塩化物イオン(Cl⁻)
魚に効く数字
効く相手: 魚
亜硝酸の毒は、塩化物の量で変わります。鰓が同じ通り道を取り合うので比で効きますが、入れた塩は作物側に残ります。
何を表す数字か
水に溶けた塩素イオンです。水道水の残留塩素(次亜塩素酸)とはまったく別のものなので、混ぜて読まないようにします。鰓では亜硝酸と同じ通り道を取り合うため、濃度そのものより亜硝酸態窒素(NO₂-N)との比で効きます。塩を入れれば上がり、蒸発では抜けず、補水でしか薄まりません。魚の餌にも最初から含まれています。
目安の範囲
SRAC 462 は、米国のナマズ池で塩化物と亜硝酸の比を10対1以上に保ち、ふだんから塩化物を100 ppm置いておく運用を挙げています。この比は魚種と資料で違い、確定した一つの値ではありません。作物の側の線は別で、SRAC 454 はナトリウムを 50 mg/L 以下としています。
動くと何が起きるか
比が高いほど亜硝酸が血へ入りにくくなり、亜硝酸が跳ね上がったときの逃げ道になります。ただし入れた塩は系に残り、EC(電気伝導度)を押し上げます。ナトリウムが増えるとカリウム(K)とカルシウム(Ca)の吸収を妨げ、リーフレタスでは葉先が枯れます(SRAC 454)。同じ一手が、魚の側と作物の側で逆に働きます。
測りかた
塩化物の試薬で読みます。EC(電気伝導度)では塩化物だけを取り出せません。EC は溶けているもの全部の合計だからです。雨や大量の補水のあとは薄まるので、SRAC 462 は亜硝酸が高い時期は毎日、ふだんは週に一度の確認を勧めています。亜硝酸と同じ日に測らないと、比そのものが出せません。
誰がどう測った値か
10対1と100 ppmは SRAC 462(Durborow ら 1997)で、米国のナマズ養殖池という条件がついた値です。池の魚は日本では飼えないチャネルキャットフィッシュで、借りられるのは比のほうだけです。ナトリウム 50 mg/L は SRAC 454(Rakocy ら 2006)。どちらも魚と作物を同時に見た比較試験ではありません。
解説動画: How to Lower Nitrites in an Aquarium/Prime Time Aquatics
亜硝酸が奪うもの: 動画は、餌の分解で出たアンモニアを菌が食べて亜硝酸態窒素(NO₂-N)に変えると説明し、その亜硝酸は赤血球のヘモグロビンに結びついて酸素を取り込む力を落とすと言います。アンモニアと効き方が違うだけで、行き着く先は同じだという置き方で、どちらもゼロに保つ数字として扱っています。
数週間前の履歴: 亜硝酸が高い水槽は、その数週間前にアンモニアも高かった可能性が大きいと動画は見ます。先に増えた菌がアンモニアを片づけ、亜硝酸を硝酸に変える別の菌はまだこれから。魚は二つの山を続けて受けていることになり、いま出ている数字は前の数週間の履歴でもある、という読み方です。
塩が割って入る: 手当ての三つ目として塩を挙げます。動画は、塩が亜硝酸と赤血球の結びつきを妨げるので、その分だけ魚が酸素を取り込めるようになると説明します。入れる量は水槽の大きさと入っている生き物によるとしたうえで、10ガロンに小さじ1という薄いところから始めるのが好みだと言います。
入れれば残る: ただし塩は、水草やエビのような生き物には害になりうると釘を刺します。同じ水に別の生き物がいるなら、魚のためのひと手がそちらを痛めることになる。大きな水換えも敏感な魚には負担になるとも言い、どの手も片側だけを見ては選べないことを、亜硝酸が跳ね上がった場面の前提として置きます。
本筋はろ過と餌: いちばん速いのはすでに立ち上がったろ材を分けてもらうことで、次が水換えによる希釈だと動画は並べます。あわせて餌の量を減らし、魚を入れすぎないことで、入ってくる負荷そのものを下げる。亜硝酸を硝酸に変えるのは次に来る菌の仕事だと結び、試薬でも試験紙でも測り続けるよう言います。