空気遠近法
形・構図
空気遠近法は、遠くほど青く淡くなる見え方。
どういう意味か
遠くのものほど淡く、青みがかって見える現象を、そのまま絵に持ち込む描き方。空気中の水蒸気やちりが光を散らすため、遠景は彩度が落ちて輪郭もぼやける。線を一点に集める遠近法と違い、色と明暗の変化だけで奥行きを出す。テート美術館の用語解説は、大気が遠くほど青く見える性質を使う点で線遠近法と区別している。レオナルドは、遠くの物は小さくなるだけでなく輪郭や細部も失われると気づき、これを「消失の遠近法」と呼んだという。
どこで出てくるか
レオナルドが早くから使い、書き残した考え方で、モナ・リザの背景がその代表とされる。奥の山ほど白っぽい青に沈み、手前の岩肌だけが硬く見える。風景写真でも、朝もやのかかった山並みや、遠くのビル群で同じ見え方が起きる。UBC(カナダの大学)の遠近法の授業資料は、人の視野は中心ほどはっきりし周辺ほど曖昧になる性質もこの技法に含め、レンブラントやルノワールが空間を作り主役へ目を引くのに使ったと説明する。
使い方
遠くを描き込みすぎない、という判断ができるようになる。奥は色を薄め、輪郭をぼかすだけで距離が出る。水彩画家の柴崎(YouTube「Watercolor by Shibasaki」)は、手前を暖色で複雑に描き、奥ほど彩度を落として青みを足し単純化すると添削で説明している。写真ならホワイトバランスを少し青寄りにし、もやの残る朝を選ぶと出やすい。
出典
- 公的機関・英語 Tate Perspective – Art Term
- 資料・英語 University of British Columbia Aerial Perspective
- 動画 Watercolor by Shibasaki 【プロ添削】描きすぎるな。風景画は“引き算”で劇的に変わる!(空気遠近法)
解説動画: 遠くほど青く明るくなる 地面・山・木の描き分け/ひろアトリエ
どういう法則として説明しているか: 風景画の教本を追う回で、レオナルド・ダ・ヴィンチが見つけた法則として、色は遠くに行くほど青く、同時に明るくなると押さえるところから始める。最後まで残るのは青と青紫で、黄色系は黄緑から緑、エメラルドを経て青へ、オレンジ系はピンクから明るい赤紫を通って青紫へ移る。この色の流れと明度の上がり方が空気遠近法だとまとめている。
地面と手前が要: 風景画では地面のほうが空より圧倒的に重要だと言う。前景の花や草、黄色い稲といった鮮やかな固有色があってはじめて、奥の色の変化が効いてくる。難しいのは遠景ではなく手前の短い距離で、一インチ遠ざかるごとに青いカーテンは厚くなるという教本の言葉を紹介し、間にものを置いて距離を示すのも有効だと添えている。
山と木: 麓より頂上のほうが自分から遠いので、頂上ほど明るく青紫に寄せ、手前の斜面ほど暖かくする。遠くの山を強い黄色で描くと山だけ手前に出てきてしまい、そういう風景画は成立しないと言う。木も遠いほど明るく冷たくなり、暗い部分のほうが早く青く寄るが、木そのものが持つ暗さのバランスは崩さないよう注意している。
効きの強さは調整する: 雨上がりは空気が澄んで青いカーテンが薄くなるため、空気遠近法が弱く遠近感を出しにくい。澄んだ空気を描きたいなら効きを弱め、逆に奥まで透き通って見える絵ならもっと使う、という強弱の調整として扱っている。色の変化が要なので無彩色の風景画には限界があるとも言い、線の遠近法に頼るしかない漫画を対比に挙げている。