湯の花
湯口と浴槽につくもの
湯の花は、一つの名前で別のものを指します。硫黄が主のもの、硫酸塩の結晶、炭酸カルシウムのものがあり、成り立ちも手ざわりも違います。
どう見えるか・どう感じるか
湯の中に、白や灰色をした薄い片や粉が漂います。すくうと指に残り、静かにしておくと底にたまるものと、いつまでも浮いているものがあります。色は白・灰色・淡い黄から赤みを帯びたものまであり、同じ名前で呼ばれていても手ざわりが違います。粒が細かくて湯全体が曇る乳白色のにごりとは分かれ、こちらは一片ずつ目で追える大きさです。乾いてから見ると、湯の中で見たときより白く、かさも減っています。
何がそうさせているか
できかたが型ごとに違います。噴気地帯で採られるものは、硫化水素が酸化してできた硫酸が粘土からアルミニウムと鉄を抜き出し、ハロトリカイトやアルノーゲンという硫酸塩の結晶として析出したものです。一國らはこの過程を化学的に追い、2価の鉄を多く含む粘土ほど採れる量が増え、3価の鉄では赤みを帯びると報告しています(温泉科学59巻・62巻)。湯の中でできるものは硫黄の粒や炭酸カルシウムが主体です。
出やすい泉質
硫黄の粒が主のものは硫黄泉に、硫酸塩の結晶として採られるものは噴気をともなう酸性泉のまわりに現れます。白く固い片が炭酸カルシウムや石膏であれば、カルシウムを多く含む炭酸水素塩泉や硫酸塩泉が出どころになります。泉質名からは中身が一つに決まらず、湯の花という語だけでは、どの成分の話をしているのかまでは分かりません。同じ場所でも、湯口で採るか噴気口で採るかで中身は変わります。
時間と空気でどう変わるか
面に付いたものは、湯が空気に触れる時間の長さだけ育ちます。硫黄の粒は酸化が進むほど増え、湯口から離れた樋や縁にも回ります。硫酸塩の結晶は多くの水を抱えこんでいるので、乾かすと水が抜けて白い粉に崩れます。鉄を含むものは時間がたつうちに3価へ酸化し、灰白色から鉄の赤い付着と同じ赤みへ動きます。持ち帰った片の見え方が湯船で見たときと違うのは、この変化のためです。
どこまで確かめられているか
硫酸塩型については、原料の粘土と生成物の対応まで測られています(一國ら、温泉科学59巻・62巻)。一方で、分析書に湯の花という欄はありません。残るのは知覚的試験の清濁や沈殿についての記載までで、浮いている片が何かは書かれません。湯口に固まったものなら湯口の石灰華や湯口の珪華として見分けられますが、袋に入った片の型は、成分を測ってはじめて決まります。指針が手順を定めているのは、あくまで湯そのものの試験です。