非イオン性アンモニア(NH₃)
魚に効く数字
効く相手: 魚
pHが1上がると、毒の側は約10倍になります。魚に効くのは NH₃ のほうで、TAN が同じでも pH と水温で何倍にも変わります。
何を表す数字か
TAN のうち、電気を帯びない分子のまま溶けている側が NH₃ です。帯電した NH₄⁺ は鰓の膜を通りにくいのに対して、NH₃ はそのまま通り抜けます。割合は pH と水温と塩分で決まるので、総アンモニア態窒素(TAN)にその割合を掛けた値が、実際に魚へ効く量になります。家庭用の試薬はここまで読みません。
目安の範囲
SRAC 463 が載せる Emerson ら 1975 の計算表では、20 ℃・pH 8.0 で 3.8%、30 ℃・pH 8.6 では 24.2% が NH₃ になります。同じ表を縦に見ると、pH が 1 上がるたびに毒の側はおよそ10倍です。循環式タンクの目安として、SRAC 452 は NH₃-N で0.05 mg/L 未満を挙げています。いずれも計算から出した値です。
動くと何が起きるか
効くのは魚です。SRAC 463 は、0.06 mg/L の長い曝露で鰓と腎臓が傷み、成長が落ちると書いています。0.6 mg/L あたりからは、数日で死ぬ濃度に入ります。手を打つ順番としては、pH を動かすより先にアンモニアが下がらない側から TAN を下げるほうが安全です。pH を急に上げると毒の側が跳ね上がります。
測りかた
直に読む家庭用の試薬はありません。TAN と pH と水温を測り、換算表を引いて出します。pH は汲んだらすぐ測ります。置いておくと遊離二酸化炭素(CO₂)が抜けて pH が上がり、毒の側を実際より高く見積もることになります。電極が狂っていても同じずれ方をするので、電極の校正と保管がそのまま効いてきます。
誰がどう測った値か
換算表のもとは Emerson ら 1975 の平衡計算で、SRAC 463(Durborow ら 1997)が池の管理向けに転載しています。ニューメキシコ州立大学 Circular 680 の表は、Francis-Floyd ら 2009 とフロリダ州環境保護局 2001 のデータから作られたものです。いずれも計算値で、鰓で起きることを直に測った値ではありません。
解説動画: アンモニアの毒性はpH・水温で変わる!?水槽立ち上げ初期に危険なアンモニアについて解説★めだかを飼育し始めて、死んでいく原因かも?/Hiro's Aquarium
二つの姿で溶ける: 動画は、水に溶けたアンモニアがNH₃ と NH₄⁺ の二つの姿で並んでいるところから話を始めます。化学式まで覚える必要はないと断ったうえで、pH が上がるほど NH₃ の割合が増え、水温が上がってもやはり増えると述べます。同じ量が入っていても、アルカリ性に寄った水や温かい水ほど毒の側が厚くなる、という整理です。
どこから出るのか: 魚のふん、食べ残しの餌、枯れた水草、魚の死骸——分解の過程でまず出てくるのがアンモニアだと動画は言います。それに加えて、魚は代謝したぶんを鰓からも出しています。自然の水では硝化菌がすぐ分解し、水の量も流れもあるので薄まってしまう。閉じた水槽ではその逃げ場がない、と対比して話を進めます。
魚に出るようす: 濃くなると平衡感覚が狂い、酸素の消費が増え、昏睡に至ると動画は述べます。水槽で見えるのは、鰓が速く動く、底でじっとする、水面でぼんやりする、といったようすです。薄くても成長が落ち、卵のかえる割合が減り、鰓の組織が傷むと言い、0.03 mg/L 前後から悪い影響が出るとされる、と挙げます。効きかたには魚種で差があるとも添えます(→えらの動きが速い)。
立ち上げの数字: 動画は自分の例を出します。25 L の水槽にメダカ3匹、水温23 ℃、外部式のろ過を付けて立ち上げたところ、24時間後にはその 0.03 mg/L を超えたと言います。だから最初の1週間は、半分から3分の1の水換えを毎日続けた。使った水道水の pH が8ほどで高い側だったことも、毒の側を厚くしていたと振り返ります。
先に減らすもの: 手立てとして挙がるのは、水換えでそのまま減らす、吸着させる、入れる魚の数を減らす、最初の数日は餌をやらない、曝気して菌が増えやすい環境をつくる——の順です。水温は季節に縛られて動かしにくいので、pH のほうが現実的だとも言います。アンモニアは菌にとっては餌でもあるので悪者一辺倒ではない、と結びます(→アンモニアから亜硝酸へ)。