よう素臭

におい

薬品を思わせる、乾いたにおいです。指針の分析書記載例には「強塩味でよう素臭を有する(試料採取後24時間)」という一行が載っています。

どう見えるか・どう感じるか

消毒薬に似た、乾いて鋭いにおいです。硫黄のにおいのような重さがなく、鼻に残る時間は短めだと書かれます。指針の分析書記載例には「強塩味でよう素臭を有する(試料採取後24時間)」という記録があり、採取から24時間という条件が語と一緒に置かれています。汲みたてでは分からないことがありますので、湯口の前の印象と語がそろわないのは珍しくありません。語が付いた日は分析終了年月日の欄で確かめられます。

何がそうさせているか

よう化物イオンが、空気に触れて遊離よう素に変わるためです。地下にあるあいだのよう素はイオンの形で、においを持ちません。汲み上げられて酸素に触れると一部が酸化され、分子の形のよう素になって空気へ出ます。同じ変化は色にも現れるので、よう素の黄ばみはこの反応の見える側、においはかぐ側だと言えます。反応が進んだぶんだけ、どちらも強くなります。

出やすい泉質

含よう素泉で、療養泉の限界値はよう化物イオン10mg/kgです。泉質名では頭に「含よう素-」と付ける決まりになっていて、成分の名を先に立てる書き方の一つになります。地下に閉じ込められた海水を起源とする湯に多いので、化石海水型温泉と重なり、塩味の強さと同居します。記載例の「強塩味で」は、その重なりを一行で示したものです。掲示に頭書きがなければ、量は限界値に届いていません。

時間と空気でどう変わるか

時間がたつほど立ってきます。記載例が経過時間を添えているのは、採取の直後と一日置いた後で臭いの記録が変わりうるからです。浴槽では空気に触れる面が広く、かけ流し式浴槽のように湯が入れ替わる場所と、溜めたままの湯とでにおいの立ち方がずれます。掲示の語がそのまま今の湯とは限りません。石油臭が一緒に立つ湯では、どちらが先に届くかも日によって動きます。

どこまで確かめられているか

由来までは調べられています。村上らは温泉科学71巻(2021、66-84)で高濃度のよう素を含む水の成因を扱い、堆積物の有機物から溶け出す経路を示しました。よう素はかん水から採り出してきた資源でもあり、湯とその産業は同じ地層を見ています。ただしにおいの強さから濃度を読む物差しはなく、分析書には数値と語が別々に残るだけです。