湯の見た目とにおい図鑑

無色澄明(色とにごり)

無色澄明は、見た目を記録した言葉です。分析書の知覚的試験の欄に並ぶ語で、溶けている量の多い少ないを言っているのではありません。分析書の知覚的試験の欄で、いちばん多く並ぶ言い方です。鉱泉分析法指針(平成26年改訂)5-1は、試料50mLを無色平底の比色管にとり、白紙または黒紙の上に置いて上から透かして見る手順を示します。…

乳白色のにごり(色とにごり)

白さは、溶けた量ではなく粒の仕業です。光を散らす細かい粒が湯の中にでき、向こう側が見えなくなった状態を、分析書は清濁の欄に書き取ります。湯船の底が見えなくなり、湯が白く曇って見えます。湧出地では澄んでいた湯が、浴槽に着くころには白くなっていることもあります。指針5-1の清濁の語では蛋白石濁がこれに当たり…

青みを帯びた湯(色とにごり)

青は、粒が光を散らして生まれます。水そのものの色ではなく、湯に浮いた細かい粒が短い波長を強く散らすため、深いところほど青が濃く見えます。湯船に張った湯が、乳青色や淡い青みを帯びて見えます。手のひらにすくうと色は消え、湯そのものは透明に見えます。目に届く青は、光が湯の中を通った距離のぶんだけ積み上がった散乱光だからで…

緑色の湯(色とにごり)

緑は、黄色と青が重なった色です。溶けた成分が出す黄色と、粒が光を散らして生む青が同じ湯に共存すると、目には緑として届きます。エメラルドや若草に近い緑に見え、深いところほど濃くなります。同じ湯でも白い湯船と黒い石の湯船では見え方が変わり、底からの反射が加わると緑は濃く映ります。…

赤褐色のにごり(色とにごり)

赤褐色は、鉄がさびていく途中の色です。湧出直後は澄んでいた湯が、空気に触れるにつれて色づき、やがて細かい濁りになって沈みます。湯口では澄んでいた湯が、浴槽の端では赤茶色やべっこう色に見えます。時間がたつと沈析物が底にたまり、鉄の赤い付着として湯口や縁に残ります。…

黒褐色の湯(色とにごり)

黒褐色の湯は、濁らずに色だけが濃くなります。植物起源の腐植物質が溶けているためで、粒が浮いて光を散らす濁りとは分析書の欄が違います。紅茶やコーヒーに近い褐色で、深いところでは黒く見えます。手のひらにすくうと薄い黄褐色に戻り、底まで見通せるのに湯船では黒い、という見え方をします。指針5-1の書き方でいえば…

よう素の黄ばみ(色とにごり)

よう素の黄ばみは、置いた時間が作る色です。汲みたてはほとんど無色でも、空気に触れた時間の分だけ、湯は黄褐色の側へ寄っていきます。淡い黄褐色で、澄明のまま色だけが乗ります。濁らないので底まで見通せ、赤褐色のにごりのように沈析物が出ることもありません。塩気の強い湯であることが多く、指針の分析書記載例でも…

泥のにごり(色とにごり)

泥のにごりは、溶けていない粒の濁りです。粘土などの細かい粒が舞っている状態で、静かに置くと底に沈み、上澄みは澄んでいきます。灰色や褐色に濁り、湯を揺らすと舞い上がって、静かにしていると底にたまります。すくった手にざらつきが残ることもあります。指針5-1は清濁の程度のほかに沈析物の有無や形状も記録させるので…

硫化水素臭(におい)

硫黄そのものは、常温ではにおいません。浴室で鼻に届くのは硫化水素というガスのにおいで、分析書の臭いの欄にはその名前が書かれます。「卵の腐ったようなにおい」と言い表されるにおいです。分析書では知覚的試験の欄に臭いの種類が語で書かれ、鉱泉分析法指針(平成26年改訂)5-2 が挙げる例のひとつがこの語です。湯船に近づく前…

亜硫酸臭(におい)

つんと鼻を刺す方のにおいです。卵の腐ったにおいとは別の語として、鉱泉分析法指針は分析書の臭いの欄に書き分けさせています。鼻の奥を刺すような、とがったにおいです。マッチをすった直後の煙に近く、硫化水素臭の卵に似た重さとは感じ方が違います。分析書では臭いの欄に「亜硫酸臭」と書かれ…

よう素臭(におい)

薬品を思わせる、乾いたにおいです。指針の分析書記載例には「強塩味でよう素臭を有する(試料採取後24時間)」という一行が載っています。消毒薬に似た、乾いて鋭いにおいです。硫黄のにおいのような重さがなく、鼻に残る時間は短めだと書かれます。…

石油臭(におい)

現場では「アブラ臭」と呼ばれるにおいです。灯油や機械油を思わせる重さがあり、指針は臭いの種類の例のひとつに石油臭を挙げています。灯油やアスファルトを思わせる、重く尾を引くにおいです。硫黄のにおいのようにつんと来ることはなく、湯から上がった後も髪やタオルに残ることがあります。分析書では臭いの欄に「石油臭」と書かれ…

泥炭臭(におい)

枯れ草や湿った土を思わせるにおいです。指針の臭いの欄には「土臭」「腐臭」も並んでいて、泥炭臭はその隣に置かれた語です。雨のあとの土や、湿った枯れ草を思わせるにおいです。刺激はなく、湯に入ってしばらくたってから気づくくらいの弱さで書かれることが多くなります。分析書では臭いの欄に「泥炭臭」と記され…

鉄のにおい(におい)

鉄そのものは、常温ではにおいません。金属をさわった後に立つにおいは、皮膚の脂質が鉄イオンで分解されてできる物質のにおいだと報告されています。血や古い硬貨を思わせる、金属的なにおいです。分析書には「金気臭」「鉄臭」と書かれることがありますが、指針5-2 が挙げる臭いの例の中には入っていません。湯に鼻を近づけたときより…

ぬるぬる感(肌ざわりと泡)

湯の中で肌が滑らかに感じられることがあります。この感じ方は pH だけでは説明が付かず、成分の組み合わせから読む試みが続いています。湯に入ると、肌の上を湯が滑るように感じられることがあります。手のひらをこすり合わせたときの抵抗が減り、石けんを流し残したような感じ方だと言い表されます。…

きしむ肌ざわり(肌ざわりと泡)

肌がきゅっと引っかかるように感じる湯があります。ぬるぬる感と裏表の関係で、判別の式ではカルシウムとマグネシウムの多い側に当たります。湯の中で手足をこすると、きゅっと引っかかるような感じ方になります。指の腹が滑らず、上がった後に肌が突っ張るように感じられることもあります。ぬるぬる感と反対側の言い方で…

肌につく泡(肌ざわりと泡)

泡は、溶けきれなくなった二酸化炭素です。地下で溶けこんでいた分が、体や浴槽の面を核にして、そこで気体に戻ります。湯に入ってしばらくすると、腕や脚に粟粒ほどの細かい泡がびっしり付きます。指でなでるとすぐに離れて浮き上がり、じっとしていると数分でまた同じ面に付き直します。泡は体だけでなく浴槽の壁や底…

ぴりぴりする刺激(肌ざわりと泡)

ぴりぴりは、水素イオンの多さの合図です。分析書のpHの欄の数字が小さいほど強く出て、湯の温度による熱さとは別の感じ方になります。肌に触れた瞬間ではなく、少し浸かってからちりちりと刺すように感じられます。強い湯では目に入るとしみ、口に含むと酸味があります。ひげそりのあとや小さな傷では、ほかの場所より先に感じ取れます。…

湯の花(湯口と浴槽につくもの)

湯の花は、一つの名前で別のものを指します。硫黄が主のもの、硫酸塩の結晶、炭酸カルシウムのものがあり、成り立ちも手ざわりも違います。湯の中に、白や灰色をした薄い片や粉が漂います。すくうと指に残り、静かにしておくと底にたまるものと、いつまでも浮いているものがあります。色は白・灰色・淡い黄から赤みを帯びたものまであり…

湯口の石灰華(湯口と浴槽につくもの)

湯口が、少しずつ石に埋もれていきます。二酸化炭素が抜けたぶんだけ炭酸カルシウムが溶けていられなくなり、湯の通り道に沈んで盛り上がります。湯の出口や樋の表面が、白から淡い褐色のこぶに覆われて盛り上がります。手で触れるとざらついて硬く、爪では削れません。湯の落ちる筋に沿って段や棚の形に育ち…

湯口の珪華(湯口と浴槽につくもの)

珪華は、酸をかけても泡を立てません。メタけい酸が冷えて溶けきれなくなり、ガラスに似た硬い層として湯口に残ったものです。灰白色でつやのある硬い層が、湯口や樋の面を覆います。薄い膜のうちは湯垢のようにも見えますが、育つとガラスに似た手ざわりになり、爪も金属も跳ね返します。見分けは酸をかけたときの様子です。…

鉄の赤い付着(湯口と浴槽につくもの)

赤いのは、湧いてから酸化した鉄です。溶けていたときは色が薄く、空気に触れて水酸化物に変わったぶんが、湯の当たる面に付きます。湯口の下や樋の内側、浴槽の底が赤茶からオレンジ色の膜に覆われます。指でこすると柔らかく崩れ、指先に色が残ります。乾いた場所では粉になり、濡れているところではぬめりのある層になります。同じ原因でも…