火攻篇
十三篇
篇: 下巻 第十二
火攻篇は、火を使う攻めの種類と、感情で戦を起こすなと説く篇。
原文と書き下し
「凡火攻有五、一曰火人、二曰火積、三曰火輜、四曰火庫、五曰火隊」(凡そ火攻に五あり、一に曰く火人、二に曰く火積、三に曰く火輜、四に曰く火庫、五に曰く火隊)。「主不可以怒而興師、將不可以慍而致戰」(主は怒りを以て師を興すべからず、将は慍りを以て戦いを致すべからず)。「亡國不可以復存、死者不可以復生」(亡国は復た存すべからず、死者は復た生くべからず)。
原文の意味
原文は、火攻めを人・蓄え・輜重・倉庫・隊の五つに分け、火を放つには時と日があると言う。時は天が乾くとき、日は月が箕・壁・翼・軫の宿にある日で、この四宿は風の起こる日だとする。火が敵陣の内に起きれば早く外から応じ、火が起きても兵が静かなら待って攻めないと述べる。君主も将も怒りや慍りで軍を起こし戦ってはならず、利に合えば動き、合わなければ止まるとする。怒りは喜びに戻れても、亡んだ国と死者は戻らないと述べる。
篇の中での流れ
十三篇の第十二で、九地篇の次、用間篇の前にある。五種の火攻めと、火を放つ時と日の話から、火が起きたときの動き方、水を使う攻めとの違い、戦に勝ったあとに功を修める話へ進み、「非利不動、非得不用、非危不戰」から怒りを戒める段に至る。神藤猛(2023)は作戦篇と火攻篇を結び付けて読む。中国社会科学報(2018)で黄朴民は、竹簡本は計篇に始まり火攻篇に終わると述べる。
注釈で読みが割れるところ
「不修其功者凶、命曰費留」の「修其功」は注で割れる。李筌・杜牧・王晳・張預は、功のある者に賞を与えることと読み、賞さなければ費えが出ると注す。梅堯臣は、火攻や水攻を修めて功を作ることと読み、「坐守其利者、凶也」と言う。賈林は「費留、惜費也」と注し、費えを惜しむことと読む。曹操は「若水之留、不復還也」に、賞が時を逸する説を添える。
よくある言い換えとのずれ
「怒可以復喜」以下は、原文では「合於利而動、不合於利而止」の直後に置かれる。くぼ店長の仕事術(YouTube)は篇を「一時の感情に任せて怒ってしまうと一生の信頼を失う」とまとめるが、原文が戻らないと言うのは亡国と死者で、信頼には触れない。王晳は「喜怒無常、則威信去矣」と注し、杜牧は亡国を、怒りで兵を起こした側の自滅と注す。
解説動画: 孫子の兵法⑬~火攻篇~最終回 一時の感情に任せて怒ってしまうと一生の信頼を失う 世界最高の人間関係戦略書について解説/くぼ店長の仕事術
五種の火攻めと結びの言い換え: 五種の火攻めと火を放つ時・日の話を仕事の場面に当てはめて語り、篇の結びを「一時の感情に任せて怒ってしまうと一生の信頼を失う」とまとめる。