水質の数字図鑑
総アンモニア態窒素(TAN)(魚に効く数字)
試薬が示すのは、毒の量ではありません。TAN は NH₄⁺ と NH₃ を足した値で、そのうち何割が魚に効くかは pH と水温が決めます。TANは、水に溶けたアンモニウムイオン(NH₄⁺)と非イオン性アンモニア(NH₃)を足した合計です。単位は mg/L で、家庭の水質試験キットが読むのはこの合計のほうになります。…
非イオン性アンモニア(NH₃)(魚に効く数字)
pHが1上がると、毒の側は約10倍になります。魚に効くのは NH₃ のほうで、TAN が同じでも pH と水温で何倍にも変わります。TAN のうち、電気を帯びない分子のまま溶けている側が NH₃ です。帯電した NH₄⁺ は鰓の膜を通りにくいのに対して、NH₃ はそのまま通り抜けます。…
亜硝酸態窒素(NO₂-N)(魚に効く数字)
血が酸素を運べなくなる数字です。立ち上げの途中と、硝化が追いつかなくなったときに上がります。硝化の途中にできる窒素です。アンモニアから亜硝酸へで生まれ、亜硝酸から硝酸へで消えていきます。たまるのは、二段目が一段目に追いついていないときだけです。表記には NO₂ と NO₂-N があり、同じ水でも値が3.3倍ずれるので…
溶存酸素(DO)(魚に効く数字)
魚と硝化菌が先に取り、根は最後です。5 mg/L を下回ると魚が苦しみ、2 mg/L を切ると硝化そのものが落ちます。水に溶けた酸素分子の量で、単位は mg/L(ppm)です。空気の中の酸素とは別のもので、鰓も根も菌もこの溶けたぶんしか使えません。一つの水から魚が使う酸素、硝化に要る酸素…
酸素飽和度(魚に効く数字)
同じ6mg/Lでも、水温が違えば意味が違います。水が抱えられる酸素の上限は水温で決まるので、mg/L と % の両方で読みます。mg/L がいま溶けている量そのものなのに対して、飽和度はその水温と気圧で溶けられる上限に対する割合です。上限は水温が上がるほど小さくなります。だから同じ mg/L でも…
水温(魚に効く数字)
水温は、ほかの数字の意味を書き換えます。酸素の上限、アンモニアの毒の割合、硝化の速さ、魚の食欲がまとめて動きます。水そのものの温度です。気温ではなく、魚と菌と根が浸かっている水の温度を指します。これが動くと、酸素の上限、非イオン性アンモニア(NH₃)の割合、硝化の速さ、魚の食べる量がまとめて動きます。…
遊離二酸化炭素(CO₂)(魚に効く数字)
酸素が足りていても、苦しいことがあります。魚と菌の呼吸で溜まった CO₂ は、pH も一緒に下げます。水に溶けたまま反応していない二酸化炭素です。魚が使う酸素と分解が奪う酸素の裏側で必ず出てきて、水と結んで炭酸になり、pH を押し下げます。魚は鰓から CO₂ を捨てているので、水の側が濃いと体の中に溜まっていきます。…
塩化物イオン(Cl⁻)(魚に効く数字)
亜硝酸の毒は、塩化物の量で変わります。鰓が同じ通り道を取り合うので比で効きますが、入れた塩は作物側に残ります。水に溶けた塩素イオンです。水道水の残留塩素(次亜塩素酸)とはまったく別のものなので、混ぜて読まないようにします。鰓では亜硝酸と同じ通り道を取り合うため…
硝酸態窒素(NO₃-N)(植物に効く数字)
同じ水で、40とも180とも書けます。NO₃-N と NO₃⁻ では 4.43 倍ちがうので、単位を確かめてから比べます。硝化の終点にできる窒素で、亜硝酸から硝酸へ変わったあとの姿です。水に溶けたまま残り、根から吸われるところまで来ています。表記は二通りあって、硝酸イオンで書いた値は…
鉄(Fe)(植物に効く数字)
魚の餌からは、ほとんど入りません。この系で先に足りなくなる養分で、キレート剤の種類が pH で効き方を変えます。株が葉緑素をつくるのに要る微量養分です。水の中では三価の鉄がすぐ水酸化物になって沈むので、溶けた形で保つにはキレート剤で包んだものを使います。餌には魚のための鉄が入っていますが…
カリウム(K)(植物に効く数字)
餌には十分な量が入っていません。魚に必要のない養分ほど不足しやすく、足す作業は pH を上げる作業と重なります。株の中で水の出入りと糖の運びを調節する陽イオンで、体をつくる材料ではなく、働きを回す側の養分です。魚の側で要る量が少ないため餌に入る量も少なく、系の中で先に薄くなります。窒素と違って菌が形を変える道筋がなく…
カルシウム(Ca)(植物に効く数字)
魚の浸透圧調節と、葉の先の両方に効きます。硬度として魚を助け、足りなければ葉先枯れや尻腐れになります。水に溶けた陽イオンとして硬度の中身をつくり、株の側では細胞の壁をつなぐ材料になります。マグネシウムと合わせて硬度、炭酸水素イオンでアルカリ度と…
リン酸(PO₄-P)(植物に効く数字)
pHが上がるほど、株が取れる分が減ります。餌から来た養分ですが、カルシウムと結んで沈み、固形物と一緒に系から出ていきます。餌と魚の排泄から入る養分で、水に溶けたリン酸イオンの、リンだけを数えた値が PO₄-P です。リン酸イオンとして書いた値とは数え方が違い、そのままでは比べられません。…
EC(電気伝導度)(植物に効く数字)
養分の量ではなく、イオンの総量です。亜硝酸対策の塩も補水の硬度も同じだけ押し上げるので、この系では養分の代わりになりません。水がどれだけ電気を通すかを測った値で、溶けているイオンの総量を映します。単位は µS/cm か mS/cm で、1 mS/cm は 1000 µS/cmです。どのイオンかは区別しません——養分も…
pH(微生物に効く数字)
三者の希望が、ここだけ食い違います。硝化菌は7.5以上、植物は6.5以下を好み、折り合いは6.8〜7.0あたりに置かれます。水素イオンの濃度を対数で表した数で、1違えば濃度は10倍動きます。小さいほど酸性、大きいほどアルカリ性です。この系では、硝化菌と植物と魚で望ましい高さがそろわない場所として読みます。…
アルカリ度(KH)(微生物に効く数字)
pHが動かないのは、これが残っているからです。硝化はアンモニア態窒素1 mg/L あたり約7.14 mg のアルカリ度を使うので、放っておけば減り続けます。水に溶けた炭酸イオンと炭酸水素イオンの量で、酸が入ってもpHが動かずにいられる余力を表します。炭酸カルシウム換算の mg/Lで書きます。…
残留塩素(微生物に効く数字)
補水した水道水が、菌を減らします。日本の水道は蛇口で残留塩素を保つよう決められていて、その濃度でも硝化菌には効きます。水道水に残された消毒の力で、遊離残留塩素(次亜塩素酸など)と結合残留塩素(クロラミン)に分けて表します。菌を減らすために残してある濃度なので、生物ろ過の担い手にも同じように届きます。…
浮遊物(TSS)(微生物に効く数字)
濁りは、硝化菌の席を奪います。有機物が多いと従属栄養細菌が先に増え、酸素と場所を取ってしまいます。水に漂う固形物の量で、ろ紙に残る重さとしてmg/Lで表します。溶けている養分とは別の数字で、濁りや沈殿として目に見える側です。中身は餌の食べ残しと魚のフン、はがれた菌の膜で、硝化菌がつく場所と酸素を…
比色試薬の測りかた(測りかた)
色は、光と背景で変わって見えます。試薬の量と待ち時間、見る場所をそろえるまでは、前回との差を比べられません。試薬を入れると目当ての成分と反応して色が付き、その濃さを見本の段に当てて読みます。分光光度計が同じ反応の吸光度を数値で返すのに対し、比色は同じ色を目で当てる方式です。返ってくるのは反応した分の量で…
試験紙の測りかた(測りかた)
読めるのは、段のあるところだけです。安くて速い代わりに刻みが粗く、小さな値が効く数字には向きません。紙に染み込ませた試薬の色を、あらかじめ決められた段に当てて読みます。ハワイ大学が調べた型ではpH が 6.2〜8.4 の 0.2 刻み…
電極の校正と保管(測りかた)
電極は、校正した日から狂っていきます。pH は2点、EC と DO はそれぞれの手順で合わせ、乾かさないで保管します。電極が返すのは電圧や、蛍光の消え方です。濃度そのものではないので、標準液に当てて「この信号ならこの値」という線を引き直す作業が要ります。それが校正です。…
採水のしかた(測りかた)
どこで汲むかで、答えが変わります。入口と出口、朝と夕方、底と表層では別の水なので、決めた1か所と時刻で続けます。測っているのは汲んだその一杯の水であって、系の全体ではありません。魚槽の出口と、生物ろ材を通った後と、栽培床を出た後では、通ってきた仕事が違うぶんだけ値が動きます。ろ材の後はアンモニアが減り…