数も減らせます。
つながる現象
輪になって進むところは渦輪そのもので、煙の輪やイルカが作る泡の輪と同じ形をしています。筋がいつまでも残るのは流れが整った側にいるからで、かき混ぜて層流と乱流の乱れた側へ押しやると一気に均一になります。混ぜるときは速さより境目の増やし方が効きます。一滴の実験は何度でもやり直せます。
解説動画(海外・英語): Rayleigh-Taylor Instability/fyfluiddynamics
アイスコーヒーが星雲に見える: コップの中の渦巻きが星雲のように見えるのはなぜか、という問いから始まる。紅茶やコーヒーにミルクを注いだときの激しく乱れる動きは、密度の違う液体を重ねたことで起きている。話し手のニコール・シャープは、この組み合わせこそレイリー・テイラー不安定の育つ場所だと言う。
上に重いほうが乗ったとき: 単純にした形で考える。2つの液体が上下に重なっていて、上が軽ければ何も起きない。入れ替えて上を重いほうにすると、軽いほうは上がり重いほうは沈み、境目の歪みが時間とともに大きくなる。これを述べたのがレイリー卿で、のちにG・I・テイラーが、軽い液を重い液のほうへ加速させても同じことが起きると見抜いた。例は水中爆発や超新星爆発のあと。
棘からキノコ、そして乱れへ: 始まりの段階には決まった形がある。境目にできた1本の指のような出っぱりが棘になり、続いてキノコの傘のような形へ育つ。その縁に並ぶ細かい渦巻きは別物で、ケルビン・ヘルムホルツ不安定という名前が付く。そこから先はあっという間に乱れた動きへ移り、何が起きているか目で追えなくなる。
コーンシロップで遅回しにする: 見えるようにするため、コーンシロップと水を混ぜた液を2つのコップに用意する。コーンシロップは水よりほんの少し重いだけなのに、粘り気はおよそ1000倍。粘りにも効き目はあるが、やっているのは主に育つ速さを下げることで、要は全体をゆっくりにする。仕切りを外すと、軽い青い液が指の形で上へ突き上げ、重い黄色い液が沈み、めくれながら混ざっていく。
ミルクが分かれて戻らない理由: 粘りの強いこの実験ではレイノルズ数が小さく保たれ、乱れた流れまで進まない。だから混ざった緑の帯は広がらずに済む。ミルクとコーヒーは粘り気がずっと小さいので、混ざるあいだに乱れた流れまで進んでしまう。だから分かれて元に戻ることがない、というのが結び。