スフマート
技法
スフマートは、輪郭線を引かずに煙のようにぼかす。
どういう意味か
輪郭の線を引かず、明るさを少しずつ移らせて形の境目を消す描き方。名は、「和らげる」「蒸発する」を意味するイタリア語のsfumareから。YouTubeのRichard Barton Studioは、レオナルドが光と影を筆の跡なく煙のように溶け合わせよと述べたと紹介する。使っていない作品もあり、《ジネヴラ・デ・ベンチ》がその例だという。
どこで出てくるか
モナ・リザの口もとと目じりが代表で、どこからが影なのか言えないまま頬へ続く。2024年の論文でSoranzoは、上唇を縁取る淡くぼかされた影の部分を加工したモナ・リザの画像で、見る人が受け取る表情が変わったと報告している。光と影の置き方を指す明暗法とは近いが、こちらは境目の作り方の話だと分けると分かりやすい。
使い方
「ぼけている」と「境目がない」を区別できるようになる。絵と抽象図形で調べた2024年の実験(Stumpelら)では、鋭い輪郭に比べてぼかした輪郭は立体感が下がり、ぼかしの位置を比べると光の当たる側のほうが強かった。描くなら油彩の透明な層をごく薄く何度も重ねて境目を消す。レオナルドの顔9点をX線蛍光で調べた2010年の調査(de Viguerieら)では、薄い層は1〜2μm、全体でも30〜40μm以内だった。
出典
- 動画・英語 Richard Barton Studio How To Paint Sfumato Like Leonardo Da Vinci
- 論文・英語 Soranzo A(2024) The psychology of Mona Lisa's smile
- 論文・英語 Stumpel JFHJ, Volcic R, Wijntjes MWA(2024) Vagueness and volume: Testing the perception of depth in images with linear, sharp, or blurred contours
- 論文・英語 de Viguerie L, Walter P, Laval E, Mottin B, Solé VA(2010) Revealing the sfumato technique of Leonardo da Vinci by X-ray fluorescence spectroscopy
- 公的機関・英語 ESRF(欧州シンクロトロン放射光施設)(2010) New light on Leonardo Da Vinci's faces
解説動画: スフマートを使った画家と使わなかった画家/彦坂なおよし
スフマートをどんな技法と見ているか: スフマートを人が絵を描く技術の一つの頂点を作った技法だと位置づけている。ただしその後の画家に受け継がれたかは怪しく、大変なので手を抜いていったのではないかという見方を示す。近ごろは生成の道具でスフマート風のぼかしも作れるが、それは絵を描くという行為とは別のものだとも話している。
使っている画家と使っていない画家: ボッティチェリの絵には輪郭線が残って見えるとしてスフマートは使われていないと言い、ミケランジェロも使っておらず空間の構成そのものが違うとする。理論を忠実に扱った側にレオナルドとラファエロを置き、同じルネサンスでも描き方は一つではないと整理している。
ルネサンスをひとくくりにできない: 生年をたどると、ボッティチェリは1445年でレオナルドの1452年より7歳上、ティツィアーノは1490年生まれ。アルベルティの絵画論はレオナルドが生まれるより前に書かれていたのに、その理論を忠実に扱う画家はレオナルドやラファエロまで現れなかったとして、盛期ルネサンスはごく限られた時期のものだと述べる。年代の整理は自分もまだ準備不足だとも断っている。