地形篇
十三篇
篇: 下巻 第十
地形篇は、六種の地形と、負ける原因は将の過ちにあると説く篇。
原文と書き下し
「我可以往、彼可以來、曰通」(我以て往くべく、彼以て来たるべきを、通と曰う)。「可以往、難以返、曰掛」(以て往くべく、以て返り難きを、掛と曰う)。「凡此六者、非天之災、將之過也」(凡そ此の六者は、天の災いに非ず、将の過ちなり)。「知彼知己、勝乃不殆;知天知地、勝乃不窮」(彼を知り己を知れば、勝乃ち殆うからず。天を知り地を知れば、勝乃ち窮まらず)。
原文の意味
原文は、地形を通・掛・支・隘・険・遠の六つに分ける。通は先に高所の日向に居て糧道を利すれば戦って有利、掛は往けるが返りにくい地、支はどちらが出ても不利な地、遠は勢いが等しければ挑みにくく戦えば不利だと言う。兵の敗れ方も走・弛・陥・崩・乱・北の六つに分ける。卒が強く吏が弱ければ弛、吏が強く卒が弱ければ陥とし、どれも天の災いではなく将の過ちだと述べる。
篇の中での流れ
十三篇の第十で、行軍篇の次、九地篇の前にある。六つの地形と六つの敗因のあと、「夫地形者、兵之助也」から君命と将の心得、兵を子のように見る話へ進む。続く三つの句は、味方の兵・敵・地形のどれかを知らなければ勝ちは半ばだと言い、「知彼知己」の結びへ至る。神藤猛(2025)は形篇と地形篇を、軍争篇を中心とする対称の配置から読む。
注釈で読みが割れるところ
「崩」で怒るのが小将か将かは注で割れる。曹操は「大吏」を小将と注し、梅堯臣は「小將心怒而不服」、張預は小将が大将の令に服さないと読む。李筌は将が敵に怒らされて強弱を量らないとし、王晳は将が理に合わず怒ると読む。賈林は「自上墮下曰崩」と注し、杜牧は春秋の故事を引く。「弛」は曹操が「吏不能統」と注し、杜牧は卒伍の豪強と将帥の懦弱を挙げる。
よくある言い換えとのずれ
「知彼知己」は、謀攻篇では「知彼知己者、百戰不殆」で、この篇では「勝乃不殆」に「知天知地」が続く。結びの句は十一家注の頁が「勝乃不窮」、通行本の頁が「勝乃可全」と書く。Eudaimonia(YouTube)は地形を現代の経済環境にも当てはめ、自分・相手・環境を知る話とまとめる。原文の三つ目の「勝之半也」が言うのは、地形が戦うに向かないと知らない場合である。
解説動画(海外・英語): 10 Terrain | The Art of War by Sun Tzu (Animated)/Eudaimonia
地形を経済環境に言い換える: 英訳を読み上げつつ、冒頭で地形を「現代では経済環境も指す」と言い換え、末尾は「知彼知己、知天知地」を「自分・相手・環境を知れ」とまとめる。