石油臭

におい

現場では「アブラ臭」と呼ばれるにおいです。灯油や機械油を思わせる重さがあり、指針は臭いの種類の例のひとつに石油臭を挙げています。

どう見えるか・どう感じるか

灯油やアスファルトを思わせる、重く尾を引くにおいです。硫黄のにおいのようにつんと来ることはなく、湯から上がった後も髪やタオルに残ることがあります。分析書では臭いの欄に「石油臭」と書かれ、これは指針5-2 が挙げる語の一つです。「アブラ臭」は現場の呼び名で、分析書に載る語ではありません。よう素臭と並べて書かれた分析書もあります。

何がそうさせているか

湯が地下の有機物を通ってきたためです。堆積物の中で有機物が長く熱を受けると、炭化水素やガスができます。これを伴う地層から汲み上げた湯には油分が混じり、揮発しやすい炭化水素が空気へ出てにおいになります。指針は密度を測る手順の注記で、試料がタールや油状物質を多量に含む場合に触れており、測る側でも扱いに手間のかかる湯として置かれています。化石海水型温泉のように、海だったころの有機物を残した地層が舞台です。

出やすい泉質

泉質名では決まらず、かん水や化石海水型温泉のように天然ガスを伴う地層から採った湯で記録されます。掲示の泉質はたいてい塩化物泉で、よう素のにおいと同居することが少なくありません。よう素も炭化水素も同じ堆積物の有機物に由来するので、二つのにおいが重なる湯が現れます。掲示の泉質名の側からこのにおいは読み取れず、同じ地層でも井戸ごとに出方が違います。

時間と空気でどう変わるか

油分は水に溶けにくく、湯を置いた後も表面に薄い膜として残ることがあります。空気で飛ぶ軽い成分から先に抜けるため、においの質は時間とともに変わり、重い側だけが残ります。浴槽の換水や循環式浴槽のろ過を通れば薄まり、湯口の近くと浴槽の縁とで感じ方が違うこともあります。同じ湯でも立つ場所が偏るのがこのにおいの癖で、湯面に浮いた膜を量として残す欄はありません。

どこまで確かめられているか

確かめられているのは成因の側までです。村上らは温泉科学71巻(2021)で有機物を含む堆積物から出た水を扱い、この筋道を支えています。指針が泥炭臭を別の語として用意しているのは、深いところで熱を受けた炭化水素と浅いところの腐植物質では出どころが違うからで、にじみ出る場所も変わります。においの強さを測る決まりは、どちらの語にもありません。