スフマート
技法
輪郭線を引かずに煙のようにぼかす
どういう意味か
輪郭の線を引かず、明るさを少しずつ移らせて形の境目を消す描き方。イタリア語の「煙(fumo)」から来た言葉で、レオナルドは輪郭を線で区切らず煙のように描けと書き残している。境目がないぶん、見る距離や角度で表情が変わって見える。
どこで出てくるか
ルネサンス、とくにレオナルドの解説で必ず出る。モナ・リザなら口もとと目じりがその代表で、どこからが影なのか言えないまま頬へ続く。光と影の置き方を指す明暗法とは近いが、こちらは境目の作り方の話だと分けると分かりやすい。
使い方
「ぼけている」と「境目がない」を区別できるようになる。油彩の乾きの遅さを生かす技で、透明な層をごく薄く何度も重ねると境目が消えていく。レオナルドの顔の部分を調べた科学調査でも、きわめて薄い層の重なりが報告されている。写真では、影の縁が柔らかい拡散光の日が近い。
解説動画: スフマートを使った画家と使わなかった画家/彦坂なおよし
スフマートをどんな技法と見ているか: スフマートを人が絵を描く技術の一つの頂点を作った技法だと位置づけている。ただしその後の画家に受け継がれたかは怪しく、大変なので手を抜いていったのではないかという見方を示す。近ごろは生成の道具でスフマート風のぼかしも作れるが、それは絵を描くという行為とは別のものだとも話している。
使っている画家と使っていない画家: ボッティチェリの絵には輪郭線が残って見えるとしてスフマートは使われていないと言い、ミケランジェロも使っておらず空間の構成そのものが違うとする。理論を忠実に扱った側にレオナルドとラファエロを置き、同じルネサンスでも描き方は一つではないと整理している。
ルネサンスをひとくくりにできない: 生年をたどると、ボッティチェリは1445年でレオナルドの1452年より7歳上、ティツィアーノは1490年生まれ。アルベルティの絵画論はレオナルドが生まれるより前に書かれていたのに、その理論を忠実に扱う画家はレオナルドやラファエロまで現れなかったとして、盛期ルネサンスはごく限られた時期のものだと述べる。年代の整理は自分もまだ準備不足だとも断っている。