味噌汁にできる模様

台所と水まわり

湯気の下でゆっくり動く、汁の表面のセル

何が起きている?

湯気の立つ味噌汁を静かに置くと、表面に網目のようなセルが浮かび、ゆっくり形を変えていきます。境目にはつぶが集まって濃い線のように見え、内側はうすい色です。かき混ぜても十数秒ほどでまた組み上がり、冷めるにつれて動きが鈍くなって、最後は消えていきます。

なぜそうなるか

表面は湯気に熱を持っていかれるので、そこの汁は重くなって沈みます。沈む場所ができれば埋め合わせに別の場所が上がるので、上がる区画と下がる区画に分かれます。さらに表面では、水分が抜けたところと抜けていないところで引き合う強さが違い、強いほうへ表面が引かれて流れが足されます。つぶは沈む流れに乗って境目へ溜まるので模様に見えます。どちらがどれだけ効くかは深さしだいで言い切れません。

確かめ方

椀を平らなところに置き、息を止めて十秒ほど表面だけを見てください。模様がゆっくり動いています。そっと息を吹きかけると一度崩れてすぐ組み直り、湯気の出方で決まっていることが分かります。皿を数センチ上にかざすと湯気の逃げ場が減り、動きは目に見えて弱まります。

つながる現象

表面の引き合う強さの差が流れをつくる話はマランゴニ効果、引き合う力そのものは表面張力です。こぼした汁を乾かすと、縁につぶが輪になって残ることがあり、同じ流れの延長として説明されています。模様が見えるのは湯気が出ているあいだだけで、冷めれば表面は静かになり、温め直すとまた現れます。つぶは流れを映す目印で、澄んだ汁では見つけにくくなります。

解説動画(海外・英語): Rayleigh–Bénard convection cells/Nick Moore (NIK282K)

流れを映す粉を混ぜる: 用意するのはシリコーンオイルと雲母の粉とホットプレート。粉そのものは対流と関係が無く、流れを見せる液体(文字どおり流れを映すという意味の言葉)に油を変えるためだけに入れる。おかげで深さ方向の動きまで目で追え、温めるにつれて粉に網目の模様=ベナールセルが浮かび上がる。

上がって広がって沈む輪: 皿の底の油が温まると軽くなって浮き、表面まで上がる。表面に着くと広がるのは、温かい油のほうが表面張力が弱いから。冷たい油はセルのふちで集まりながら、中央の温かい油を外へ引いていく。ふちに着いた油は冷えて底へ沈み、また温められる。この行って戻る輪が閉じたまま続く。

赤外線で見た温度の格子: 赤外線カメラで撮ると、温度の差がそのまま模様と重なって見える。セルの中央はふちよりずっと温かく、表面には暗い格子が浮かぶ。いったんできたセルは、温度が大きく変わらないかぎりとても安定していて、崩れずに居座り続ける。

模様が出る境目の数: 模様が出るかどうかは、単位のつかないレイリー数という数で決まる。動画の言い方では、重力と油の膨らみやすさが上、油の粘りと熱の伝わりやすさが下に来て、そこへ上下の温度差と液の深さを3回かけたものを掛ける。この数が1708に届くと不安定になり、セルが現れる。