十一家注孫子

成り立ちと読まれ方

篇: 『十一家注孫子』

十一家注孫子は、曹操から宋代までの注を、孫子の一句ごとに並べて載せる本。読みが割れるところを探す資料になる。

原文と書き下し

維基文庫の十一家注孫子のページの前書きは、「《隋書‧經籍志》所載、自曹操外、有王凌、張子尚…」(『隋書』経籍志に載る注は、曹操のほかに王凌・張子尚らがある)と、注釈者の名を挙げる。

原文の意味

『十一家注孫子』は、孫子の本文を一句ずつ区切り、その下に十一人の注釈者の注を並べる形の本で、曹操・孟氏・李筌・賈林・杜佑・杜牧・陳皥・王晳・何氏・梅堯臣・張預の注が載る。注は句ごとに付いているものと付いていないものがあり、全員がすべての句に注を付けているわけではない。

篇の中での流れ

注の性格は注釈者ごとに違う。開いた範囲では、曹操の注は短く、例えば「兵貴勝、不貴久」には「兵は猶お火のごとし」と言う趣旨で書く。杜牧・張預・何氏は史実の例を引くことが多く、梅堯臣は短く言い換える。

注釈で読みが割れるところ

同じ句でも注どうしで読みが割れる例が多い。計篇の「先ず伝うべからず」は、状況しだいで前もっては言えないという読みと、秘して漏らさないという読みがあり、謀攻篇の「敵すれば則ち能く之と戦う」は、伏兵など奇を用いて戦うと読む注と、将の智の優劣に結ぶ注がある。なお、維基文庫は有志の翻刻で、字が他の本文と違うことがある(地形篇の「唯人是保」など)。

よくある言い換えとのずれ

『孫子』の一句には昔から決まった読みがあった、あるいは注の中に正解がある、という扱いをされることがあるが、十一家注は一句をめぐって複数の読みを並べる本で、どれか一つに定めるための本ではない。