乳白色のにごり
色とにごり
白さは、溶けた量ではなく粒の仕業です。光を散らす細かい粒が湯の中にでき、向こう側が見えなくなった状態を、分析書は清濁の欄に書き取ります。
どう見えるか・どう感じるか
湯船の底が見えなくなり、湯が白く曇って見えます。湧出地では澄んでいた湯が、浴槽に着くころには白くなっていることもあります。指針5-1の清濁の語では蛋白石濁がこれに当たり、澄明と微混濁の間に置かれます。すくうと粒までは見えず、白さは粒の一つずつではなく、散らされた光の集まりとして目に届きます。
何がそうさせているか
光を散らすコロイドの粒が湯の中にあるためです。指針の第7章の冒頭は、硫黄泉のように総硫黄の多い温泉では、空気酸化に伴い試料採取後の容器の中で硫化水素・硫化水素イオン・ポリチオン酸から硫酸イオンが生成されると述べています。その途中に現れる細かい硫黄の粒が光を散らす、という筋道で白濁は説明されます。
出やすい泉質
硫黄泉が代表で、療養泉の限界値は総硫黄2mg/kgです(指針第1-3表)。硫黄が遊離硫化水素の形で主に含まれるものには硫化水素型と付記され、硫化水素臭を伴うことが多くなります。白さの出どころは硫黄だけではなく、炭酸カルシウムの微粒子でも湯は白く見え、その粒は湯口で石灰華に育ちます。
時間と空気でどう変わるか
空気に触れるほど進みます。指針は硫酸イオンの測定を開封後すぐに行う必要があるとし、空気酸化の影響を受けやすい項目を測り直すときは未開封の試料を用いるべきだと書いています。浴槽の湯は空気に触れる面が広いので、採取容器の中と同じ向きの変化が進み、汲みたてと湯船では見え方がずれます。同じ湯船でも湯口の近くは澄み、離れた縁ほど白いことがあり、硫化水素臭が薄れる向きと白さの増す向きは重なります。
どこまで確かめられているか
白濁が起きた事例そのものは報告されています。温泉科学61巻には、2011年の地震のあとに湯が白濁した例の報告があります(佐々木 2012、306-309)。ただし分析書に残るのは清濁の語と経過時間だけで、粒の大きさや量までは書かれません。粒の正体を分けるには、泥のにごりのようにろ過や沈殿の様子から見ることになります。