泥炭臭
におい
枯れ草や湿った土を思わせるにおいです。指針の臭いの欄には「土臭」「腐臭」も並んでいて、泥炭臭はその隣に置かれた語です。
どう見えるか・どう感じるか
雨のあとの土や、湿った枯れ草を思わせるにおいです。刺激はなく、湯に入ってしばらくたってから気づくくらいの弱さで書かれることが多くなります。分析書では臭いの欄に「泥炭臭」と記され、指針5-2 が挙げる語では隣に「土臭」「腐臭」が並びます。どの語を選ぶかは分析した人の判断ですので、似た湯でも書きぶりが変わります。石油臭と取り違えられますが、指針は別の語として置いています。
何がそうさせているか
湯に腐植物質が溶けているためです。植物が完全には分解されずに残った泥炭の層を、地下水が通り抜けるときに溶け出します。腐植物質はフミン酸などをまとめた呼び名で、色とにおいを一緒に持ち込みます。黒褐色の湯と出どころが同じなのはこのためで、色の濃い湯ほど臭いの語も強く書かれがちです。目と鼻が同じ成分を追っている状態になります。
出やすい泉質
泉質名ではなく、フミン酸を含む湯という地質の側から出てきます。掲示は単純温泉や炭酸水素塩泉になることが多く、泉質名からは読み取れません。温度の低い湯に多いので冷鉱泉として汲み上げられ、加温して使われることもあります。泥炭層の発達した平野や湿原のふちで記録され、火山とは関係のない湯に現れます。掲示の泉質欄より、土地の成り立ちの側を見るにおいです。
時間と空気でどう変わるか
腐植物質は空気に触れてもすぐには壊れないため、においは比較的長く残ります。ただし浴槽水の消毒で塩素剤を使うと反応が起き、においの質そのものが変わることがあります。温めれば揮発は進み、露天風呂のように空気へ開いた浴槽では、湯気と一緒に立ちのぼる分だけ強く感じられます。塩素剤との取り合わせは掲示から読めないので、語と浴槽の印象は離れやすくなります。
どこまで確かめられているか
量として測る手立ては用意されています。指針7-34 は「腐植質の定量」の手順を置き、分析書のその他の微量成分の欄に数値として書ける形にしています。高野らは温泉科学68巻(2019)で腐植物質を含む温泉を調べました。数値とにおいの強さを結ぶ式はなく、語と数値は別々に残ります。かび臭のように指針が別の語を置いている近いにおいもあり、語の選び分けは人の手に残されています。