孫子を通して読む前に知っておくこと。
最初の1冊を選ぶ前に知っておきたいのは、『孫子』が一冊の中でどんな順に並んでいるかという全体の形である。十一家注孫子の目次は十三篇を卷上・卷中・卷下の三巻に分け、卷上に計篇・作戦篇・謀攻篇・形篇の4篇、卷中に勢篇・虚実篇・軍争篇・九変篇・行軍篇の5篇、卷下に地形篇・九地篇・火攻篇・用間篇の4篇を置く。最初から十三篇を続けて読むより、この三巻の区切りを先に知っておくと、どこまで読んだかの目印になる。
卷上の4篇は、戦う前の見積もりと、勝ち方の優劣を扱う篇が続く。計篇は戦う前に何を比べて見積もるかを述べ、謀攻篇は戦わずに勝つ道を上位に置く。卷中・卷下は、軍の統率・地形・火・間者と、実際に兵を動かす場面の篇に移る。最初の1冊では、この並びを変えずに読み、篇の見出しだけでも先に目を通しておくと、後で名句だけを切り取って読むときにも、篇と段の位置をすぐ思い出せる。
『孫子』を読み終えたあとに手を伸ばしたくなるのが、同じ武経七書に数えられる他の六書だが、どの書も『孫子』と同じ確かさで書かれた作者を持つわけではない。呉子は呉起の作と題され、六篇(圖國・料敵・治兵・論將・應變・勵士)に分かれるが、作者が確かな記録で裏づけられているかは示されていない。六韜はさらに弱く、作者欄は佚名で、太公望の作と伝える旧題に、その根拠は分からないという疑いが付されている。最初の1冊を『孫子』に決めるのは、十三篇という範囲の分かりやすさだけでなく、作者と成立の確かさが、この七書の中でも相対的に高いという理由もある。
十三篇の並びを知らずに名句だけを拾い読みすると、句の出どころを後から確かめられなくなるのが、最初に起きやすい失敗である。読み始める前に、卷上・卷中・卷下の4・5・4という区切りと、各篇の名前だけを先に書き出しておく。同じ七書に数えられる司馬法・三略・尉繚子・李衛公問対も、作者か成立かのどちらかが確かめ切れない書で、まとめ買いした全七書を同じ確かさで読んでしまう失敗につながる。
出典
- 資料・中国語 維基文庫(曹操ほか十一家注) 十一家注孫子(目次)
- 資料・中国語 維基文庫 呉子(維基文庫)
- 資料・中国語 維基文庫 六韜(維基文庫)



















