形篇
十三篇
篇: 上巻 第四
形篇は、勝てる条件を先に整えてから戦えと説く、態勢についての篇。
原文と書き下し
「昔之善戰者、先為不可勝、以待敵之可勝」(昔の善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ)。「不可勝在己、可勝在敵」(勝つべからざるは己に在り、勝つべきは敵に在り)。「勝兵先勝而後求戰、敗兵先戰而後求勝」(勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む)。
原文の意味
原文は、昔の善く戦う者はまず負けない態勢を己の側で整え、敵に勝てる隙が出るのを待った、と始める。負けない備えは己次第だが、勝てるかどうかは敵の隙次第なので、「勝は知るべくして、為すべからず」と述べる。善く守る者は「九地の下」に隠れ、攻める者は「九天の上」に動くと喩え、勝つ軍は重い鎰で軽い銖を量るようだと言う。終わりでは、勝者の戦いを、溜めた水を千仞の谷へ切って落とすさまに喩え、それを形と呼ぶ。
篇の中での流れ
謀攻篇に続く第四篇。冒頭は先に負けない態勢を作る話で、守りと攻めの説明が続く。次に、衆人にも分かる勝ちを見るだけでは「善の善」でないと述べ、「無智名、無勇功」を経て、「不敗の地に立つ」「勝兵は先ず勝つ」に至る。後半は、地から度・量・数・称・勝が生じる順、鎰と銖の比、千仞の谷の水で終わる。篇名は、十一家注本の頁が「形」、通行本の頁が「軍形」、竹簡本が「刑」と書く。
注釈で読みが割れるところ
篇名の「形」は、曹操が互いに情を探り合う関係、李筌が主客・攻守・八陣などの形と注す。十一家注本の「守則不足、攻則有餘」を、竹簡本は「守則有餘、攻則不足」と逆に作る。漢書の趙充国伝は兵法の句として「攻不足者守有餘」を引き、後漢書の皇甫嵩は「彼守不足、我攻有餘」と言う。曹操は、守るのは力が足りないから、攻めるのは余りがあるからと注す。熊征(2019)は、竹簡本のほうが孫武の意に近く、十一家注本は守りを否定的に扱うと論じる。
よくある言い換えとのずれ
「先ず勝つべからざるを為す」を「まず守りを固めよ」と縮めると、「敵の勝つべきを待つ」後半が落ちる。浸透襲撃第二チャンネルは、この篇を「勝てる時だけ戦え」「戦いは始まった時点で勝負が決まっている」など3点に要約し、受験や就職にも通じると広げる。原文は同じ篇で「勝は知るべくして、為すべからず」と言い、負けない備えは己の側で作れても、勝てるかどうかは敵の隙次第だとする。
解説動画: 【ゆっくり解説】孫子十三篇(軍形篇第四)/浸透襲撃第二チャンネル
篇を3点にまとめる: 軍形篇を「勝てる時だけ戦え」「理想的な戦いは地味」「戦いは始まった時点で勝負が決まっている」の3点に要約し、原文の「不可勝在己、可勝在敵」を、負けない状況は自分で作れるが勝てる状況は敵の隙次第だと説明する。