攻略 | オトモストラテジー

句の前後を読み、何について言っているかをつかむ。

句の前後を読むときは、まず句のある篇と位置を確かめ、直前の一文と直後の一文を原文で読む。位置を確かめずに言い換えだけで覚えると、篇全体の論の中では違う意味になっている句を、そのまま受け取ってしまう。

勢篇の亂生於治、怯生於勇、弱生於彊はその例になる。句だけを読むと、治めていても乱れが生じ、勇ましさも怯えに転じ、強さも弱さに転じるという、物事が崩れていく一般論に見える。篇の中の位置を確かめると、違う話だと分かる。句の直前は「紛紛紜紜,鬬亂而不可亂也;渾渾沌沌,形圓而不可敗也」で、旗や太鼓で統制された陣が、乱れて見えても実際には崩れないさまを述べる。句とその直後は「亂生於治,怯生於勇,弱生於強。治亂,數也;勇怯,勢也;強弱,形也」で、乱・怯・弱のそれぞれを、数(部隊の編制)・勢・形という語に結びつける(通行本の字は「強」「衆」)。

勢篇
勢篇絵: オトモシリーズ

勢篇の本文は「孫子曰:凡治衆如治寡,分數是也」で始まり、統率の巧みさを「数(部隊の編制)」という語で示す。注釈者の張預は、句のあとの一文をこの冒頭の「分數」と結びつけて読む。賈林・梅堯臣は、治めを恃みにすると乱が生じ、勇や強を恃みにすると怯みや弱さが生じる、と読む。李筌は秦の滅亡と夫差の滅亡を、治から乱へ、勇から怯へ転じた例として挙げる。注釈者の挙げる例は分かれるが、治眾如治寡、分數是也で示した編制を保ったまま、わざと乱れて見せて敵を誘う、という読みで揃う。物事が自然に崩れるという一般論ではなく、整った軍だから乱れを装える、という篇の冒頭と結びついた話になる。

この確かめ方は、句の直前と直後だけで終わらせない。句に出てくる語が篇のどこで先に使われているかも見る。先に使われた場所へ戻ると、句が篇のはじめの論をどう受けているかが分かる。注釈者の読みが複数あるときは、挙げている例や結びつけている語を書き出し、揃っている部分とずれている部分を分けて控える。句だけを抜き出した言い換えと、篇の中の位置を確かめた読みが食い違うときは、位置を確かめた側を残す。

出典

  1. 資料・中国語 維基文庫(曹操ほか十一家注) 十一家注孫子 勢篇
  2. 資料・中国語 維基文庫 孫子兵法(通行本、兵勢第五)