九変篇
十三篇
篇: 中巻 第八
九変篇は、あえてしない選択と、将に備わる五つの危うさを説く篇。
原文と書き下し
「塗有所不由、軍有所不擊、城有所不攻、地有所不爭、君命有所不受」(塗に由らざる所あり、軍に撃たざる所あり、城に攻めざる所あり、地に争わざる所あり、君命に受けざる所あり)。「智者之慮、必雜於利害」(智者の慮は、必ず利害を雑う)。「將有五危」(将に五危あり)。「凡此五者、將之過也、用兵之災也」(凡そ此の五者は、将の過ちなり、用兵の災いなり)。
原文の意味
原文は、君命を受けた将が圮地に宿営せず、衢地で交わりを結び、絶地に留まらず、囲地で謀り、死地で戦うと述べる。続けて由らぬ道・撃たぬ軍・攻めぬ城・争わぬ地・受けぬ君命を並べ、九変に通じた将は用兵を知ると言う。智者は利と害を併せて考えるとし、終わりに、必死は殺され、必生は虜にされ、忿速は侮られ、廉潔は辱められ、愛民は煩わされると五危を挙げる。
篇の中での流れ
十三篇の第八で、軍争篇の次、行軍篇の前にある。「將受命於君」の冒頭のあと、五つの地の句、五つの「不」の句、九変に通じる将、智者の利害、諸侯を屈し役し趨らせる害・業・利、備えを頼む話が続き、「軍を覆し将を殺すは必ず五危を以てす。察せざるべからず」と結ぶ。火攻篇の結びにも、将の怒りを戒める「將不可以慍而致戰」がある。十一家注の頁は「塗有所不由」「衢地交合」、通行本の頁は「途有所不由」「衢地合交」と書く。
注釈で読みが割れるところ
「九変」が何を指すかは注で割れる。曹操は篇の冒頭に「變其正、得其所用九也」、王晳は「九者、數之極」と注す。李筌は「謂上之九事也」と言い、賈林は「九變、上九事」に続けて「變之則九、數之則十」と書く。何氏は、圮地無舍から君命有所不受までを数えると十になり、君命は地の事ではないと述べる。張預は、九変の利に通じる者を「更變常道而得其利者」と注す。
よくある言い換えとのずれ
「君命に受けざる所あり」は、現場の判断が上の指示に優先するという意味で語られることがある。浸透襲撃第二チャンネルは、現場の責任者に大きな権限を与える話として語り、君命を無視してよいのは戦の遂行のために限られると付け加える。原文は「受けざる所あり」と言い、常にとは書かない。曹操は「苟便於事、不拘於君命也」と注す。史記の穰苴伝には「將在軍、君令有所不受」が穰苴の言葉として出る。
解説動画: 【ゆっくり解説】孫子十三篇(九変篇第八)/浸透襲撃第二チャンネル
篇を3点にまとめ、君命の句を語る: 九変篇を「やることだけでなくやらないことも重要」「利益と損失は公平に考慮せよ」「悪いことは起こる前提で行動せよ」の3点にまとめる。君命の句を、現場の責任者に大きな権限を与える話とし、その中に主君の命令を無視してよい場合も含まれると語るが、悪用されれば大変なことになり、無視してよいのは戦の遂行のために限られると付け加える。五危は「解釈の幅が結構ある」と断って読む。