鍋の中の対流

台所と水まわり

底から上がり縁で沈む、鍋の中のひと回り

何が起きている?

鍋を火にかけると、中の湯は底から立ちのぼって表面で外へ広がり、縁を伝って沈むという、ひと回りの道をつくります。味噌汁ならつぶが上下に運ばれていくのが見え、澄んだ汁でも湯気の下で影が動きます。かき混ぜていないのに中身は絶えず入れ替わり、沸くまでのあいだそれが続きます。

なぜそうなるか

底で温まった水は膨らんで、同じ体積あたりでは軽くなります。すると周りの冷たく重い水が下へ回り込み、押しのけられた軽い水が上へ持ち上げられます。上がるのは軽い水が自分で浮くというより、重い水が底を取りに行った結果です。上に着いた水は湯気と鍋肌へ熱を手放して重くなり、今度は縁を伝って沈みます。粘りと熱の逃げが弱い揺らぎを消すので、温度差がある程度を超えてはじめてこの回りが立ちます。

確かめ方

火を使わずに同じ向きの流れを見るなら、透明なコップに水を張り、氷をひとつ浮かべて横から眺めてください。氷の真下では冷えて重くなった水が糸のように沈み、底へ広がっていきます。加熱中の鍋はのぞき込まないでください。吹きこぼれと蒸気はやけどのもとです。

つながる現象

重い水が軽い水の上にのった状態がひっくり返る話はレイリー・テイラー不安定と地続きです。火を強めていくと整った回りはしだいに崩れ、泡と音の出方まで変わります。同じ回りは暖房を入れた部屋でも起きていて、温度差が大きいほど激しくなり、天井だけ暖かくなるのもこのためです。目印は上がる場所と下がる場所が分かれているかどうかで、鍋も部屋も動かしているのは重さの差です。

解説動画: 風はどうして起こるの?(熱による対流実験)/cat orange

鍋にコーヒーを沈めて見る: 空気も透明な水も、動いていること自体が目で追えない。そこで鍋の底にインスタントコーヒーを入れ、その上から水道水を静かに注ぐ。濃いところと薄いところができたのを見てから熱を加えると、濃い色の部分が少しずつ立ちのぼっていくのが見える。色の濃さを目印にして、流れそのものを見えるようにした実験。

温まると軽くなって上がる: 熱を受けた部分は比重が軽くなって上昇する、というのが映像で起きていること。上がった先で熱を放って冷めると、こんどは下へ戻ってくる。この上がって冷えて下りる繰り返しが対流で、鍋の中の水でも、まわりの空気でも同じことが起きている。

風の正体は空気の対流: 太陽の熱で地面が温められると、そのまわりの空気が軽くなって上昇し、上空で熱を放出して冷え、また下へ戻ってくる。動画はこの空気の対流こそが風の正体だと言い切る。風を外から吹いてくるものとしてではなく、温度差がつくった循環の一部として扱っている。

海流もマグマも同じ: 同じことが液体で起きれば海では海流になり、地下では溶岩という名の液体であるマグマが熱で対流している。動画はそこから大陸が移動する話までつなげる。地面は硬いので人間の寿命の長さでは動いて見えないが、もっと長い目で見ればかなり活発なのだという。

子どもの前ではやらない: 最後に注意が入る。実験に使ったコーヒーを、もったいないからといって子どものいる場所で扱うのはやめてほしい、というもの。子どもが科学実験の液体と気づかずに飲んでしまう事故が起こりうるので危険だ、と念を押して終わる。