赤褐色のにごり
色とにごり
赤褐色は、鉄がさびていく途中の色です。湧出直後は澄んでいた湯が、空気に触れるにつれて色づき、やがて細かい濁りになって沈みます。
どう見えるか・どう感じるか
湯口では澄んでいた湯が、浴槽の端では赤茶色やべっこう色に見えます。時間がたつと沈析物が底にたまり、鉄の赤い付着として湯口や縁に残ります。指針5-1は色調と清濁のほかに沈析物の有無や形状も記録するよう求めていて、鉄の湯ではこの欄が動きます。湯口の真下より、広がって空気に触れた先のほうが濃く、同じ浴槽に濃淡の並びができます。白い手ぬぐいを浸すと色が移り、洗っても抜けにくいのはこの粒のためです。
何がそうさせているか
湧出直後の鉄イオンはほとんどが鉄(Ⅱ)で、空気に触れると鉄(Ⅲ)が増え、水に溶けにくい水酸化物になって濁ります。指針の第1章の注記は、酸性の温泉水で長時間空気に触れると空気酸化に応じてFe3+が増加するとし、「浴槽では,総鉄イオンの半分以上がFe3+となることもある」と書いています。
出やすい泉質
含鉄泉です。療養泉の限界値は総鉄イオン20mg/kgで、鉄(Ⅱ)と鉄(Ⅲ)の合計で見ます(指針第1-3表)。溶存物質が1000mg/kg未満なら単純鉄温泉と呼ばれ、酸性泉と重なる湯もあります。分析書では二つの鉄が別の行に並ぶので、湧出地でどちらが多かったかが読めます。温泉法別表の側は鉄の値がもう一段低いので、泉質名に鉄が出ない湯でも浴槽の端だけが色づくことがあります。
時間と空気でどう変わるか
色は時間とともに濃くなり、やがて濁って沈みます。指針は、現地で鉄による着色が認められる場合はろ紙5種A〜Cでろ過したのちに塩酸を加えて測ると定めていて、これは浮いている粒を鉄の量に数えないための手順です。浴槽の赤い色と分析書の数字が別のものだという線は、ここに引かれています。速さは液性にもより、酸性の湯では鉄(Ⅱ)のまま長くとどまり、中性から弱アルカリ性の側では早く進みます。
どこまで確かめられているか
浴槽で鉄の姿が変わることは、指針の注記に半分以上がFe3+になることもあると明記されています。他方、色の濃さから鉄の量を読む方法は示されていません。微生物が濃縮したフロックや底の沈殿が試料に混じると見かけの鉄が多く出ることも同じ注記にあり、色と数字は別々に扱われます。目の前の赤みが湯の鉄か配管から出たさびかも色では分かれず、分析終了年月日の時点で測られた量とは切り離して見ることになります。