湯口の珪華
湯口と浴槽につくもの
珪華は、酸をかけても泡を立てません。メタけい酸が冷えて溶けきれなくなり、ガラスに似た硬い層として湯口に残ったものです。
どう見えるか・どう感じるか
灰白色でつやのある硬い層が、湯口や樋の面を覆います。薄い膜のうちは湯垢のようにも見えますが、育つとガラスに似た手ざわりになり、爪も金属も跳ね返します。見分けは酸をかけたときの様子です。湯口の石灰華が泡を立てて溶けるのに対し、こちらは泡も立てずに溶け残ります。色は白から淡い灰色までで、硫黄や鉄が重なると後から色が付きます。同じ湯口に、両方が重なって付いていることもあります。
何がそうさせているか
けい酸は、温度が高いほど水に溶けます。地熱貯留層のような熱い場所でたっぷり溶けこんだけい酸は、地上で冷えると溶けていられる量を超え、余ったぶんが面に残ります。付いたけい酸どうしは互いにつながって網の目になり、結晶を作らないまま非晶質のガラス質として固まります。石灰華のように気体が抜けて起きるのではなく、温度が下がることと、水が減ることが引き金になる点が違います。
出やすい泉質
泉質名ではなく、分析書のメタけい酸の欄が出やすさを決めます。温泉法別表はメタけい酸1kg中50mg以上を温泉と認める条件の一つに挙げており、この値の何倍も含む湯があります。指針8-4は、湧出時のpHに応じてメタけい酸・メタけい酸水素イオン・メタけい酸イオンと書き分けると定めています。地下で高い温度にさらされた湯ほど多く溶かしてくるので、高温泉や火山の近くで厚くなります。
時間と空気でどう変わるか
湯が冷える場所から順に厚くなります。湯口から離れて空気に当たる樋の先や、露天風呂へ長く引いた配管の内側は温度が下がるぶん付きやすく、断面に重なった層が残ることがあります。いったん固まると水では戻らず、酸にも溶けにくいため、掻き落とすまでその場にとどまります。乾くと表面にひびが入り、白く粉を吹いたように見えることもあります。湯の通り道が細くなれば、出てくる湯の量そのものが落ちていきます。
どこまで確かめられているか
けい酸が温度とともにどれだけ溶けるかは、実験で測られた曲線として知られており、地熱の設備でも配管に付くスケールとして扱われてきました。一方、壁に貼られるのは湯を測った結果で、そこに付いたものの記録ではありません。読めるのは湧出時のメタけい酸の量までで、湯口の白いものがそこから来たかは書かれません。洗い場に付く石けんかすや水あかは湯の成分ではなく、洗い場の湯栓とシャワーまわりの汚れとは分けて見ます。