用語図鑑
色相(色)
赤・青・黄という色みそのもの。赤、黄、緑、青、紫と移り変わって、また赤に戻る。この色みそのものの違いが色相で、明るさや鮮やかさを別に数えるのがこの言葉の役目になる。輪の形に並べたものが色相環で、向かい合う位置にあるのが補色、隣り合う位置にあるのが類似色。
彩度(色)
色の鮮やかさ。灰色からの遠さ。同じ赤でも、絵の具のままの赤と、灰色を混ぜてくすんだ赤がある。この鮮やかさの差が彩度で、灰色からどれだけ離れているかと言い換えられる。いちばん下げると色みが消えて灰色になり、そこでは色相の区別もつかなくなる。
明度(色)
色の明るさ。白に近いか黒に近いか。その色を白黒にしたとき、白から黒までのどのあたりに来るかが明度。黄色は高く、紺色は低い。色みが違っても明度は同じということが起きるので、鮮やかな色を並べただけでは、どこに何があるのか形の見えない画面になることがある。
トーン(色)
明度と彩度をまとめた色の調子。明るくて淡い、暗くて濃い、といった色の調子をひとまとめに呼ぶ言葉。明度と彩度を組み合わせた見え方で、色相が違ってもそろうのが便利なところ。日本で広く使われるPCCSでは、有彩色を12のトーンに、無彩色を5段階に分けている。
色温度(色)
光の色みを数字で表したもの。光そのものの色みを数字にしたもので、単位はK(ケルビン)。ろうそくの炎は1800K前後、夕日は2000K前後、白熱電球は2500〜3000K、昼の太陽光は5500K前後、曇り空は6500K前後で、青空の下の日陰はさらに高い。数字が高いほど青いので、暖かい・冷たいという感覚とは逆に並ぶ。
露出(光)
写真に取り込む光の量と明るさ。カメラに取り込む光の量のことで、写真全体の明るさを決める。絞りとシャッタースピードとISO感度の三つの掛け合わせで決まり、どれか一つを変えたら残りで釣り合いを取ることになる。明るすぎれば白飛び、暗すぎれば黒つぶれ。
ハイライト(光)
画面のいちばん明るい部分。画面の中でいちばん明るいところ。暗い側のシャドウと対にして使う。金属や瞳、濡れた面ではね返る光の点も指す。本当に白い場所を数か所だけに絞ると、そこが輝いて見える。逆に全部を明るくすると、どこも光って見えない。色も形も残らないほど飛んでしまった状態は、白飛びと呼んで区別する。
シャドウ(光)
画面の暗い部分。形を支える側。画面の暗いほうを指す言葉。ものが落とす影と、光が当たらない面の暗さの両方を含み、絵ではこの二つを分けて扱うことが多い。暗い中にも段階があるのがふつうで、一様に真っ黒で何も見えない状態は黒つぶれと呼び、そちらは失敗のほうに数える。
コントラスト(光)
明るい所と暗い所の差の大きさ。明るいところと暗いところの差の大きさ。差が大きいと硬くはっきりした画面になり、小さいと柔らかく霞んだ画面になる。明暗だけでなく色や大きさの差にも使う言葉で、鮮やかな色とくすんだ色を隣り合わせるのも色のコントラストと呼ぶ。
ダイナミックレンジ(光)
いちばん明るい所から暗い所までの幅。一枚の中に、いちばん明るいところからいちばん暗いところまで、どれだけの幅を写し取れるか。段(EV)で数え、スマホで10段前後、レンズ交換式で14段前後。一瞬で見える幅は人の目もこれと大差ないが、見回すうちに明るさへ順応するので、自分には空も顔も見えているのに写真だけ空が飛ぶ…
遠近法(形・構図)
奥行きを平面に描く仕掛け。平らな画面に奥行きがあるように見せる描き方の総称。遠いものほど小さく描き、奥へ伸びる線を一点に集めると、床や壁が続いて見える。線で奥行きを作るやり方を線遠近法、空気の濁りで作るやり方を空気遠近法と呼び分ける。
空気遠近法(形・構図)
遠くほど青く淡くなる見え方。遠くのものほど淡く、青みがかって見える現象を、そのまま絵に持ち込む描き方。空気中の水蒸気やちりが光を散らすため、遠景は彩度が落ちて輪郭もぼやける。線を一点に集める遠近法と違い、色の変化だけで奥行きが出る。
被写界深度(形・構図)
ピントが合って見える前後の幅。写真でピントが合って見える、手前から奥までの幅のこと。狭いと背景がとろけ、広いと画面の隅までくっきりする。効くのは絞り・焦点距離・被写体との距離の三つで、絞りを開けるほど、レンズが長いほど、近づくほど幅は狭くなる。
画角(形・構図)
レンズが写しとる範囲の角度。レンズが写しとる範囲を、角度で表したもの。焦点距離が短いほど広く、長いほど狭くなる。35mm判の50mmで対角およそ47度、24mmならおよそ84度。立ち位置が同じでも、画角が変われば写る量も、背景の入り方も変わる。
アスペクト比(形・構図)
写真や絵の縦横の長さの比。画面の横と縦の長さの比。同じものを写しても、比が変われば余白の量と落ち着き方が変わる。3:2は35mmフィルム由来で一眼やミラーレスの標準、4:3はスマホやコンパクト機の標準。横長ほど風景らしく、正方形は日の丸構図と相性がよい。
スフマート(技法)
輪郭線を引かずに煙のようにぼかす。輪郭の線を引かず、明るさを少しずつ移らせて形の境目を消す描き方。イタリア語の「煙(fumo)」から来た言葉で、レオナルドは輪郭を線で区切らず煙のように描けと書き残している。境目がないぶん、見る距離や角度で表情が変わって見える。
明暗法(技法)
強い光と濃い影で立体を出す。明るい所と暗い所の差で、物の丸みや空間を出す描き方。イタリア語の「明るい(chiaro)」と「暗い(scuro)」を合わせた語。差を極端にし、背景をほとんど闇に沈めるやり方はテネブリズムと呼んで区別されることが多い。
インパスト(技法)
絵の具を厚く盛り上げる塗り方。絵の具を厚く盛り、筆やナイフの跡をそのまま残す塗り方。イタリア語で「練った生地」を指す言葉。表面に凹凸ができるので、実際の光が絵肌に当たって小さな影を作る。同じ白でも、平らに塗った白より強く見え、近づくほど立体的になる。
グレーズ(技法)
透明な色を薄く重ねて深みを出す。乾いた層の上に、透明な絵の具をごく薄く重ねる塗り方。下の色が透けて上の色と重なるため、混ぜて作った色より奥行きのある発色になる。重ねるほど明るさは下がるのに、鮮やかさは濁らずに残るのが、混色との大きな違い。
点描(技法)
小さな色の点を並べて描く。絵の具を混ぜず、小さな点や短い筆触を並べて置く描き方。離れて見ると隣り合う色が溶け合うことをねらったと解釈されることが多く、混ぜて濁らせずに明るさを保つ方法とされる。新印象派の中心にある方法で、当時は分割主義とも呼ばれた。
モチーフ(見方・鑑賞)
絵を組み立てている個々の題材。その絵に実際に描かれている物のこと。作品を成り立たせる材料にあたる。ひまわりなら向日葵と花瓶と背景のひとつひとつがモチーフで、絵全体が語ろうとしている内容のほうは主題と呼んで区別する。主題は言いたいこと、モチーフはそれを組む部品という関係になる。
習作(見方・鑑賞)
本番の一枚のための試し描き。完成させる一枚のために、その前に描いておく試しの絵。人物の手だけ、背景の木だけというように部分を取り出したり、全体を小さな画面で一度組んでみたりする。売るためのものではないので未完成のまま残るものが多いが、迷いの跡が見えるぶん、完成作より描き方が分かることもある。
連作(見方・鑑賞)
同じ対象を条件だけ変えて何枚も。同じ対象や同じ主題を、条件を変えて何枚も描いた一組。一枚ずつでも作品として成り立つが、並べたときに変わるものと変わらないものが同時に見える。展覧会では朝・曇り・夕方といった副題が付いて、一室にまとめて掛かることが多い。
寓意(見方・鑑賞)
見えない考えを物や人の姿で表す。自由や死や虚しさのような形のないものを、目に見える物や人の姿に置きかえて描くこと。旗を掲げた女性が国そのものを指したり、髑髏や消えかけた蝋燭が命の短さを指したりする。手がかりは画面の中に置かれているが、一つの正解に決めつけないほうがいい。同じ品物が別の絵では別の意味で使われる。