鉄の赤い付着

湯口と浴槽につくもの

赤いのは、湧いてから酸化した鉄です。溶けていたときは色が薄く、空気に触れて水酸化物に変わったぶんが、湯の当たる面に付きます。

どう見えるか・どう感じるか

湯口の下や樋の内側、浴槽の底が赤茶からオレンジ色の膜に覆われます。指でこすると柔らかく崩れ、指先に色が残ります。乾いた場所では粉になり、濡れているところではぬめりのある層になります。同じ原因でも、湯の中に浮いて濁って見えるものは赤褐色のにごりで扱い、ここでは面に固着したほうを指します。白いタオルが触れると色が移り、洗っても落ちにくく残ります。

何がそうさせているか

地下では酸素が少なく、鉄は2価の鉄イオンとして溶けています。湧き出して空気に触れると3価へ酸化し、水に溶けない水酸化物に変わって面に付きます。指針は「浴槽では,総鉄イオンの半分以上がFe3+となることもある」と書いており、湧出地と採水地で測った姿と浴槽の姿が別のものになることを前提にしています。面に付いた層には、鉄を酸化する微生物が関わることもあります。

出やすい泉質

掲示用泉質名では含鉄泉がこれに当たり、療養泉の限界値は総鉄イオン、つまり2価と3価を合わせて1kg中20mg以上です(指針第1-3表)。温泉法別表の側は10mg以上と一段低く、泉質名の付かない湯でも湯口のまわりだけは赤くなります。二酸化炭素を多く含む湯は鉄を溶かしこみやすいため、二酸化炭素泉と並んで掲示されることがあります。鉄のにおいも同じ成分から来ています。

時間と空気でどう変わるか

色は、湧いてから経った時間に沿って濃くなります。汲みたてはほとんど色がなく、先へ行くほど赤みが増し、湯口・浴槽・排水の樋の順に厚い膜が残ります。酸化の速さはpHにもより、酸性の湯では2価のまま長くとどまり、中性から弱アルカリ性の側では速く進みます。分析書に載るのは湧出地で測った量で、分析終了年月日の時点の姿です。浴槽で見ているのは、そこから変わったあとの鉄になります。

どこまで確かめられているか

湧出地と浴槽とで鉄の姿が変わることは、指針が明記しています。採水についても指針は、微生物が濃縮したフロックを一緒に採ってしまう例に触れ、鉄の測定値がその影響を受け得ることを注意しています。分かれていないのは、目の前の赤い層が湯の鉄か配管そのもののさびかで、色だけでは決められません。分析書の量は十年ごとの再分析で改まる数字で、湯の鉄であればそこに載っているはずの成分です。